「日本の宝」を見つけて地方移住。“伝説のシェフ”がフードロスに向き合う理由
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不定期連載「シン・地方の虎」5回目です。どの街でも見かけるナポリピッツァチェーンを作ったシェフの現在地は、まさかの大分県。そこで仕掛ける新たなビジネスは、農家を悩ませる課題を「日本の宝」に変えること。川内イオさんの取材記事はいつもディープです。
注目のコメント
この記事を書いた川内です。
日本にナポリピッツァを広めた男、サルヴァトーレ・クオモさんの知られざる歩みと現在地を描きました。
サルヴァトーレさんは豪快で大胆なナポリ男という印象ですが、料理に関してはとても繊細に、丁寧に、そしてアツく向き合っているのだの感じました。
この原稿には書ききれませんでしたが、今は日本社会に目を向けて、料理を通じて弱い立場の女性や子どもたちに手を差し伸べようとしています。これから始まるそのプロジェクトにも注目していきます。「自分たちは必ずフルーツの皮をむいて調理する。それなのに、皮に傷がついたから捨てるということが、まったく理解できなかった。」というフレーズが印象的です。
一方で、一般消費者が傷がついたり形が異なる農作物を好まないのだけでなく、外食産業でも調理しやすいように規格化された農作物を好むために、不揃いな野菜が規格外として廃棄される一要因になっている部分があるといいます。
規格外農作物を再流通させるビジネスが増えていますが、食品の特性上、ライフタイムを伸ばすために加工食品事業になりがちです。加工すればかさも減り寿命も延びて海外にも販売しやすいので、海外事業との相性が良いことにも同意です。
それはそれでよいのですが、救ってもらうのを待つだけでなく、そのままの姿で家庭や外食産業に使って貰えるような理解の醸成と仕組みづくりを、農家自身で仕掛けていくことが必要だと思っています。「つくり手にしっかりとインセンティブが入る仕組み」を前提としたスキームが確立されていて、非常に良い仕組みだと思いました。弊社でもJAさんで余ってしまった農産物を買い取って販売する事業を実施していますが、5直売所だけでも相当量の廃棄がでています。
まして、生産の現場で規格外となってしまったものは畑にすきこんで終わりにするのが当たり前。流通させる手間や市場価格の変動を考えるとそのまま廃棄させる方が生産者さんにとっては「良い」のが現状だと思います。
廃棄されてしまうものを買い取り、付加価値をつけて販売する仕組みはアイデアとしては簡単に浮かぶものの、「食品ロス」を前提とした仕入れは質や量が読みづらく、事業にするには非常に不安定となってしまう難点があります。
ここまで事業として確立されるまで、相当な困難があったかと思いますが、ぜひ今後継続、展開していただきたいと感じました。