(ブルームバーグ): 米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏が日本の5大商社株の保有比率を高めたことは、日本株を33年ぶりの高値に押し上げる一因となった。あれから半年が経過し、バフェットウオッチャーの間では次なる日本株の投資先候補として保険や銀行など金融株が有望だとの声が上がっている。

香港のスパークス・アジア・インベストメント・アドバイザーズ・リミテッドで、2億9400万ドル(約437億円)規模のヘネシー・ジャパン・ファンドを運用する武田政和ポートフォリオマネージャーは「バフェット氏が好むのは地味だが、ファンダメンタルズが強いバリュー(割安)株だ」と指摘する。

武田氏は、バフェット氏が商社の次に投資する日本株の有力候補は東京海上ホールディングスやSOMPOホールディングス、MS&ADインシュアランスグループホールディングスなど保険株だと予想。株価純資産倍率(PBR)の低さや比較的高いリターン、堅調な業績などを理由に挙げている。

バフェット氏が率いる米投資・保険会社バークシャー・ハサウェイは2020年8月にかけ伊藤忠商事、丸紅、三菱商事、三井物産、住友商事株を各5%以上取得し、22年秋に6%まで保有比率を高めると、23年4月の来日時には7.4%まで買い増したことを明らかにした。5大商社株を含む東証卸売業指数は4月以降、10日までに29%上昇している。

一連の動きは国内外投資家の日本株買い意欲を刺激し、9月に33年ぶりの高値を更新した東証株価指数(TOPIX)は23年度上期に16%高と欧米やアジアの主要市場をアウトパフォーム。今は5大商社株しか持っていないが、次の投資先は常に頭の中にあるとバフェット氏は言及しており、今後の投資先に市場の注目が集まっている。

みずほ証券の菊地正俊チーフ株式ストラテジストは、大手銀行株も同氏の投資候補に入るのではないかとみている。来年初めにも賃上げの見込みが明確になり、日本の金利上昇が確実になれば、「バフェット氏は買いを入れるかもしれない」と言う。三菱UFJモルガン・スタンレー証券のアナリストも大手銀行株を有望視している。

バフェット氏は、バリュエーションが低い企業を長期的に保有する投資スタイルで知られる。日本の保険株のPBRは1.1倍とTOPIXの1.5倍より低く、銀行株も0.7倍と割安感が強い。

国内金融株にとっては金利の先高観測が強まっていることも追い風だ。賃金上昇を伴うインフレと経済構造の転換が進めば、日本銀行はマイナス金利政策を解除し、利上げに動く可能性は高い。日銀総裁が交代した4月以降、銀行株は41%、保険株は34%ぞれぞれ上げ、東証33業種の上昇率上位に並ぶ。

ブルームバーグはバークシャーの広報担当者に電子メールでコメントを求めたが、現時点までに回答はなかった。

一方、大和証券の石戸谷厚子ストラテジストは金融株がバフェット氏の関心を引く可能性はあるものの、引き続き商社株への投資を重視し、買い増すのではないかとみている。バークシャーは5大商社株の保有比率を9.9%まで引き上げる計画を示していた。

14年からバークシャーの株主総会に出席するびとうファイナンシャルサービスの尾藤峰男代表取締役も、商社株がバフェット氏の主要なポートフォリオの主要な一部であり続ける可能性が高いと指摘。その半面、信越化学工業やブリヂストン、富士フイルムホールディングスなど安定した成長を見せる企業も保有検討の対象になると予想した。

関連記事

バフェット氏のバークシャー、4-6月の営業利益好調-株は売り越し

「バフェット銘柄」総合商社が株主総会、出資強化で注目高まる

米バークシャー、5大商社株の持ち株比率高める-平均8.5%超に

バフェット氏は台湾より日本を選好-伊藤忠株が上場来高値を更新

バフェット氏が日本株の追加投資検討と報道ー商社株が急伸

--取材協力:西沢加奈、Max Reyes.

More stories like this are available on bloomberg.com

©2023 Bloomberg L.P.