2023/10/31
【戸田奈津子】下積み20年。ようやく訪れた「大チャンス」
人生の「探求者」たちのエピソードから、自分らしく、しなやかに生きるヒントを探る連載「Life Quest(ライフクエスト)」。
今回登場するのは、字幕翻訳者の戸田奈津子さん。中学生の頃から洋画に夢中になり、10年以上の下積みを経て、字幕翻訳の世界に。
『E.T.』『タイタニック』『インディ・ジョーンズ』『ミッション:インポッシブル』など数々のヒット作をはじめ、これまでに翻訳した作品は1500本以上に達している。
そんな彼女は、半世紀にわたる人生を字幕翻訳に捧げた今でも、情熱は駆け出しの頃とまったく変わっていないという。汲めども尽きない情熱の源とは何か。その生き方を5回にわたってお届けする。(全5回)
- 少し見ただけで「下手だ…」
- 失敗でわかった字幕の「ルール」
- 1ミリずつ上手くなる
- 仕方なく始めた通訳がチャンスに
少し見ただけで「下手だ…」
字幕翻訳の仕事をしたいと思ってチャンスを待つこと10年、ようやく仕事をいただくことができました。
フランソワ・トリュフォー監督の『野生の少年』というフランス映画です。
狼少年が文明社会に復帰する実話を映画化した作品で、トリュフォー監督自身が育ての親を演じています。
フランス映画ですが、トリュフォー監督は英語もお出来になるので「英語版」があり、それを翻訳しました。
最初から最後まで自分で手がけた字幕がスクリーンに書き込まれ、いよいよ試写室で見ることになりました。
(画像:Mitsuki4444/iStock/Getty Images)
ところが…、映像を少し見ただけで、「何て下手!」と唖然としました。