(ブルームバーグ): 日本銀行が30日、31日に開く金融政策決定会合で議論する新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、2023年度と24年度の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)の前年度比上昇率の見通しが上方修正となる公算が大きい。複数の関係者への取材で分かった。

関係者によると、新たなコアCPI見通しは、23年度が7月時点の2.5%から3%に近づく可能性が高い。24年度については従来の1.9%から2%以上への引き上げが視野に入るという。

コスト上昇に伴う価格転嫁の動きが想定よりも長引いているほか、足元で中東情勢の緊迫化もあって原油価格が上昇し、1ドル=150円付近に再び円安が進行していることが、追加の物価押し上げ要因となる。

政府によるガソリン補助金や電気・ガス代の負担軽減策が年末まで延長されたことは、23年度の物価を押し下げるものの、24年度にはその反動で押し上げ要因になるとしている。

一方、持続的・安定的な物価2%を見通せる状況には至っていないとの日銀の見方には変わりはないという。海外経済を中心に先行きが不確実な情勢が続いており、25年度については従来の1.6%から大きく変わらない見通しだとしている。

18日の債券相場は下落し、新発10年債利回りは0.81%と2013年8月以来、10年2カ月ぶりの高水準に上昇。米国で小売売上高や鉱工業生産が力強い内容で長期金利が急上昇したことや、日銀が月末の決定会合で物価見通しを上方修正するとの報道が売りにつながっている。

東京外国為替市場でドル・円相場は1ドル=149円台後半で推移している。ブルームバーグの報道を受けて、前日の海外時間には一時円が買われ、148円84銭まで急騰する場面が見られた。

ドル・円が日本政府が昨年実施した円買い介入の水準付近で推移する中、日銀はこ今月会合で物価見通しを議論する。7月会合では物価見通しを上方修正。長期金利の許容上限を事実上1%に引き上げるイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の運用柔軟化も決定した。 

日銀がYCC運用を柔軟化、長期金利の指し値オペ1%に引き上げ

鍵を握る来年の賃上げ

鍵を握る来年の賃上げの見極めには時間を要するものの、人手不足の強まりや高水準の企業収益などを背景に、日本経済は賃金・物価の好循環に向けた動きが継続。日銀が重視する基調的な物価の動きも、中長期的なインフレ期待が底堅さを維持するなど改善基調にある。

コアCPIは8月(3.1%上昇)まで12カ月連続で3%超の水準で推移している。植田和男総裁は9月の講演で、2%物価目標の持続的・安定的な実現には、輸入物価の上昇を価格に転嫁する動きから、将来の価格上昇を見越した賃金・価格設定にバトンタッチしていくことの重要性を指摘した。会合では、こうした動きに広がりが見られているのか、入念な点検を行うとみられる。

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(18日の市場の動きなどを追加して更新しました)

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