2023/10/24

求めるのは“挑戦”と“危機意識”。総合商社「丸紅」転職のリアル

NewsPicks Brand Design Editor
 転職を考えている人々のなかに、「総合商社」を視野に入れている人はどれほどいるだろうか。
 多様な業界に裾野を広げ、グローバルにビジネスを行い、大きく稼ぐ。総合商社はそうしたイメージを持たれる一方、「ラーメンからロケットまで」と言われるほどあらゆる商材を取り扱い、ビジネスモデルも幅広い。
 総合商社で活躍する社員は新卒採用からの生え抜きが中心といったイメージを抱かれがちだが、異業種からの転職者はどのように活躍し得るのか。
 丸紅人事部の矢野倫久氏に、総合商社で働くキャリア入社組は、どのようなキャリアパスを描けるか聞いた。
INDEX
  • 総合商社への転職、2つの不安
  • 厳しい時代を越えてきたから、強い
  • キャリア入社組のリアル
  • 挑戦したい人には、活躍の場は無限

総合商社への転職、2つの不安

──異業種から総合商社への転職を考える人々には、どのような不安を抱えているケースが多いと感じますか。
矢野 キャリア採用者から挙がる不安として代表的なものは2つあります。
 1つ目に、「新卒入社した生え抜きの社員と肩を並べて活躍できるのか」。2つ目は「自分の経験やスキルがフィットするのか」という不安です。
 実際に当社のキャリア入社の社員の話を聞いていただくと、これらが杞憂であることがわかっていただけるかと思います。
 現在丸紅は、目指す在り姿として「Global crossvalue platform」を掲げ、さまざまな掛け合わせによって価値を創造し、社会や顧客に向けてソリューションを生むことを目指しています。
 その価値の源泉はまさしく「人財」です。
 同質性の高い集団のままでは、この変化が激しい時代に対応していくことができない、と私たちは危機感を持っています。
 よって、多様なバックグラウンドを持つマーケットバリューの高い人財が集い、会社・組織を越えて行き交い、新たな掛け合わせを創出する。我々は「丸紅人財エコシステム」として、こうした人財と価値の循環を生み出す人財戦略を掲げています。
 その多様性の重要なピースがキャリア入社の方々です。丸紅にはすでに、キャリア入社で活躍している社員が多数います。
──異業種から経験もスキルもさまざまな人財が集まるわけですが、丸紅ではどのような人財を求めているのでしょうか。
 特定分野での経験や専門性を持つ即戦力人財を対象とした通年募集のキャリア採用に加え、新たに若手社会人向けの採用コースを開始しました。
 ファーストキャリアで当社社員とは異なる成長を遂げた方々に仲間入りしていただくことで、いままでにない化学反応が起きることを期待しています。

厳しい時代を越えてきたから、強い

──総合商社にもさまざまな会社があります。丸紅で働くことにはどのような良さがあると考えますか。
 まず総合商社の面白さは、決まった形がないところだと思っています。
 地域、業界、ビジネスモデル、すべてを自由に掛け合わせながら、一人の個人が戦略立案から実行まで一気通貫で携わることができる。
 ここまで自由度が高く、時代によって役割を変化させながら、その時代ごとの課題を解決し続けられる業態は、世界中を見渡しても総合商社くらいではないでしょうか。
 そのなかでも丸紅は、“挑戦し続けることが求められる”環境だと考えています。
──どういうことでしょうか。
 当社は2001年に大きな減損を計上し、それによって財務基盤を棄損するだけでなく、成長投資よりも債務返済を優先せざるを得なくなったことで成長が鈍化するなど、会社のステージが何年分か逆戻りしてしまうということがありました。
 社内外で非常に厳しい環境に置かれるなかで、社員は顧客のために「丸紅だからこそできること」を徹底的に追求することが求められてきました。
 これが良い意味で、成長機会を生んでいたのではないかと私は考えています。
 そして、コロナ禍開始直後の2019年度の決算で再び大きな減損を出しましたが、大きなリスクを一掃し、財務基盤や収益力を強化してきた結果、2022年度の決算では史上最高益を実現しています。
 厳しい時代を乗り越えさらなる成長への投資を拡大しているフェーズにあるいま、社内では現状維持により時代に遅れることへの危機感が共有され、大胆な発想とリスクマネジメントを両立させながら新しいことに挑み続けることが求められています。
──挑み続けることが求められると言われると、厳しい環境をイメージし転職に二の足を踏む人もいそうです。
 たしかにこうした環境に飛び込むことは勇気がいることかもしれません。でも先ほどお話ししたように、丸紅はお互いを尊重し、強みを生かし合おうとする文化があります。
 また組織や分野を超えて力を合わせるという姿勢も浸透していますので、厳しい環境で孤立してしまうようなことはありません。
 この企業文化は丸紅の強みの1つであり、丸紅の多様性は、この文化があるからこそ成立していると思っています。

キャリア入社組のリアル

ここからはキャリア採用で入社した2名にインタビュー。異業種からなぜ丸紅へ転職したのか。その動機と入社前後のギャップ、キャリア観の変化を聞いた。
丸紅に中途入社した、宮森映理子さん(左)と田中大輝さん(右)
──お二人はなぜ異業種から丸紅への転職を選択したのですか。
田中 私はもともと新卒で外資系化粧品メーカーに就職し、マーケティングを中心にキャリアを積んでいました。
 業界トップ企業に入社することで世界規模でのベストプラクティスを学びたい。最初の会社でその願いは叶えられましたが、数年経つと専門化が進んでいるがゆえの個人の担当領域の狭さや、マネジメントになるまでの時間軸に課題を感じ始めました。
 今後のキャリアパスを考え、“タテ”と“ヨコ”の両軸でスキル・経験を拡張できる環境にいきたいと考えたのです。
 “タテ”とは、若いうちからPL管理・ピープルマネジメントの経験を積むチャンスがあること。“ヨコ”とは、取り扱う商材や事業対象となるエリア・地域に幅があることです。
 その両軸で経験が積める転職先を考え、選択肢に浮かんだのが総合商社でした。
 総合商社は世界中でビジネスを展開し、事業領域、商材、エリアに圧倒的な幅広さがあります。
 若手のうちから出資先の企業に出向し、経営に近いポジションで働くチャンスもある。
 まさに求める条件にマッチしていました。
宮森 私はもともと環境・エネルギー分野の専門コンサルタントですが、調査結果をレポートにまとめてクライアントにプレゼンしたら終わり、という点にもどかしさを感じていました。
 自分の提案が実際のビジネスの現場でどう役立つのか。どうすればさらに役立つ提案ができるのか。それを知りたいという思いから、事業会社への転職を考え始めたんです。
──専門職から総合商社への転職ですか。
宮森 私のような専門的なスキルだと、転職先の候補は事業会社でも調査部門や経営企画室などに限られますので、そうしたポジションを探していました。
 そのなかで、丸紅にも調査研究を担う組織があることを知ったんです。
 同じ調査業務でも、総合商社は見るべき地域も業界もかなり幅広い。調査対象としてあらゆる領域を見られることに、強い興味を惹かれました。
──入社前に想定していたキャリアビジョンと、現在のキャリアの間にギャップはありますか。
宮森 もともと専門的な知見を生かした調査や分析をビジネスの現場で役立てたいと考えていたので、自分が手と頭を動かした結果をダイレクトに営業部に活用してもらえる仕事にやりがいを感じています。
 単にデータを渡すだけではなく、どう分析・考察し、事業成長につなぐ一手を打つかを、営業部のメンバーと一緒に考えることもあるんです。
 これはシンクタンク時代には決してできませんでした。
田中 私の場合、総合商社は組織が大きいため、現場の人間は上から降ってきた仕事を着々とこなしているイメージがありました。
 しかし実際は、一人ひとりがプロジェクトリーダーとして、事業をどうやって推進するかを考える必要がありますし、自ら手を挙げて希望すれば新しいチャレンジの機会も与えられる。これは嬉しい驚きでした。
 もう1つ挙げると、人財評価の軸であるミッション制度により、個々人がキャリアパスを自発的に描ける環境も想像以上でした。
 私の場合、前職で培ったスキル・経験が活きるミッションと、新たな学びが必要なストレッチミッションをバランスよく設定いただいているため、“心地良い危機感”を持ちながら、いまの自分に必要な成長を追い求めることができています。

挑戦したい人には、活躍の場は無限

──人事部の矢野さんからは「新しい挑戦が求められること」が丸紅の魅力だという話がありましたが、実際に働くなかでどう感じていますか。
田中 固定観念にとらわれずゼロベースで考える力を鍛えられる、そうした貴重な機会が多く得られると思っています。
 私が所属しているのは、従来、丸紅が取り組んでいない次世代事業を創出する部署です。この本部では限られたアセットと時間的制約のなかで、いかにして新事業を生み出すかを考えなければなりません。
 使えるリソースが限られるがゆえに、幅広く考え、新しいチャレンジができる環境です。
 かつ、社内に経験が蓄積されていない新領域が事業対象のため、外部リソースを積極的に活用しており、社内外のプロフェッショナルから学びが得られる。成長できる魅力的な環境だと日々感じています。
──丸紅に転職したことで、キャリア観に変化はありましたか。
宮森 私はいくつかのキャリアパターンを想定しています。
 調査や分析をもとに社内外へ情報発信する仕事をメインにするのであれば、おそらく現在の専門性を深めてアナリストとしてのポジションを築いていくことになる。それが私のような職種の一般的なキャリアです。
 一方で営業部やコーポレート部門の支援を主軸とした活動に関わり続ければ、キャリアパスに広がりが出ますし、私自身が営業部に移り、戦略の立案から実行まで手掛けることができるかもしれない。
 さらにキャリアを積んで「世界を見てみたい」と思えば、海外駐在を経験する道もあります。
 丸紅には社内人財公募制度など多様なキャリアパスを柔軟に選択できる環境があるので、その時々で自分が行きたい方向へ進んでいきたいと考えています。
──異業種からでも、過去のキャリアに縛られることはないと。
宮森 しかもキャリア採用者は、異業種の経験がある分、言ってみればこれまでに得たスキルやノウハウを組織に還元できるという“強み”をすでに持って入社するわけです。
 私の場合、環境やサステナビリティの専門家としての知見だけでなく、たとえば過去に培った人脈を生かして社外の専門家を紹介することでも組織に貢献できます。
 キャリア採用者ならではの強みを発揮しながら社内でポジションを築いていけるのは、丸紅で働く醍醐味だなと実感しています。
田中 外からではよく見えない部分もあるかもしれませんが、丸紅の人々はとても懐が深く、立場を問わず個人の意見を聞いてリスペクトする文化があります。
 何より、ここには意欲ある人がチャンスを得られる環境があります。
「新しいことに挑戦したい」「この仕事を通じて自分自身も成長したい」。自分のなかにそうした原動力があれば、活躍の場は無限に開けると思っています。
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