名称未設定

「ドローンの今と未来」第3回

東京の空をドローンが飛び交う未来は、本当に魅力的か?

2015/3/18
商用利用の開発が進むドローン。大学・大企業・ベンチャーにいる日本における第一人者が、ドローンの今と未来について語った「Robo:Drone ドローンの今と未来」の模様を、全3回にわたってレポートする。
最終回となる今回は、ドローン開発時の障害、未来のドローン活用について議論する。
第1回:ソニー・大学・ベンチャー、第一人者たちが語る「ドローンの今と未来」
第2回:世界で最もドローン規制が進んでいる国とは?

ドローン開発における障害とは?

牧浦:実際にドローンの製造を進めている野波さんにお伺いしたいのですが、ドローンの開発について、今まで障害ってありましたか?

野波:研究開発において、やっぱり世の中のタイミングって非常に重要なんですよね。例えば、15年とか20年前にドローンの研究をやっても誰も見向きもしないんですよ。私が自動制御に成功した2001年ごろだと、コントローラーで4kgくらい。そんな時代に、いくら小さいものを作ろうと言っても、無理なものは無理なんですね。それが、今やこれだけ小型のドローンが量産されている。まさにムーアの法則ですよね。

そういう意味で、逆に今から10年後を考えると、すごいことになると思います。10年間でこれだけ進化したので、10年後のドローンといったら、細い電線を識別しながら、普通に鳥のように飛んでいるでしょう。

今年ラスベガスで世界最大の家電ショーがありましたが、ほとんどみんな家電のところにいなくて、ドローンのところに集まったそうです。実は日本も5月に国際ドローン展を幕張メッセでやりますが、ものすごい数の人が来るんじゃないでしょうか。

幕張メッセのブースは、最初40ブースを考えていたんですが、今はその倍の80ブースで、まだ申し込みが来ているそうです。みんなこの流れに乗り遅れまいということで、大手もベンチャーも必死に入っています。日本もまだ捨てたもんじゃないな、と思います。

坂本:参加、まだ間に合いますか?

野波:まだ間に合いますよ!(笑)

左:北野宏明(きたの・ひろあき) ソニーコンピュータサイエンス研究所  代表取締役社長 人工知能の研究の一環として、1993年には「2050年までに、FIFA World Cupのチャンピオンチームに勝利する完全自律型ヒューマノイドロボットのチームを開発する」ことを目標としたRoboCupを提唱。現在、約30名のクレイジーな発想を持った研究者が集まるソニーCSLの代表取締役社長。 中央:坂本義親(さかもと・よしちか) 株式会社ORSO(オルソ) 代表取締役社長 大分県出身。2001年より国内、海外の数々の携帯電話関連サービスの開発に携わり、2014年7月から主にエンタメ用の映像作品の撮影、現場での性能調査目的でドローンを利用し始める。この半年で実施したフライトは1000フライトを超える。 右:野波健蔵(のなみ・けんぞう) 千葉大学大学院  工学研究科・工学部特別教授 1990年代半ばから、ドローンの研究開発に従事。2011年に、日本初の国産ドローンの製造に成功。2012年にはドローンに関する産学官のコンソーシアムを設立した。自らも研究室発で起業し、福島県南相馬市で量産を進めている。

左:北野宏明(きたの・ひろあき)
ソニーコンピュータサイエンス研究所 代表取締役社長
人工知能の研究の一環として、1993年には「2050年までに、FIFA World Cupのチャンピオンチームに勝利する完全自律型ヒューマノイドロボットのチームを開発する」ことを目標としたRoboCupを提唱。現在、約30名のクレイジーな発想を持った研究者が集まるソニーCSLの代表取締役社長。
中央:坂本義親(さかもと・よしちか)
株式会社ORSO(オルソ) 代表取締役社長
大分県出身。2001年より国内、海外の数々の携帯電話関連サービスの開発に携わり、2014年7月から主にエンタメ用の映像作品の撮影、現場での性能調査目的でドローンを利用し始める。この半年で実施したフライトは1000フライトを超える。
右:野波健蔵(のなみ・けんぞう)
千葉大学大学院 工学研究科・工学部特別教授
1990年代半ばから、ドローンの研究開発に従事。2011年に、日本初の国産ドローンの製造に成功。2012年にはドローンに関する産学官のコンソーシアムを設立した。自らも研究室発で起業し、福島県南相馬市で量産を進めている。

東京にドローンが飛び交う未来は、魅力的か?

牧浦:ここで質疑応答に入りたいと思います。何か質問ある方いらっしゃいますか?

質問者:先ほど、将来的には日本中の空にドローンが飛んでいるとおっしゃっていました。お聞きしたいのは、東京の街中をドローンが飛んでいる世界はみなさんにとって魅力的なんでしょうか? 私は、街中をドローンが飛んでいるのは嫌だなと感じたのですが、単純にどのように感じているのかお聞きしたいです。

野波:当然、街中をランダムに飛ぶということはないと思います。国交省、航空局あたりが規制をかけるはずでしょうし、私もそうすべきだと思います。

高速道路や国道や県道が地上にあるのと同じように、ドローンが飛行できるルートとして、3次元空間上に見えない空路というのができるはずです。東向きのドローン/西向きのドローンといったように階層構造を持って、「あるスピードで飛んでいれば、この道路は時速100kmでいいよ」とか。そういう形になるのではないでしょうか。

例えば、危篤状態の方に薬をドローンで届けることができれば、救急車が道を走るよりもより安全に届けることができます。瀬戸内海をドローンが飛んだという例もありましたけど、離島なんかにドローンが輸送する形もあるでしょう。そういう形で、ドローンを活用していけば、日本はもっともっといろんな可能性を秘めた国になって、世界のトップにまた行けると私は思います。

牧浦土雅(まきうら・どが)アフリカ、主にルワンダで国際協力機関と農民とを繋げる事業に携わり、現在はタイを拠点に東南アジアで「パーソナルデータ」を活用した事業を構想中。TED『世界の12人の若者』、AERA『日本を突破する100人』に選ばれる。著書『アフリカ・奇跡の国ルワンダの『今』からの新たな可能性』。Facebookページ『ドローンの今と未来』管理人。

牧浦土雅(まきうら・どが)
アフリカ、主にルワンダで国際協力機関と農民とを繋げる事業に携わり、現在はタイを拠点に東南アジアで「パーソナルデータ」を活用した事業を構想中。TED『世界の12人の若者』、AERA『日本を突破する100人』に選ばれる。著書『アフリカ・奇跡の国ルワンダの『今』からの新たな可能性』。Facebookページ『ドローンの今と未来』管理人。

ドローンは、将来インフラになりうる

北野:冒頭(ソニー・大学・ベンチャー、第一人者たちが語る「ドローンの今と未来」)で言ったように、特に都市部では5mから200mの空域制御がなされます。飛行機は、パイロットが勝手に飛ばしているわけではなくて、グライドスロープとかビーコンが全部あり、その上をずっと飛んでいるわけです。飛べる空域も、ルートも、高さも制御されている。だから飛行機はぶつからない。ドローンもそういう制御がなされていくと思います。

ドローンだけじゃなく、車もどんどん自動走行に変わっていくじゃないですか。基本的にグーグルもそうだし、テスラやアップルも自動走行になると思います。燃費の問題もありますが、この変化を引き起こす動機のひとつに「交通事故を無くす」という大きな目標があります。

地上が自動になっていけば、上空もほぼ自動でルーティングされるようになると思います。首都高を考えると分かりやすいです。首都高上で、自動走行のレーンがあり、その上空にオートパイロットで飛んでくれるドローンのレーンができれば、飛行経路は決まります。

こうした世界は、楽しいかどうかというよりも、インフラになってしまうはずです。昔はコンビニなんてなかったけれど、今やコンビニがないとみんな困る。それと同じで、ドローンがないと非常に困る世界になっていくんじゃないでしょうか。

社会インフラが変わるのには時間がかかるので、5年ではさすがにここまでいかないと思います。ただ、10年経つと見えてくる気がします。技術はあるけれど、実際に受け入れられるのは割とゆっくりになるんじゃないかと。15年経てば、かなり見えていると思います。

(構成:荒川拓、撮影:Yuki Nobuhara)