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人気アプリのUI/UX戦略、キーワードは「インタビュー」

エウレカCEOが、月一回、青学の女子高生に会う理由

2015/3/20
2月26日、新丸ビル10階のEGG JAPANイベントスペースにて、App Annie主催のセミナーが行われた。なかでも注目を集めたのは、スマートデバイスにおけるアプリケーション事業を展開中のエウレカ、GameBank、リクルートホールディングスの担当者の3人によるディスカッション。モデレーターは、NewsPicks編集長の佐々木紀彦が務めた。その内容を3回にわたってリポートする。
第1回目:エウレカ、リクルートetc. 人気アプリのPR戦略、キーワードは「錯覚」

電池が減りそうな動きはすべてNG

佐々木:みなさんはアプリのUI/UXを改善するために、日ごろからどのような取り組みをしているか、について聞かせてください。

【赤坂優氏】 株式会社エウレカ 代表取締役CEO 2008年株式会社エウレカを設立。2012年に「pairs」、2014年に「Couples」をリリース。シンガポールと台湾にも法人を設立。恋愛や結婚を足掛かりに、結婚準備や出産、育児市場に対するスマホアプリの展開を狙う。 ≪「pairs(ペアーズ)」とは?≫ Facebookを利用した恋愛・婚活マッチングサービス。日本や台湾を中心に200万人以上が利用、延べ830万組のマッチングを生み出す。Facebookの登録情報やソーシャルグラフを活用し、健全性の担保に注力。真面目なオンライン・デーティング・サービスとしてアジア市場を開拓。 ≪「Couples(カップルズ)」とは?≫ 恋人との思い出を蓄積していくカップル専用のコミュニケーションアプリ。2人だけでカレンダーやアルバムを共有できるほか、2人だけのトークや記念日のカウントダウンなどが可能。今後はカップル専用のメディアとしての展開を目指す。

【赤坂優氏】
株式会社エウレカ 代表取締役CEO
2008年株式会社エウレカを設立。2012年に「pairs」、2014年に「Couples」をリリース。シンガポールと台湾にも法人を設立。恋愛や結婚を足掛かりに、結婚準備や出産、育児市場に対するスマホアプリの展開を狙う。
≪「pairs(ペアーズ)」とは?≫
Facebookを利用した恋愛・婚活マッチングサービス。日本や台湾を中心に200万人以上が利用、延べ830万組のマッチングを生み出す。Facebookの登録情報やソーシャルグラフを活用し、健全性の担保に注力。真面目なオンライン・デーティング・サービスとしてアジア市場を開拓。
≪「Couples(カップルズ)」とは?≫
恋人との思い出を蓄積していくカップル専用のコミュニケーションアプリ。2人だけでカレンダーやアルバムを共有できるほか、2人だけのトークや記念日のカウントダウンなどが可能。今後はカップル専用のメディアとしての展開を目指す。

赤坂:「Couples」のほうで言いますと、ユーザーインタビューがすべてと言っていいです。私はこのアプリを作る前から、ユーザー層となる高校生に頻繁に会っていたし、作った後も、「ロイヤルユーザー」と「使いたてのビギナー」「全く使ってない層」などと分けて、彼ら・彼女らに会いまくりました。その中で得た気づきは大きかった。

「Couples」のトップページは、当初スライドショーを流していました。僕らとしては恋人間の思い出を共有するアプリなので、過去に撮った写真がいろいろと出てきたら嬉しいかな、と。でも、高校生や大学生からすると「今すぐやめてほしい」という。

佐々木:思い出なんかいらないということでしょうか?

(一同笑)

赤坂:いえ、「電車の中などで、意味わかんない写真とか出てきたら困るんですけど」と言われてしまったんです。また、画面が動いていると、彼女たちからしたら“ローディングされてる感”が出る。実際はローディングしていないんですが、「電池の減りが早い気がする」と。「いや、気がするだけですよ」と何度説明しても、「いやいや、絶対減ってる」の一点張り。そもそも彼女らは、僕の話なんて聞いていないんです。

(一同笑)

とにかく、高校生たちは、電池の消費が心配事です。例えば、最近のiPhoneは、自動で明るさ調整をしてくれるが高校生たちは、暗いところで明るくなる画面を、また手動で暗くしている。そのくらい電池の減りを避けているので、電池を食いそうだと思わせるUI/UXはすべてダメだとインタビューから学びました。

佐々木:ユーザーインタビューは、どのくらいの頻度でやっているのでしょうか?

赤坂:月に一度ペースで、青学の高校生らが集まる原宿にある雑誌の編集部に通っています。

佐々木:原宿の女子高生カルチャーは完璧なアーリーアダプターだと思いますが、彼女らの行動は全国に広がるものなのでしょうか?

赤坂:いや、そこだけで終わり、派生しないものもいっぱいあります。例えば彼女らが「スナチャ」と呼ぶ「Snapchat」は、多分まだK点を越えていない。ただ、全国に広がるほどブレイクするヒントやエッセンスはそこにいっぱい落ちています。

佐々木:つまりエウレカのプロダクトに関する姿勢は、変なこだわりを持たずに、徹底的にユーザーの声を聞くということでしょうか。

赤坂:その通り。僕らには、高校生が何を面白いと感じるかはわからないんです。だからこそ、彼女たちの「ウケる〜!」という言葉を探しに行きます。

ヤフーから離れ、コンテンツ制作をする意味

佐々木:GameBankの北山さんが、UI/UXでこだわっているところは?

【北山俊輔氏】 GameBank株式会社 プロダクション部 部長 「スマデバファースト」を掲げてきたヤフーが2015年2月に設立した、モバイルオンラインゲームの開発を手掛けるGameBank。スマートデバイスにおけるパーソナル課金モデルの確立を目指す。送客に関しては、国内最大のポータルサイトである「Yahoo! Japan」をマスメディアとして活用することが可能。はじめの一手としては、すでにオンラインゲームになじみがある層に向けて、ハードコア系のコンテンツをリリース。続いて、まだオンラインゲームを知らない層に向けてもカジュアルなゲームをリリースしていく予定。

【北山俊輔氏】
GameBank株式会社 プロダクション部 部長
「スマデバファースト」を掲げてきたヤフーが2015年2月に設立した、モバイルオンラインゲームの開発を手掛けるGameBank。スマートデバイスにおけるパーソナル課金モデルの確立を目指す。送客に関しては、国内最大のポータルサイトである「Yahoo! Japan」をマスメディアとして活用することが可能。はじめの一手としては、すでにオンラインゲームになじみがある層に向けて、ハードコア系のコンテンツをリリース。続いて、まだオンラインゲームを知らない層に向けてもカジュアルなゲームをリリースしていく予定。

北山:ネットワーク型のゲームは、その場にある程度、同時接続者がいないと、それが楽しいのか楽しくないのか、正しいUI/UXかどうかが分からない。ですからわれわれは、発表する前に商用環境とかなり近い環境で数百人の人に一気に遊んでもらうテスト環境を作り、その中でボトルネックとなるKPIの見極めを行いますし、もちろんインタビューも行います。

佐々木:得た情報をどう活用するのでしょうか?

北山:それを是として修正を検討します。作る側は、どうしても自分のエゴが向く方向に進んでしまいがち。また運営する側もPCオンラインゲームではこうだったという常識をスマホに持っていきがちです。

でも、スマートデバイス独自のTPOやインターフェイスに齟齬(そご)が生じる場合が多い。従って、UI/UXをどう考えたらよいのかという部分は、あえて第三者にリサーチやコンサルティングをお願いすることも多いです。

佐々木:ちなみに北山さん率いるGameBankがスマホゲーム業界に参入したのは周回遅れだという話がありました。なぜ、遅れての参戦となったのでしょうか?

北山:ひとつは、ヤフーの収益の軸足、PC側にあった収益を上げてきた影響が大きいです。ヤフーのスマートデバイスへの展開そのものも決して早くはなかった。

もうひとつは、基本的にヤフーはプラットフォーマーのポジションに長けている会社で、そこでビジネスを行ってきた。そんな中、アップルやグーグルといったプラットフォーム上におけるいちプレーヤーとしてコンテンツをクリエイトするのは、既存の“社内文化”の中では、困難なことも多かったからです。

佐々木:「Yahoo!ニュース」はプラットフォームとして機能していますが、自分たちでは記事を作りません。それと同じように、コンテンツとしてのゲームも作らないという姿勢だった?

北山:その通り。なので、僕らがヤフーでGameBankを立ち上げたのは、コンテンツ制作の機動力を高めるためとの理由が大きい。

パッと見で結果が分からないと使われない

佐々木:次は、リクルートのUI/UXの戦略の特徴について伺います。

【宗藤和徳氏】 株式会社リクルートホールディングス 国内事業統括 アライアンスグループ マネジャー リクルートグループ全体を統括するリクルートホールディングスで、グループ全社が発行しているアプリケーションのマネジメントや全体戦略を策定。リクルートグループの収益モデルは、飲食店や宿、不動産、結婚式場、求人企業といったクライアント企業に対し、ユーザーを集めて成約に導くB to Bモデルが基本。ユーザーのアクションを最大化するための手段としては、雑誌やフリーペーパーなどの紙媒体から、PCやスマートフォンへと多角化している。現在リクルートグループがリリースしているアプリケーションのダウンロード規模は1億を超えている。デリバリーファーストを念頭に、素早い市場投入とユーザー拡大を目指す。

【宗藤和徳氏】
株式会社リクルートホールディングス
国内事業統括 アライアンスグループ マネジャー
リクルートグループ全体を統括するリクルートホールディングスで、グループ全社が発行しているアプリケーションのマネジメントや全体戦略を策定。リクルートグループの収益モデルは、飲食店や宿、不動産、結婚式場、求人企業といったクライアント企業に対し、ユーザーを集めて成約に導くB to Bモデルが基本。ユーザーのアクションを最大化するための手段としては、雑誌やフリーペーパーなどの紙媒体から、PCやスマートフォンへと多角化している。現在リクルートグループがリリースしているアプリケーションのダウンロード規模は1億を超えている。デリバリーファーストを念頭に、素早い市場投入とユーザー拡大を目指す。

宗藤:今、スマホユーザーは1日150回ぐらい画面をチェックしている。これだけユーザーのアクティビティが増えると、アプリも当然、その設計を変えなければいけない。当社では、「immersiveness」と「glancability」、つまり、「没入」と「パッと見」という軸で考えることがあります。

佐々木:具体的には?

宗藤:没入性とパッと見のどちらを重視すべきかという議論はよく出るが、ゲーム会社ではないので、我々はユーザーにまず行動を起こしてもらうことが重要との観点から、パッと見重視派です。見た瞬間にパッと理解して、使えるようにしなければいけない。

例えば、ホテルや飲食店を探すとき、昔は都道府県や条件検索で探させるのが基本でした。でも今は、起動したら何かしら結果を最初に見せるなどが重要な視点となります。

佐々木:と、言うと?

宗藤:ユーザーが外出先でホテルやレストランを探す際、星の数と値段と距離、写真が自分の要望に合えば、意思決定ができてしまう。こうしたユーザーの行動変化に合わせた設計に変更するなどです。

佐々木:ニュースの要約を「ざっくり読む」として見せるやり方のように、最初にインパクトがないとダメということでしょうか?

宗藤:それに近い。パッと見たときに何らかの答え、何をしたらいいかわかるようにしてあげないと、アプリはすぐに捨てられます。

佐々木:リクルートにはたくさんアプリがあるので、それぞれにいろいろなノウハウが蓄積されます。そうしたデータは、共有しているのでしょうか? また、横展開の事例は?

宗藤:基本的には、各事業会社が個別にノウハウを蓄積している。しかし、同じような失敗をいろいろなアプリで起こすのはよくないので、重要度の高いことは私のいる組織で事例の集約展開やルールを定めるなど行っています。

佐々木:現在、リクルートのアプリは何個ぐらいありますか?

宗藤:私の部署での管理範囲では、iOS、Android、Windows、Firefox、Amazonなどで合計450個ぐらいです。

佐々木:それだけ毎日アプリを見ていたら、UI/UXの成功法則にも一家言持つようになりますよね。さきほど、「没入」と「パッと見」のバランスを重視するとの話がありましたが、没入とパッと見のバランスは、どう測りますか? 数値化できるものなでしょうか、感覚なのでしょうか。

宗藤:仮説設計は感覚です。抽象概念化して議論します。その後に、個別事業にとってどうなのかという形で展開させます。まずは抽象化しないと本質はなかなか捉えにくい。検証はA/Bテストなどで数値化し、改善サイクルをまわしていきます。

佐々木:続いて、もっとも重要だと言っても過言ではないマネタイズを聞きます。

(明日に続く)

(構成:朝倉真弓、撮影:松橋晶子)

【主催者】App Annie
App Annie (アップアニー) は、世界最大のアプリ情報プラットフォームです。
アプリビジネスの成功に必要な、市場データと分析ツールを提供しています。
世界トップ100のパブリッシャーのうち90%以上、計67万以上のアプリがApp Annieのサービスを利用しています。
会社HP:http://www.appannie.com/jp/