日本女子inプレミアリーグ_20150415_FC東京

プレミア女子×FC東京 特別対談第1回

プレミアリーグとJリーグのスポンサー営業はどこが違うのか?

2015/4/14
プレミアリーグのビッグクラブで働く本村由希が連載でJリーグ関係者との対談を呼びかけたところ、FC東京の小川知洋・事業部長が手を挙げてくれた。プレミアリーグとJリーグの事業には、どんな違いがあるのか? イギリス時間早朝にスカイプで行った対談をお届けする。
FC東京の小川知洋・事業部長。クラブのスポンサーセールスを担当している(写真:木崎伸也)

FC東京の小川知洋・事業部長。クラブのスポンサーセールスを担当している(写真:木崎伸也)

「Jリーグのスポンサー営業は独特かもしれません」

小川:初めまして、FC東京事業部長の小川知洋と申します。本村さんが連載の「Q&A編」で、「Jリーグの関係者の方、カモン」と書かれていましたよね。それを読んで、ぜひ自分がと思い、お声掛けさせていただきました。

本村:読者の方から「Jリーグとプレミアの違いは?」という質問を受けたときの答えですね。無責任に語れないので、「J関係者の方、カモン!」と答えさせていただきました。

小川:私のわかる範囲でお話しさせていただければと思いますので、今日はよろしくお願いします。

本村:はい、よろしくお願いします。

小川:私がFC東京で主に何をやっているかというと、スポンサー営業を担当しています。事業部というのがスポンサー営業の部署なんです。

本村:あ、そうなんですね。

小川:Jリーグのスポンサー営業は、もしかしたら本村さんからしたら、少し独特に感じるかもしれません。Jリーグでは多くのクラブに親会社があるので、親会社の関係する会社が付き合いでスポンサーになっていくというのが大体を占めているんです。

もちろん、そうではないケースもたくさんあるのですが、広告の価値としてスポンサードするというよりも、支援という形が多いのです。そういう意味で、スポンサー営業をどう発展させていくべきか、まだまだ手探りな部分があります。

本村:それは知りませんでした。

小川:だからこそ、プレミアリーグでどんな企業がスポンサードしているのか、すごく興味があり、見習いたいと常に思っていました。プレミアはリーグとしての価値が高いとしても、何か参考になることがあるんじゃないかと思い、本村さんの連載を読んでいました。

本村:親会社があるというのは、確かにスポンサーにも影響しますよね。

小川:ただ、FC東京はちょっと特殊で、ひとつの親会社という形ではありません。FC東京の場合、簡単に言うと、中核となる6社で親会社のような位置付けとなっています。

本村:複雑ですね。

小川:親会社と関係のある企業がスポンサーになるというのがメインで、純粋に広告の価値を認めて入ってきてくれる企業は多くはない。その数を増やしていかないと、Jリーグの規模は、大きくなっていきません。そこが今一番、スポンサー営業が取り組むべきところだと実感しています。

「プレミアの場合、完全にビジネスです」

本村:逆に言えば、ヨーロッパのクラブの場合は親会社がないので、助けてくれる人がいないということ。頼るところがなく、自分たちでやるしかない。ダメなら赤字になってしまいます。もしかしたら甘えるところがないのが、いいのかもしれません。

こういう言い方がいいのかわかりませんが、親会社や関連会社がスポンサーになるのはチャリティーの感覚なんでしょうか?

小川:あくまで個人的な感覚ですが、先ほど言ったように、広告価値に加えてプラス支援金という意味合いがあると思います。

本村:プレミアの場合、支援という形はなく、完全にビジネスですね。さらに言えば、プレミアのクラブでは広告だけを売っているという感覚は一切ありません。

広告というよりも、もっと総合的なブランド価値を上げるために、スポンサーになってくださいと呼びかけるからです。

もちろんオフィシャルスポンサーになったら、ピッチ横のLED看板など、広範囲に企業名が出て、広告価値がありますが、メリットはそれだけではありません。

たとえば、自分たちの企業の従業員に向けて、意識を高めたり、ひとつにしたりする効果が期待できる。いわゆるインターナルマーケティングですね。

オプション次第で、TwitterやFacebookでキャンペーンを行うこともできる。だから私たちは、広告だけを売っているという感覚はないですね。

小川:TwitterやFacebookのキャンペーンは、権利をオプションにしているんですか?

本村:そうです。だから、スポンサーシップの販売は、権利の集合体を売っているという感じです。

小川:権利の集合体?

本村:Webサイトに名前を載せる権利とか、いろんな権利をどんどん組み合わせて売るんです。日本ではスポンサー=広告という思い込みが強い。だからみんなが広告スペースを売る・買うという感覚でいるんだと思います。

小川:確かにそうですね。

「日本はスポーツで儲けると言いたがらない」

本村:繰り返しになりますが、スポンサードは広告価値ではなく、企業のブランド価値を上げるためのものです。

小川:そこは考え方を切り替えないといけないですね。

本村:多分、クラブ側だけが変わるんではなく、企業側も考え方を変えないといけないと思います。

もともと、スポンサーマーケティングって、社会貢献の意味ももちろんあるんですけど、企業ブランディングの目的で西洋で始まったものなので。

日本の企業でもマーケティングやブランディングの概念がもっと浸透していかないと、Jリーグの規模が大きくなっていかないんじゃないのかなと思いますね。

小川:本村さんが連載に書かれていましたけれども、やっぱり日本では企業ブランドのマーケティングという感覚がまだまだ少ないのかな、と思います。

本村:そうですね。年配の方になればなるほど、スポーツでおカネを稼ぐことを、あまり好ましくないと感じる人が日本では多いと思うんですね。

日本の古い武道体質というんでしょうか。スポーツ=体育で、心身を鍛えるものという考えが根底にあるからか、スポーツをセールスや商売道具として使わない、そういう意識があると思うんですね。

お隣の韓国の企業、サムスンとかヒュンダイとか、スポーツスポンサーに熱心なところは、大々的にスポーツでマーケティングを行うとうたっている。一方、日本の企業はスポーツマーケティングとうたっている大企業はあまりない印象です。

どこか目的を曖昧にする。スポーツを通して利益にするとは言いたがらないところがあります。企業の方も変わっていかないと、日本におけるスポンサーの現状は変わっていかないと思います。

(対談構成:木崎伸也)

*本連載は毎週火曜日に掲載予定です。