「pairs」「Couples」「受験サプリ」etc. 人気サプリのマネタイズ戦略
リクルート、アプリで初挑戦する「ユーザー課金」への道
2015/3/21
2月26日、新丸ビル10階のEGG JAPANイベントスペースにて、App Annie主催のセミナーが行われた。なかでも注目を集めたのは、スマートデバイスにおけるアプリケーション事業を展開中のエウレカ、GameBank、リクルートホールディングスの担当者の3人によるディスカッション。モデレーターは、NewsPicks編集長の佐々木紀彦が務めた。その内容を3回にわたってリポートする。
第1回目:エウレカ、リクルートetc 人気アプリのPR戦略、キーワードは「錯覚」
第2回目:エウレカCEOが、月一回、青学の女子高生に会う理由
もうけは可処分時間の行き先に発生する
佐々木:赤坂さん、「Couples」はこれからメディア化すると伺いましたが、詳細なマネタイズ戦略とは?
赤坂:うちは最初から、可処分時間ということしか考えていない。例えば、LINEが伸びている理由は、個人の可処分時間を獲得したのが大きな理由。可処分時間を獲得した先にあるものがゲームなのか、メディアなのか、コマースなのか、漫画なのかという違いだけだと思っています。
カップル間のコミュニケーションを選んだ理由は、そもそも彼らのやりとり回数の“半端ない多さ”というところに惹かれたからです。カップルは、1日に何回も「Couples」を訪れています。このアプリのDAU(Daily Active Users)率とMAU(Monthly Active Users)率の高さは本当に高い。例えばMAU率はダウンロード数に対して半分ぐらい。メディアにしたときの価値は大きい。
ユーザーは10代、20代の若者で、なおかつ恋人同士。そこに映画の宣伝をしたら、彼らは翌日には映画館に足を運ぶと思う。僕らが目指しているのは、『東京ウォーカー』とか、土曜日のテレビ番組「王様のブランチ」とかの世界。その世界観をアプリで構築すれば、「今週末どこに行こうか、じゃあ『Couples』を見なくちゃ」という行動が生まれるはずです。
佐々木:もうひとつ、「pairs」のマネタイズは?
赤坂:こちらは、マッチメイキングエンジンの開発に注力しています。我々が取得しているデータは、入会時に運転免許書などを提出してもらうことで年齢確認を行っています。その後、プロフィール入力をしてもらうが、そこには年収が入っている。しかも「mixi」がやっていたようなコミュニティの機能も入っているので、趣味と職業・年収のデータとプロフィール写真がある。そうした詳細なプロフィールが200万件もあります。
そのデータの中から、例えば、東京都の人はどの県までは恋愛対象なのか、などのデータ活用が可能です。ちなみに、その距離感覚は、地方の方々の感覚と全然違う。そうした違いも数字に表せるから、そのあたりをチューニングをするだけで売り上げは大きく変わります。
佐々木:面白い。将来われわれの「NewsPicks」で、“恋愛ビッグデータ”っていう連載をしませんか?
赤坂:そうですね。データを活用すれば、「この人はどれだけモテるのか」を、データベースから言い当てることができますね。
(一同笑)
スマデバには無かったモデルを導入し、イノベーションを持ち込む
佐々木:では、北山さん、GameBankではマネタイズをどう考えますか?
北山:日本のゲームにおけるマネタイズには、ガチャという素晴らしいマネタイズマシンがあります。それは是か非かという議論は置いておいて。
我々としては、マネタイズ面でのガチャを否定するわけではないですが、例えば海外には、月額1000円払うと、毎日100円もらえるという仕組みがあります。だから、毎日ログインし続けると3000円、実質2000円もらえますといった定額サブスクリプション型マネタイズモデルもあります。
そういったものを積極的に取り込むことも、僕らにとってのひとつのイノベーションになりうる。ゲーム業界におけるイノベーションを日本に持ち込みたいという気持ちを持っています。
佐々木:日本のゲームで、定額制で成功してるところはありますか?
北山:PCオンラインゲームにはあります。だからわれわれも、本当に強いコンテンツを作ったらできるのではないかと思っています。またわれわれ独自の取り組みとして、毎月400円払っていただいている「Yahoo!プレミアム」の1000万人の会員に対して何かサービスをするということがポテンシャルになるんじゃないかとも考えています。いずれにせよ、国内最大級のポータルサイトである「Yahoo! Japan」をマスメディアとした送客システムを確立させたい。
佐々木:御社としては、自分たちで作ったゲームだけを展開していくのですか? それとも外部調達もしてきて、プラットフォーム的な役割も担っていくのでしょうか?
北山:まずは自分たちでパブリッシングしているものだけから始めていこうと考えていますが、やはりヤフーという会社は、プラットフォームとして稼ぐといった視点を持っており、それはビジネスをスケールさせる上で大きな武器になるはず。だから、外部調達やサードパーティへのオープン化も視野に入れておくようにはしています。
BtoBの蓄積を生かしtoC課金へ
佐々木:リクルートにはいろいろなマネタイズポイントがあると思います。そこはどのように変わってくるのでしょうか?
宗藤:リクルートのtoBモデルは一言で説明しづらいが、基本的には、お店や会社に対してユーザーのアクションを増加させることで、巡り巡ってリクルートの売り上げが拡大するビジネスモデルです。反対にtoC(個人課金)はこれからチャレンジしていく段階なので、App Annieのデータを見ながら、研究しないといけない。
佐々木:アプリの時代になっても、やはりリクルートのモデルは、BtoBからの広告収入が大半であり続けるのですか?
宗藤:いや、それは全く思っていません。やはりアプリマーケットの特性を考えると、流通性能を生かしてユーザー規模の拡大とプロダクトフィットさせることが先、マネタイズとローカライゼーションは後という考え方になります。すると、Cの割合が先行して大きくなっていく比率は高まる。例えば「受験サプリ」は、toC課金としてあれだけ大規模な取り組みは初めてに近い。
ただ、本来われわれのtoB側の大学や専門学校など向けの課題解決や対象となるユーザーと向き合ってきたので、展開させるだけの良い材料はたくさん持っています。そこを生かしながら、ユーザー課金にもチャレンジしていきます。
佐々木:たくさんのアプリのユーザーデータを媒体間でつなぎ合わせていくといった、いわゆるビッグデータの使い方に関してはどう考えているのでしょうか?
宗藤:そこは、まだこれから戦略を考えなければという段階です。一昨年前からサービスを横断で使えるリクルートIDの提供を開始しました。
佐々木:分かりました、ありがとうございます。最後に赤坂さんがリクルートの経営者だったらどういうふうにアプリを作るかなということを聞かせて下さい。toCモデルをやってらっしゃるお立場から、ぜひ。
赤坂:リクルートさんが持っているポートフォリオはものすごい。スマートフォン時代のビジネスは、「LINE」みたいに中核事業があり、その周辺にポートフォリオを作るというパターンと、ドメイン自体を集合体にしてしまうというパターンがあると思っていますが、リクルートさんは後者を考えているのかなと感じています。なので、僕も基本的にその考えを引き継ぐでしょう。
その中で、Bからお金をもらうよりは、まずCの群を作ってしまうことで、Bからもお金を取る。ひいてはCからも課金するというメディア型のモデルを築くのがいいのではないでしょうか。
佐々木:本日は、リアルな人気アプリの戦略についてお聞かせいただき、私自身も大変勉強になりました。
(構成:朝倉真弓、撮影:松橋晶子)
【主催者】App Annie
App Annie (アップアニー) は、世界最大のアプリ情報プラットフォームです。
アプリビジネスの成功に必要な、市場データと分析ツールを提供しています。
世界トップ100のパブリッシャーのうち90%以上、計67万以上のアプリがApp Annieのサービスを利用しています。
会社HP:http://www.appannie.com/jp/