イスラエル、地上戦最終準備か-ハマスを地球上から抹殺と国防相
コメント
注目のコメント
殲滅となると、
・主だったハマースメンバーの殺害ないし拘束
(10万人程度)
・兵器やインフラ(情報通信を含む)、資金の廃滅
が必要になります。
むずかしいのは、まず、ハマースのメンバーは、看板を掲げた事務所にいる訳でもなければ、制服を着ている訳でもありません。
200万人のガザ地区住民に混じって生活しています。
ハマースは、200万人のガザ地区とはいえ、統治機構ですから、戦闘員だけではなく、公務員や警察官、消防士、医療部門、メディア部門、企業家と従業員、運営しているいくつもの学校や幼稚園の教員もいます。
つまり、ハマースとガザ地区の一般住民の区別はつきません。
ハマースが、「自分はハマースだ」と名乗って出現するわけでもありません。
それに、ガザ地区には、ハマース以外にも、小規模ではありますが武装してイスラエルを攻撃するいくつもの組織があります。
一般住民も、イスラエル軍が攻め込んでくれば、銃を持って反撃する人も多数いるでしょう。
つまり、殲滅となると、実際にはガザ地区住民200万人の全てを攻撃するのと変わらないことになります。
イスラエル政府としては、それで殲滅するよりも、できるだけ一般住民をガザ地区から出ていかせる、具体的には西隣のエジプトに難民として出ていかせるのが望ましいでしょう。
しかし、その中にハマース指導部も混じって出ていってしまえば、殲滅しきることはできないので、それならやはり根こそぎにした方が確実に殲滅できる、ということになります。イスラエルが封鎖したことで昨日、ガザの発電所が止まったというニュースがありました。最初から想定されていたことですが、イスラエルの報復措置で民間の犠牲が著しく増えています。一方で、ハマスそのものへの被害は不透明な状況。(一部の幹部クラスの殺害はあったようですが)
イスラエルは攻撃された側で、自衛権があります。自衛権の行使は正当な権利で、それ自体が咎められるものではありません。しかし、自衛権の行使は一定の対称性を求められます。あまりにも非対称な現状に、すこし国際社会のトーンも変わってきているように見える。過剰防衛は、それはそれでいけないということ。
それでも、イスラエル軍は地上戦をやるのでしょう。そうなれば、犠牲の数は更に増え、双方の残虐な行為を目にする機会が増えるのだろう。
この戦いは、双方が一切容赦をしない、悲惨を極めるものになっている。そして更に恐ろしいのは、「本番」がこのあとに控えていること。事態を止められるアクターは、中東どころか世界を探してもいない。既に西岸地区はユダヤ人の入植地だらけ、ガザ全土への総攻撃と制圧なら「パレスチナ自治区」は地図から消えるかもしれません。ただそれで平和が戻るかと言えば極めて疑問です。「失うもの」すらないほど追い詰められた過激派が「窮鼠猫を嚙む」的な自爆攻撃を今後も繰り返す可能性は充分にあります。
それでも双方とも「人命より神の正義」の強硬派を抱え、下手に敵と妥結すれば身内に殺されかねません。もはや完全に忘れられていますが、双方が「両国間の関係正常化」で合意した「オスロ合意」がちょうど30年前の8/20です。当時のラビン元首相はPLOのアラファト元議長と共にノーベル平和賞を受賞しましたが、翌年ラビン元首相はユダヤ人過激派に暗殺されました。
敵側の過激派は叩きつつ穏健派は取り込むのが通常の「現実主義的」戦略ですが、妥協を「神への冒涜」と見なす狂信者の存在はそれを困難にします。だから宗教が絡むと解決が絶望的になります。