Ritsuko Shimizu

[東京 2日 ロイター] - 岸田文雄首相は、資産運用会社を抱える大手金融グループに対し、運用力の向上やガバナンス(企業統治)改革・体制強化を求めていくことを明らかにした。さらに、来年夏をめどに年金基金や生保などの機関投資家に求められる役割を明確化する方針も示した。

2日に開かれた日経サステナブルフォーラムで述べた。

政府は、新たな資本主義実現会議の下に「資産運用立国分科会」を設立する。4日に初会合を開き、年内に運用力向上や体制強化に関して政策プランを策定する。運用会社を傘下に持つ銀行や証券会社、保険会社など大手金融グループに求めていく内容は今後検討していくが、法律などで縛ることは難しく、強制力を持つものにはならない見通し。

運用を委託されている機関投資家の役割では、最善の利益をもたらす資産運用会社の選択や運用内容の見える化などを求めていく。規模が大きくない企業年金については、確定給付企業年金向けの共同運用も進める。

岸田首相は「目指す資産運用業の姿は、国内外の優れた事業者や人材が日本に集まり、競い合って専門性と運用能力を高め、家計を含む投資家により良い商品やサービスを提供することだ」と強調した。

また、20兆円規模で国が発行するトランジション・ボンドを「クライメート・トランジション・ボンド」として発行すると紹介。知的財産の創出に向けたイノベーション投資やその産業化を促すため、特許などの所得に対する減税制度の創設の検討を進める、とも語った。

岸田首相は9月にニューヨークで行った講演で、資産運用業の強化を打ち出した。この中では、日本独自のビジネス慣行や参入障壁の是正、バックオフィス業務のアウトソーシングを可能とする規制緩和の実施などを表明した。