DJ-スタバの税慣行、欧州当局の調査の的に
2015/04/07, ダウ・ジョーンズ
【ブリュッセル】米コーヒーチェーン大手スターバックス(スタバ)は、同社にとって欧州最大級の市場で長年にわたり数億ドル規模の年間売り上げを記録しながら赤字を計上したことをめぐって規制当局や各国政府から疑いをかけられている。
一方、欧州連合(EU)当局が正式な調査に乗り出した昨年には利益が計上された。同社の欧州本部があったアムステルダムは4億0700万ユーロ(約530億円)の利益について明らかにした。スタバはその後欧州本部をロンドンに移した。
スタバの届け出によると、この棚ぼた利益の理由は、スイスのコーヒー購買部門(従業員数40人)から移管した配当金5億0200スイスフラン(約630億円)だ。
多額の利益はスタバの欧州での税慣行に疑問を呈する公算が大きく、同社が調査対象となるのはわずか2年余りで2度目となる。スタバの税問題を調査している欧州委員会のマルグレーテ・ベステアー委員(競争政策担当)は、6月までに調査結果を発表すると宣言しており、場合によってEUはかなりの遡及税を要求する可能性もある。
スタバにとって圧倒的に地域最大の市場である英国でなくオランダに最近まで本部を置くという複雑な欧州業務の構造については、租税回避のためではないと同社は長らく主張してきた。むしろ、アムステルダムにあるコーヒー焙煎所の周辺に構造を築くことで当地の豊かなコーヒーの歴史を反映していたと説明した。
それでも、税制面の利点は明らかだ。アムステルダム部門は、オランダ政府との合意の一環として昨年の税引き前利益4億0700万ユーロに対してわずか260万ユーロ(税率1%未満)の法人税を支払ったが、これがEU当局の注目を集めた。
スタバでは世界中で使用するすべてのコーヒーをスイス部門が購入しているが、コーヒー豆自体はスイスを実際に通過したことはない。その後20%の利幅を上乗せしてスタバの世界各地の拠点に販売される、と2012年にスタバの当時の最高財務責任者(CFO)だったトロイ・アルステッド氏が英議会に明らかにした。
つまり、スイス部門は世界のスタバ店舗が購入するコーヒーにコストを上乗せし、店舗の利益を低下させていることになる。20%の利幅の「妥当性」については、疑問を投げかける英国議員もいた。
スタバは「傘下企業が生み出す利益は定期的に配当として支払われている」とし、異なる国の事業部門間で生じる手数料については国際指針に従っていると述べた。
昨年10月にアムステルダムにスイスの配当が到着すると、スタバが同日中にその大半を新しい英国の持ち株会社に移管したことを同社の届け出書類は示した。これは同社が昨年6月以来英国で設立した3組織の一つ。スタバはその後、ロンドンを本拠地とするアルキという別のダミー会社を解体した。アルキはアムステルダムからロイヤルティー代金として年間数千万ドルを受け取っていたため、EU当局の調査の焦点となった。
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コメント
注目のコメント
これはすでに数年前から問題になっているのだが、スタバだけではなく、アップルやグーグルなどの数多くの著名企業が行っている複雑なスキームに対する対応策は、未だ始まったばかり。
この問題がなかなか解決しないのは、例えばスタバであれば商社機能を置いているスイスであったり、おそらく権利関係等の関係から多くの会社が支社や欧州本社や投資子会社をおいているアイルランド、オランダ、ルクセンブルグなどがかなり消極的であり、また企業幹部からの様々な方向からの根回しももちろん強力であるためでもある。
ちなみに、日本でもスタバで売っているコーヒーの袋を確認すると、なぜかアメリカでパックされたりしている。色々と原価の発生場所を調整することで、日本でできる限り税金を納めないようにしているのだ。
それにしても、この記事にあるスタバの「アムステルダムにあるコーヒー焙煎所の周辺に構造を築くことで当地の豊かなコーヒーの歴史を反映できる」という言い訳は、かなり苦しい。書いている担当者の苦笑いが想像出来る。。。(^^;もしあなたが暴漢から追われたら、どんな手を使っても必死で逃げようとするでしょう。そしてそれを誰も責めないでしょう。ところが企業が税から逃げると、なぜか無条件に逃げるほうが悪いという話になるのです。