「まるで地獄絵図…」 ガーナはいかにしてファストファッションの“墓場”にされたか
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ものごとは複数の視点で見なければなりません。アフリカは、ガーナに限らずどの国も古着が輸入されていますが、かつては自国に縫製業が存在し、日本の繊維企業もいくつかの国に工場をもっていたほどです。縫製のような軽工業かつ外貨を稼げる産業は、経済が成長するにあたっての大きなステップとなります。しかし、自由貿易の名の下、保護貿易的な関税が撤廃されたため、国内縫製業の優位性は失われて壊滅し、古着が流入することとなりました。
現在アフリカに輸出されている古着は、米国と欧州からのものが多いとされています。ファストファッションの売れ残りもあると思いますが、善意の寄付として集められたものも多いとされています。コンテナで運ばれてくる古着をみると、同じ服はあまりなくばらばらなので、売れ残りならば同じデザインのものが重複するのでは?とも思っています。アフリカのいくつかの国は、古着に関税をかけたり輸入を禁止しようとしましたが、米国などの圧力により頓挫しています。トランプ政権では、古着の輸入を禁止するならアフリカが米国に輸出する際の特恵関税を取り上げると圧力をかけていました。
古着そのものは、アフリカの人が安価に洋服を購入できることや、古着を売る女性や若者たちの仕事をつくるという意味で役に立っている面もあります。アフリカで新品の衣料の価格は日本より高いです。
軽工業が離陸できず、経済成長や雇用が限定的であることでの辛苦に比べると、ごみ問題は枝葉だと思っています。ファストファッションに課題はあり、売れ残りの処分方法や費用負担など考え環境への負荷を減らすべきだと思いますが、アフリカにとってという観点では、ファストファッションがなくなったり売れ残りがなくなることよりも、アフリカがファストファッションの製造地となって、大量生産の輪の中に入ることの方が、ずっと恩恵が大きいです。ただたんに古着の輸出をやめたり少なくするだけでは、アフリカで買える衣類の価格が上がるだけの話で(古着の輸入が一時的に停止されたコロナ時期は実際そうなりました)、アフリカは余計に困ります。完全には調べきれてませんが、ガーナの自国通貨セディの為替レートが高めに設定されていることが、国内の縫製産業の競争力を失わせることにつながっているのだろうと思います。
https://www.xe.com/ja/currencycharts/?from=GHS&to=USD&view=10Y
労働集約的な産業から徐々に付加価値の高い資本集約的な産業に移っていくことは、過去の東アジアでみられたことですし、現在の東南アジアや南アジアでみられている貿易のパターンです。
(例えば、日本では、初めお茶や、生糸、水産物を輸出していましたが、時代が進むと綿織物、絹織物などの比率が増えてきます。さらに時代が進むと鉄鋼や船舶など増えてくることになります)
https://honkawa2.sakura.ne.jp/4750.html
ガーナの場合、過去の日本でのお茶にあたるのが、商品作物であるカカオということになるのでしょうが、ガーナは金や原油が産出するために、輸出総額でみると、そちらが上回るようになってきています。(下のpdfの図3を参照)
以下リンク先は公益財団法人 国際通貨研究所経済調査部 藤井 陽介「ガーナ経済の現状と課題」
https://www.iima.or.jp/docs/newsletter/2019/NL2019No_3_j.pdf
原油や、金の採掘で収入が得られるために、現在の消費に回すために自国通貨の交換レートを高く設定すると縫製産業は、十分な利益を得ることができず衣類は輸入で得た方が良いということになります。
また、上記のpdfの「5.今後の展望」をみると原油や金で得た収入をもとに、労働集約的な軽工業を飛び越えて、金の精錬や、ボーキサイトの精錬にチャレンジをしているようですが、精錬には安定した電力供給がかかせませんし、もちろん、工場を運営するノウハウの習得も必要です。
この試みが成功をすれば、ガーナは国全体としては豊かな国ということになるでしょうが、失敗すれば、「資源の呪い」の例として数えられることになるでしょう。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B3%87%E6%BA%90%E3%81%AE%E5%91%AA%E3%81%84ガーナのスラム街のアボボグブロシーには、世界最大の電気器具の墓場と言われるゴミの山もあり、有毒ガスで苦しむウエイストピッカー(ごみ処理する方々)の方々が多くいます。
スラム街の劣悪な環境を変えるべく活動しているアクティビスト長坂真護さんのガーナ支援に賛同し、ザボディショップでは昨年コラボ製品の収益の一部をガーナ支援に充てていただきましたが、先進国から送られている古着の山が本来美しい海岸に散々している写真を見て、心が締め付けられる思いでした。
ガーナの問題は、世界の問題として取り組む必要性があります。一人でも多くの現地の方々が健康でいるためにも。