(ブルームバーグ): 10月の米消費者物価指数(CPI)は全般に鈍化し、利上げ打ち止め観測が高まった。

変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は前月比0.2%上昇にとどまった。ガソリン価格下落の影響で、総合CPIは前月比横ばいとなった。

インフレ率はここ数カ月変動がやや大きいが、昨年付けた40年ぶり高水準からは大幅に低下してきている。これを受け、一部の金融政策当局者は利上げ打ち止めを示唆しているが、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は必要に応じて追加利上げを実施する可能性を繰り返し強調している。

パウエルFRB議長、適切なら一段の引き締め「ためらわない」

ウェルズ・ファーゴのチーフエコノミスト、ジェイ・ブライソン氏はブルームバーグテレビジョンで「追加利上げのハードルはますます高くなっている」と発言。「この統計は幸先の良いものだが、当局が任務完了を宣言するには、0.2%上昇があと数カ月続く必要があるだろう」と述べた。

家賃やパーソナルケア製品・サービスなどが上昇。医療保険料の算出方法を変更したことも寄与した。一方、航空運賃や中古車価格は低下した。

米CPIに上昇圧力か、10月から医療保険料の算出方法を変更

総合CPIの約3分の1を占める住居費は0.3%上昇。伸びは前月の半分にとどまった。コアインフレ率を金融当局の目標にまで引き下げるには、このカテゴリーが継続的に減速することが鍵になるとエコノミストはみている。帰属家賃も伸びが鈍化し、ホテル宿泊費は低下した。

ブルームバーグの算出によれば、住宅とエネルギーを除いたサービス価格は前月比0.2%上昇。前年同月比では3.7%上昇と、ほぼ2年ぶりの低い伸びとなった。金融当局者はこのカテゴリーの重要性を強調しているが、インフレ動向を判断する上では別の物価指数を使用している。

ブルームバーグ・エコノミクスのアナ・ウォン、スチュアート・ポール両氏はリポートで「10月のコアCPIが驚くほど軟調だったため、金融当局は政策金利が景気に対して十分に抑制的だとの確信を強めるだろう。それでも、連邦公開市場委員会(FOMC)が利上げサイクルの完全な終了を宣言するには、コアCPIがあと数カ月はこの動きを続ける必要がある」と指摘した。

サービスとは異なり、財価格の持続的下落がここ数カ月、消費者に一定の安堵(あんど)感をもたらしている。食料品とエネルギーを除いた、いわゆるコア財価格は5カ月連続で下落した。

とはいえ、家計は依然としてさまざまな面で逼迫(ひっぱく)している。食料品価格は肉や牛乳、パンといった基本的な商品のコスト上昇を反映し、7月以来の大幅上昇。自動車保険料も上がった。

インフレ調整後の平均時給は、10月に3カ月ぶりに上昇した。物価上昇圧力の緩和と併せると、支持率が約1年ぶりの低水準にあるバイデン大統領に安堵感をいくらかもたらす可能性がある。

今後は労働市場の方向性が個人消費の持続性を占う上で鍵となるだろう。個人消費はインフレを高止まりさせる一方、広範な成長の原動力となってきた。10月の失業率は2022年初頭以来の高水準に上昇し、消費者心理は悪化した。

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今週末までに米議会が政府期間閉鎖を回避できなければ、当面はインフレ指標の発表も限られる。政府機関が閉鎖されれば、労働統計局だけでなく、商務省経済分析局や国勢調査局など他の機関も統計発表を停止する。

統計の詳細は表をご覧ください。

原題:US Inflation Broadly Slows, Erasing Bets on More Fed Rate Hikes(抜粋)

 

(第8段落以降を加え、更新します)

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