(ブルームバーグ): ドラッグストアチェーン大手、ツルハホールディングス(HD)が買収受け入れによる非上場化を検討していることが15日までに分かった。すでに財務アドバイザーを選定しており、複数のプライベートエクイティー(PE、未公開株)ファンドなどが興味を示しているもようだ。11月下旬に一次入札を実施するという。

複数の関係者が匿名を条件に明らかにした。ツルハHDの14日時点の時価総額は約5284億円で、プレミアム(上乗せ幅)を加味すると6000億円規模の買収になる見通し。アクティビストら株主対策から離れ、成長戦略に集中する狙いがある。検討は初期段階で、案件を取り下げたり、少額出資などの提案を採用する可能性もある。

ツルハHDは15日夕、ブルームバーグの報道について、「当社が公表したものではない」とした上で、企業価値向上に向けさまざま施策を継続的に検討しており、非上場化については「施策の一つとして一般的な検討を行っているに過ぎない」とコメント。今後、開示すべき事実が決定された場合には、速やかに公表するとした。

ブルームバーグの報道後、ツルハHDの株価は一時、前日比26%高の1万3485円まで上昇。2005年11月の上場以来最大の日中上昇率となり、21年11月29日以来、約2年ぶりの日中高値を記録した。

ツルハHDを巡っては、株式12.84%を保有する香港のヘッジファンド、オアシス・マネジメントが、コーポレート・ガバナンス(企業統治)不全を理由に8月の定時株主総会で同ファンドが推す社外取締役の選任などを求める株主提案を実施。すべて否決されたが、会社提案に賛成した筆頭株主のイオンが発表文で「大手ドラッグストア同士の再編の重要性を認識している」と言及するなど、ツルハHDの危機感をあおる内容が含まれていた。

ドラッグストア業界は再編の渦中にある。 英調査会社ユーロモニターによると、小売販売額ベースのドラッグストア(調剤薬局付き店舗除く)国内シェアでツルハHDは2位。マツモトキヨシホールディングスとココカラファインは2021年10月、規模を求めて経営統合し現在は同3位となっている。オアシスのセス・フィッシャー最高投資責任者(CIO)は今年6月、ツルハHDに対し、今後同業他社との統合を求める可能性が「あり得る」とにおわせた。

ツルハHDの株主構成はいびつだ。ブルームバーグのデータによると13.34%を保有する筆頭株主のイオンは、傘下にツルハHD競合のウエルシアホールディングスを抱える。モノ言う株主として知られるオアシスが2位株主としてこれに続く。創業家の持ち分は10%未満にとどまる。

ツルハHDは1929年に北海道で創業した薬局を前身とし、地場の薬局チェーンなどからの店舗譲渡や買収を繰り返して成長してきた。社長の鶴羽順氏は創業家出身。9月現在の店舗数は国内で2604店、海外で17店。中期経営計画によると、2025年5月期の売上高を22年5月期実績から16%増の1兆600億円、店舗数は2750店を目指すとしている。

(ツルハHDのコメントを追加して更新します)

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