Amazon.com Illustrations Ahead Of Earnings Figures

Amazonに出品した方が売り上げが伸びる

かつてイーベイに忠実だった販売事業者が、ビジネスをアマゾンに移行させつつある。「Amazon.com」で商品を販売した方が、より多くの価値を得られると言うのだ。

Amazon.comの販売事業者は、2014年に約200万社と2倍に増えたが、「eBay」の販売事業者は過去2年間、2500万社と横ばいにとどまっている。eBayで最初にオンライン店舗を立ち上げた企業は、両社のサイトに同時出品すると、Amazon.comの方が急激に売り上げが伸びることに驚いている。

利用者ベースも大きく、商品の出荷方法もより多様なAmazon.comへの販売事業者の移動はイーベイにとって脅威だ。イーベイは、大小の事業者が商品を販売するインターネット上の取引市場「マーケットプレイス」という概念を最初に生み出した企業だ。

ノートパソコンの部品やアクセサリーを扱うビボ・テクノロジーの最高経営責任者(CEO)であるチャンス・ナップは、オンラインで販売した同社の製品ラインの「売り上げがeBayでは10%減少し、Amazon.comでは10%増加した。購入者がeBayからAmazon.comに移っているかのようだ」と語る。

イーベイにはすでに重圧がかかっている。年末商戦はさえず、マーケットプレイスへの客足も鈍っている。CEOのジョン・ドナホーは、グーグルがショッピング検索結果への対処方法を変更したためだと弁明する。

イーベイは、物言う投資家であるカール・アイカーンの圧力を受け、年内にペイパル部門をスピンオフ(分離・独立)させる。アイカーンは同社のオンラインショッピング部門の売上高が停滞していることを嘆いていた。

アマゾンは物流サービスも提供

インターネット上で商売をするには、かなりの費用がかかる。アマゾンは保管や包装、商品の期限内出荷保証などを含む物流サービスに上乗せ料金を課している。

両社とも価格設定は複雑で、製品のカテゴリによって異なる。イーベイは通常、各商品の最終販売価格の10%を徴収する。アマゾンはほとんどのケースで15%、オプションの保管と包装には追加の手数料を課している。

多くの企業は、追加費用を支払ってもAmazon.comで商品を販売する価値があると語る。販売量を増やすことができるし、物流をアマゾンに任せたほうが、自ら担当するよりも安くなるからだ。

ノースカロライナ州のモリスビルに本社を持つコンサルティング会社、チャンネルアドバイザーは、イーベイからアマゾンへの大移動は昨年から始まったという。

同社のCEO、スコット・ウィンゴは、eBayの売上高の伸びが鈍化したことから、販売事業者は在庫をAmazon.comに移し、差が拡大したと指摘する。同社は昨年、3000社の販売事業者が60億ドルの商品を販売するのを支援した。

チャンネルアドバイザーによると、小売業にとって年末商戦の極めて重要な時期である2014年10〜12月期に、同社の顧客のAmazon.comでの売上高は、前年比33%増加したが、eBayでの売上高の伸び率は5%にとどまった。ウィンゴは、「eBayが電子商取引のかなりの部分を占めているのは確かだが、生命維持装置を取り付けられている状態で、成長しているのはAmazon.comだ」と語る。

シカゴに本社がある共同購入サイト「DealGenius.com」の社長であるクリス・マトサキスは、「2013年にはまだeBayの売上高のほうが、Amazon.comより多かった」と振り返る。しかし、昨年には、同社のAmazon.comにおける売上高は5倍に増え、eBayの4倍となった。

「Amazon.comの売り上げは大幅に伸びているが、eBayは横ばいだ」とマトサキス。

米調査会社コムスコアによると、イーベイのマーケットプレイスなど第三者サイトにも出品しているAmazon.comは、2月には米国で1億7490万人のユニークビジター(実際にサイトを訪問した人の数)があり、その数はeBayを46%上回った。

販売事業者の数でみると、eBayは依然として主要なマーケットプレイスだ。同社の広報担当者、ライアン・ムーアによると、過去2年間、販売事業者数は2500万社で安定している。

ムーアは売上高の推移についてコメントせず、その代わりにドナホーの売上高の伸びに関する以前の声明を繰り返した。

「Amazonプライム」の競争優位

シアトルに本社があるアマゾンの昨年末の販売事業者数は200万社強と、2013年末の100万社余りから倍増した。アマゾンの物流支援サービスとより大きな利用者ベースは、急速に動く在庫を大量に販売している事業者にとって魅力的だ。

一方、イーベイは、収集品や特殊な商品を少量販売している企業の支持を集めている。

Amazon.comには2億7000万人のアクティブバイヤー(一定の期間内の購入者)がいる。これに対しeBayは1億5500万人だ。Amazon.comは第三者である出品者と購入者が売買を行うマーケットプレイスを2000年に、物流サービスである「フルフィルメント by Amazon(FBA)」の提供を2007年に開始した。

販売事業者の一部は、小売りの競争相手になりかねないと考え、アマゾンに警戒を強めている。

こうしたシフトは、Amazon.comの有料会員モデルと物流への投資が価値を生み出していることを示している。Amazon.comには迅速な配送やオンラインで音楽・映画の提供を受けるために年間99ドルの会費を支払う顧客が多くいる。

販売事業者は、これらの会員にアクセスし、アマゾンに配送を代行してもらうために進んで追加費用を支払っている。

ウェドブッシュ・セキュリティーズのアナリスト、ギル・ルリアは、「AmazonプライムがAmazon.comの成功をもたらした。さまざまなサイトでショッピングをしていた人たちが、今は買い物のほとんどをAmazon.comでするようになった」と言う。

最近のアマゾンの調査によると、同社の保管、包装、配送サービスであるFBAを利用している企業の4社に3社は、年間売上高が20%伸びた。

アマゾンのセラーサービス担当副社長、トム・テーラーによると、Amazon.comで販売されているすべての商品の40%以上は、商品が売れるたびに同社に手数料を支払う出品事業者の商品だ。

これらの事業者は、アマゾンに追加費用を支払って保管や配送も任せるようになっている。

テーラーはわれわれの質問に、「出品事業者は購入者がアマゾンに寄せる信頼感から恩恵を受けるうえ、アマゾンの第一級のFBA資源や世界における販売の専門知識、顧客サービスにアクセスできる」と電子メールで回答した。

イーベイの課題

販売事業者は、Amazon.comに出品することの主要な利益は、年末商戦の期間が長くなることだと口を揃える。

eBayでの販売はクリスマスの約1週間前に減少し始めるが、Amazon.comの売り上げはその後も数日間堅調なままだ。注文がぎりぎりになってもプレゼントがクリスマスまでに配送されると顧客が信頼しているからだと販売事業者は言う。

米調査会社イーマーケッターによると、イーベイのマーケットプレイスの2014年の売上高の伸び率は6.4%と、業界の平均成長率である22%を下回った。同社がペイパルを分離した後に、イーベイのCEOに就任するデビン・ウェニグにとってこれは主要な課題となる。

ロンドンに本社を持つウォッチウェアハウス・ドットコムの電子商取引担当取締役、デービッド・エプスタインは、「イーベイはビジョンを失ってしまった。イーベイは小売業としての思考方法をとっていないが、アマゾンは小売業として考えている。それは事業のかなりの部分が小売業だからだ」と語る。ロンドンでも、アマゾンの売り上げがイーベイを上回っている。(文中敬称略)

(執筆:Spencer Soper記者、写真:Bloomberg、翻訳:飯田雅美)

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