(ブルームバーグ): 新型コロナウイルス禍で基礎化粧品を利用する習慣が男性にも広がり始めており、すでに成長余地が少ない女性向け商品との比較で伸びしろが大きいことから、国内大手化粧品メーカーは新たな商機に期待を寄せる。特に各社が注目するのは、単価の高い商品に手を伸ばしやすい中年世代だ。

女性には当たり前の基礎化粧品だが、コロナ禍にオンライン会議が増えたことなどで自身の姿を確認する機会が多くなり、男性の間でも使用する人は増えている。コーセーで商品開発などを担当する堀田昌宏取締役は、メンズ商品の主な購買層は10-20代だが、エイジングケアのクリームや美容液の購入で金額が大きいのが40代以降の特徴だと指摘する。

メンズ化粧品の広がりはコマーシャルにも後押しされている。ユニセックスの商品作りを進めるコーセーが米ロサンゼルス・エンゼルス所属の大谷翔平選手をスキンケア商品の宣伝に起用したところ、約2カ月半で男性の新規購入者は通常時の約10倍に増えた。大谷選手の知名度を生かして、今後は海外での販売増にも期待する。

メンズ化粧品ブランドの「SHISEIDO MEN(シセイドウ メン)」を展開する資生堂でマーケティングを担当する高橋七奈氏は、「コロナが追い風となり、男性のスキンケアへの意識が変わった」と話す。コロナ禍を通じてオンライン会議の活用は日常となり、男性が身だしなみを気にする機会は増えた。マスクが取れた今夏、特に注目が集まるのはエイジングケア商品だという。

資生堂によると、30ー40代をメインターゲットとする同ブランドは、2022年までの3年間の年平均売上高成長率(CAGR)が17%と高い。

NTTコムリサーチが2022年7月に国内の18-39歳の男性426人に実施した調査によると、18-29歳の年間の平均化粧品購入額が6967円だったのに対して、30-39歳は7813円と約1000円の開きがあった。

アプローチ

メンズ市場に対するアプローチは各社さまざまだ。資生堂は22年に日本で約20年ぶりとなるメンズブランド「SIDEKICK(サイドキック)」を投入した。だが、メインの市場にまず選んだのは中国だ。ブランド担当者の藤田悟氏は、中国の都市部で男性の美容意識が「すごく高い」ためだと話す。

調査会社のユーロモニターインターナショナルによると、中国の23年のメンズスキンケア市場規模は12億ドル(約1800億円)に達すると予想され、世界需要の約3割を占める。日本の5倍以上だ。

花王も「UNLICS(アンリクス)」ブランドを新たに投入して、男性用の専用ラインを充実させる。ブランドパートナーとして迎えたインフルエンサーからのフィードバックは、商品開発にも生かしていくという。

伸びしろ

伊勢丹新宿本店でメンズコスメを担当する小倉麻代セールスマネジャーは、コロナ禍で「外食を控えた分、自分をアップデートして、身の回りに投資する人が増えた」と感じている。化粧品を求めて売り場に来た男性客には「1品違うものを必ず紹介する」という。化粧水の試用時に乳液やクリームといった具合だ。

矢野経済研究所によると、国内の男性向け美容製品・サービスの市場規模はコロナ禍中の21年度に増加に転じた。22年度、23年度も成長することが見込まれている。市場拡大の要因の一つに、中高年層のヘアケアやスキンケアへの意識向上を挙げる。中高年層向けのブランドのニーズなども高まっているという。

コーセーの堀田氏は、きれいに見られたいとか若くありたいという男性の美容への関心は、ポストコロナで一層高まっていると指摘する。アジアを中心に「男は収入だけではなく容姿も」という時代の変化を感じつつ、今後の伸びしろに期待している。

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