(ブルームバーグ): 25日の東京外国為替市場の円相場は対ドルで小幅ながら年初来安値を更新した。日本銀行の大規模金融緩和の維持や植田和男総裁の会見を受けて売り圧力がかかった前週末の流れを引き継いだ。この日も植田総裁の講演が注目されたが、先週末の会見と大きな違いはなかった。

ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリストは、先週末の日銀がハト派的だったことから円安圧力が継続する一方、米株安懸念から一方的なドル買いの展開でもなくなっているとし、「150円に向けてじわじわと円安が進む感じだ」と言う。日銀総裁の講演については「会見と同じような見解なら、新しい材料が出なくても円売り要因として意識されやすい」と述べた。

植田総裁は25日午後の講演で、企業の賃金・価格設定行動の一部に変化は見られ始めているとしながらも「賃金の上昇を伴う形での2%の物価安定の目標の持続的・安定的な実現を見通せる状況には至っていない」と述べた。森本氏は「円オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場のマイナス金利解除期待は日銀会合後もそれほど後退していないが、それが剥落してくるとさらなる円安圧力になり得る」とみる。

YCCの枠組みで金融緩和を粘り強く続けていく必要-日銀総裁

22日は日銀の大規模緩和継続の決定を受けて147円台後半から148円台前半まで円安・ドル高が進行。植田総裁の会見も警戒されたほどタカ派的でなく、さらに円が売られ、25日の市場では2営業日ぶりに年初来安値を小幅更新した。

一方、米連邦準備制度理事会(FRB)が高金利継続姿勢を示す中、米株式相場の続落やVIX指数の高止まりなどリスク回避の流れが米金利やドルの上昇を抑えている。野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは「基本的には円じり安が続くが、米株価動向や日銀のコミュニケーションを見ながら、相場はこう着しやすい」とみていた。

関連記事

  • 米株式市場がリセッションを警告、雑音に過ぎないとみる投資家も
  • 米総合PMI、9月の企業活動停滞-サービス部門の需要さらに鈍る
  • 米利上げは現時点で終わった-モルガン・スタンレーのゼントナー氏

More stories like this are available on bloomberg.com

©2023 Bloomberg L.P.