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公共資産活用型PPP:民間への貸出で収入を得る

公共資産活用型PPP:民間への貸出で収入を得る

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藤木 秀明
公民連携(PPP)の活用藤木 秀明

今回は、前々回にご紹介しました東洋大学の公民連携(PPP)3つの類型(下図)のうち、公共資産活用型についてお話したいと思います。いずれも、前回お話しました公共サービス型と異なり、事業内容が民間事業となっております。近年はまちづくりとの関係で推進することが求められており、国土交通省では官民連携まちづくりポータルサイトを構築し、様々な情報を提供しています。

(出所:根本祐二[2011]「PPP研究の枠組みについての考察(1)」『東洋大学PPP研究センター紀要』創刊号、pp.19-28より筆者作成)

使われなくなった学校や庁舎等の利活用の課題

では、公共資産活用型の基本的な事例を見ていきましょう。人口減少、特に子どもの数が減っていていることを理由に学校の統廃合が全国的に進んでいるという話を耳にされることは増えてきたのではないでしょうか。地域の住民に統廃合を受け容れていただくことにエネルギーを要するのも少なくなく、学校跡地の利活用はどうしても後回しになりがちです。

しかし、子供たちや学校の先生が出入りしなくなった学校をそのままにしておくと、地域の衰退をある意味可視化させてしまうことになって、地域の方が今後の希望を持つことが難しくなってしまうことになり得ます。また、利用者がいない建物は、防犯上のリスクを生み出すことにもなりかねません。文部科学省は、活用のためのガイドブックを作成し、地域の産業施設をはじめとしたさまざまな取り組みを紹介する「みんなの廃校プロジェクト」のサイトを開設し、有効活用を後押ししています。併せて、学校を前提として交付していた補助金の返還を廃校活用に際して国庫納付は要さず報告書の提出をもって手続きが済むようにするなどの財産処分手続きの簡素化しています

同じような課題は、平成の大合併で再編された自治体の庁舎についても生じているでしょう。平成の大合併に伴う地方財政支援措置を活用し、合併後の自治体の庁舎を整備する取り組みは一巡しつつありますが、合併して本庁舎ではなくなった被合併自治体の庁舎(町役場など)は、地域の支所とした一定の連絡機能は維持されるものの、全ての事務スペースを従来通り公務用途で利用することは難しくなります。特に議場は、議員や行政側出席者の人数に合わせて作っているので、取り壊して他の用途に転用することも難しい悩ましい施設となりがちです。

公共資産活用型の事例:南魚沼市のコールセンター誘致

このように、地域の中にある既存の公共施設について、余剰となった学校や庁舎について、公務など従来の用途にこだわらず、民間に貸し出すのが公共資産活用型のPPP(公民連携)の基本となります。

分かりやすい例は南魚沼市(新潟県)の旧塩沢町役場の議場として使っていた場所をヤマト運輸に貸し出し、コールセンターとして利用している事例です。本記事の冒頭にある写真は、南魚沼市の資料に掲載されている議場の写真です。先に述べたように、今後の扱いが悩ましい議場スペースを、コールセンターとして活用する企業に貸し出したことで、賃料収入を得ることができています。また、コールセンター開設により地域の方を従業員として雇用するので、地域の雇用創出が実現できたということも見逃せません。企業(ヤマト運輸)としても、新規に建物を用意してコールセンターを開設するよりも費用を抑えることができ、官民双方にメリットがる「Win-Win」の事例として評価することができるでしょう。

まちづくりと連動した公共資産活用とPPP(公民連携)

今回は、公共資産活用型PPP(公民連携)をご紹介しました。読者のみなさまにおかれては、単に民間に貸し出すという事例紹介は物足りないとお感じの方もいらっしゃると思います。その通りで、実際には公共資産を活用して民間に活用する場合には、定期借地権を活用した不動産事業であったり、その際に民間が公共施設を併せて整備する場合もあったりしますので、実際はもっと複雑です。また、使われなくなった施設活用のキーワードとして「リノベーション」も欠かせません。

更には、公共資産活用型PPP(公民連携)が、単に賃貸収入を得るという目的意識で良いのだろうか、公共資産の活用をきっかとしたまちづくりと連動・連携させてこそ地域の再生がなしうるのではないかとの意見もあろうかと思います。それもその通りです。実際の公民連携(PPP)においては、次回説明する規制・誘導型PPP(公民連携)と併せて活用し、官が持つ不動産(公共資産)と規制の権限、民間の活動を誘導するコーディネーターとしての役割を複合的に発揮することが求められていると私は考えます。

先を急ぎたいところですが、基本的なところから説明を重ねたいと思いますので、今回はここまでとします。

見出し画像:南魚沼市資料

参考文献:根本祐二[2011]「PPP研究の枠組みについての考察(1)」『東洋大学PPP研究センター紀要』創刊号、pp.19-28


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注目のコメント

  • 藤木 秀明
    東洋大学大学院 客員教授

    公共資産活用型PPP(公民連携)について書きました。公共空間の活用も含めて注目度が増しているテーマですが、基本的なところから解説する連載の主旨から抑え目に解説しました。


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