(ブルームバーグ): ウォルト・ディズニーの最新映画「ウィッシュ」は、「眠れる森の美女」や「シンデレラ」といった人気プリンセスのアニメ映画を世に送り出した同社の創業100周年を祝う記念の作品となるはずだった。

だが、感謝祭の週末における興行収入は想定の半分にとどまった。マーベルやルーカスフィルムの作品に続き、ディズニーの新作映画はこのところ不発が続いている。

ディズニーの映画スタジオを含む部門は2年間にわたり赤字が続いており、足元の業績不振は同社にとって新たな潜在的問題を浮き彫りにする。少女向けのストーリーはディズニーの中核事業であり、関連の売上高はグッズやテーマパークにも及ぶなど裾野が広い。「ウィッシュ」を含め、ディズニーの劇場公開映画の興行成績が振るわないことは、取締役会の議席を狙うアクティビスト(物言う投資家)のネルソン・ペルツ氏と同氏のトライアン・ファンド・マネジメントに格好の攻撃材料を与えかねない。

物言う株主バリューアクト、ディズニー株を大量取得-関係者

ディズニーはこれまで「アナと雪の女王」や「トイ・ストーリー」などのヒット作品で感謝祭の週末5日間を独占してきたが、今年この時期に封切られた「ウィッシュ」は、興行収入が3160万ドル(約46億5900万円)どまり。製作費およそ2億ドルをかけた同作品は、ライオンズ・ゲート・エンターテインメントの「ハンガー・ゲーム」シリーズ最新作、アップルの「ナポレオン」に次ぐ3位に甘んじた。

ディズニー映画の幹部らにとって、失敗の原因分析は喫緊の課題だ。「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」や「トロールズ」シリーズ最新作(いずれもコムキャスト傘下ユニバーサル・ピクチャーズ制作)といったより遊び心あふれる今年のヒット映画と比べて「ウィッシュ」は真面目すぎたのだろうか?

ディズニーの動画配信サービス「Disney+」に新作映画がすぐに登場するとの認識が浸透し、家族連れの観客が映画館に足を運ぶのを控えるようになっていることも、懸念される問題の1つだ。

好みの変化も問題かもしれない。

星に願いをかける少女、邪悪な王様、かわいらしい動物の相棒といった過去の名作プリンセス映画へのオマージュがちりばめられた「ウィッシュ」。魔法の鏡、7人の小人、花火に囲まれた城など、ディズニーが築き上げてきたアニメ作品の遺産を記念として祝う意図があった。ちなみに映画レビューサイト、ロッテン・トマトの評価は50%と厳しい。

しかし、現代の少女はおとぎ話のプリンセスではなく、もっと年上で手本としてまねできる主人公やスターを求めているのかもしれない。グレタ・ガーウィグ監督のフェミニスト「バービー」、人気歌手テイラー・スウィフトさんのコンサート映画、そして新顔のヒロイン役が登場する「ハンガー・ゲーム」最新作などが今年人気を集めていることは、そうした新たな潮流を予感させる。 

1年前にディズニーのトップに復帰したボブ・アイガー最高経営責任者(CEO)は社員との対話集会で、映画事業の業績を評価していると発言。「映画を作りすぎていたことがやや落ち込んだ要因の1つだと思う」とした上で、「クリエイティビティーに関しては、質が最も重要であり、さまざまな意味で量が質を破壊することがあり得る。ストーリーテリングは明らかに当社のビジネスの核心だ」と続けた。

ディズニーは過去1年に映画の劇場公開日程を3度見直しており、中には最大3年遅らせ、2031年まで先延ばしたものもある。CEOとして2026年まで契約が続くアイガー氏は、これにより各作品の質を向上させる時間を一段と確保できることになるだろう。

原題:Disney’s Failing ‘Wish’ Shows Iger Also Has a Princess Problem(抜粋)

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