(ブルームバーグ): 楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は、がん治療法の開発を手掛ける米バイオテクノロジー関連スタートアップに自身の時間の5分の1を充てていると明らかにした。収益性が最優先ではない社会プロジェクトと位置付けている。

三木谷氏は横浜市でインタビューに応じ、自分は「他の人の3倍ぐらい働いていると思うし、別に物を作っているわけではなく基本的に判断をしている。時間ではなく、これに対する決定と実行計画を作るというような役割なので、そういう意味においては全く問題はないと思っている」と語った。

楽天メディカル(本社サンディエゴ)は約200人の従業員を抱える。がんをはじめとするさまざまな疾患を対象に、薬剤と光照射を組み合わせた新しい治療法を開発している。この技術は、米国立がん研究所の小林久隆氏らが開発したがん光免疫療法が基になっているという。売上高の計上まで長い時間がかかる他の多くのバイオ関連スタートアップとは対照的に、同社は既に売り上げを生んでいる。

日本の厚生労働省は2020年、同社の治験薬について切除不能または再発の頭頸部(けいぶ)がんの治療で「条件付き早期承認制度」を適用。約300件の治療に使われている。厚労省の文書によると、「アキャルックス」点滴静注は2028年度までに年間売上高が38億円のピーク水準に達する見込み。

三木谷氏は3日、米臨床腫瘍学会(ASCO)などの共催で開かれた会議での講演や記者会見に少なくとも半日を充てた。先週は横浜市で「楽天オプティミズム」と呼ばれるイベントも主催した。

「単純に何か経営しているということではなく、やはりブレークスルーするというところに自分の価値があると思う」と説明。「そういう意味で私の力がある程度、必要であるという状態に今まであった」と語った。

このスタートアップとの関わりは、当初は三木谷氏個人の投資で、膵臓(すいぞう)がんにかかった父親のために治療法を探す中で2013年に資金を支援した。18年には同社の最高経営責任者(CEO)に就任。翌年、社名を楽天メディカルに変更した。

楽天は同社に1億ドル(約140億円)以上投資し、出資比率は約20%。ベンチャーキャピタルのゼネラル・カタリストやSBIホールディングスも出資している。

楽天メディカルは利益を上げることを積極的に目指しているわけではないが、研究投資を継続して成長できるよう、財務的に持続可能な事業にすることを三木谷氏は望んでいる。同社は現在、米国やインドを含む拠点でグローバル規模の臨床試験を実施中。同社によると、アキャルックスは米当局から「ファストトラック(優先承認審査制度)」指定を受けている。 

三木谷氏は楽天メディカルについて、「さらにもっと自走していくと思う。いろいろ前提条件はあるが、自信を持っている」とし、今後は「外部の投資家が主になっていくと思う」と語った。

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原題:Rakuten’s Mikitani Spends a Fifth of His Time on Biotech Startup(抜粋)

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