なぜ日本ではスタートアップは盛り上がらないのか - CFO思考
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近年、大企業からスタートアップに対する直接出資やCVCを介した出資事例が増えてきました。また現状、日本におけるVCへのLP出資は主に事業会社が担っています。
それ自体は結構なことですが「主目的はシナジー創出であって、ファイナンシャルなリターンは二の次」といったスタンスが前面に出されることで、エコシステムに様々な歪みが生じているとも感じています。
・スタートアップの独立性と成長性の毀損
出資先のスタートアップに対して「下請け」として扱うようなメンタリティで大企業が接し、「シナジー創出」を強いることで、当該スタートアップの独立性と成長性が損なわれてしまう
・野放図な企業評価による資金調達の阻害
「事業シナジー目的」「ファイナンシャルなリターンは二の次」という免罪符の下、妥当性のない評価に基づく出資が横行し、次回ラウンドやIPO、上場後の成長が阻まれてしまう
・VCのインセンティブ構造の歪み
大企業LPがVCに対して投資リターンではなくシナジー創出やリサーチ機能を求めることで、VCが金融業ではなく「大企業に対するサービス業」と化し、規律のない企業評価や、キャリーではなく管理報酬で稼ぐインセンティブ構造を生み出す
・エコシステムの衰退
以上の複合要因で事業実態と乖離した評価に基づく出資が横行する結果、企業評価の歪みが上場時・上場後に発現し、上場プロセスや持続成長の不調、上場株投資家や世間からの不信任に発展する。世間から信任されない存在は、世の中に浸透せず、エコシステムとして発展しない
大企業側の立場からすれば、自社との事業シナジーをスタートアップに求めること自体は理に適った行為と思いますし、個々の活動自体を否定するものではありません。実際、私自身もミクシィの代表時代には自社との事業シナジー創出を企図してVCへのLP出資やスタートアップへの直接投資、CVC設立を行ってきました。結果、ラクスルのIPO等、相応の成果を挙げてきたものと自負しています。ただその立場から離れると、こうした取り組みはマクロ観点から捉えれば典型的な合成の誤謬だと思う次第です。
この点、大企業におけるスタートアップ関連の活動主体を、経営企画室から年金運用を担う労務や経理に移すことこそが、「大企業とスタートアップの連携」における最大のテーマであると私は思います。良記事です。
ベンチャー企業がファイナンシャルなスケールを実現できず、大企業の下請けとなってしまう背景
◾️日本の資産所有企業: リターンに応じたインセンティブ設計がなされておらず、ファイナンシャルリターンよりも既存路線踏襲に偏りがちで、VCに流れない
◾️事業会社: CFOが投資に対するファイナンシャルなリターンを求められておらず、リターンよりシナジーを重視し、下請け的に扱う