2023/7/25

【保存版】企業が知らないTikTok、3つの「答え」

NewsPicks Brand Design Creative Editor
 テキストから動画へ。長尺動画からショート動画へ。
 TikTokが、2022年のダウンロード数ランキングで6億7200万ダウンロードと首位に輝いた。(Apptopiaアプリダウンロード数ランキング2022)
 その影響力は、NewsPicks読者もよくご存じだろうが、それはつまり広告市場としても莫大な規模を誇る。
 イギリスのKantar社による“消費者にもっとも広告が好まれているグローバルメディアブランド”を発表する「グローバル広告エクイティランキング 2022」では、Googleを追い越しAmazonとトップを争っているTikTok(2020年、2021年には1位を獲得)。
※グローバル広告エクイティランキング:日本を含む29カ国を対象に、さまざまなメディア、プラットフォームにおける広告体験に対する消費者の態度を測定したもの。
 また、同社の調査によると、グローバルマーケターの84%は2023年にTikTokへのメディア支出を増加させると回答したという。
 成長を続けるショート動画のトレンドをハックするために、我々が知っておかないといけないことは何なのか。
「日本には、TikTokを使いこなせている企業アカウントがない。そう断言してもいいと思います」
 企業のTikTok活用の現状について、上記のように提言するのは株式会社OASIZ代表の江藤優氏
 OASIZは先日、約2億円の資金調達を実施したばかり。テレビ番組や著名人、サッカー団体、プロ野球球団などのショート動画の制作、運用をおこなう縦型動画に特化した専門集団だ。
 グローバルで活躍する現役のショート動画クリエイター、元ByteDance社員など、数多くの“バズを生み出せる”ショート動画の制作実績のあるメンバーが在籍しており、彼らがワンチームとなってこれまでに30アカウント以上の企業TikTokを運用、平均再生回数は100万回を超えている。
 本稿では、「TikTokにまつわる3つの新常識」を江藤氏が解説。
 日本における縦型動画の在り方を模索しているという江藤氏の発見をお届けしよう。
 前提として、日本のTikTokのトレンドは、中国のDouyin(中国版TikTok)より4〜5年は遅れています。さらに言うと、アメリカからは2〜3年、東南アジアからは1〜2年ほど遅れているんです。
※Douyin:ByteDance社が2016年9月に中国でリリースしたショート動画アプリ。2022年のデイリーアクティブユーザー数は約8億人を突破している。
 ただ、これを裏返すと、海外のTikTokを見れば、未来がわかるということです。中国、アメリカ、東南アジアで起きたトレンドは数年後に日本へやってくる。
 たとえば今トレンドになっている「#究極の2択」という動画のフォーマットは261万再生というヒットコンテンツとなりましたが、これは、3年前にアメリカや東南アジアでヒットした「#ourtype」という企画です。
#究極の2択】2択を強制的に迫られる企画
2023年の始めから数多くクリエイターが投稿している人気企画だ
【#ourtype】「#究極の2択」の元になった企画
2020年から投稿されはじめ、アメリカや東南アジアなどグローバルで大ヒットの企画となった
 ただし、中国のdouyinともなると、進みすぎていて、動画の撮影予算が数百万円を越えるものも珍しくありません。
DouyinにはCGを活用した高クオリティな動画が数多く投稿されている
 東南アジアのTikTokを見てみれば、低予算で、日本のトレンドにも近いものがたくさんあるはずです。おすすめのクリエイターをご紹介するので、ぜひフォローしてみてください。

 多くのユーザーにとって、TikTokは娯楽アプリです。暇つぶし感覚で動画を見ているときに、つくりこまれたプロモーション動画が流れてきたらノイズでしかありません。
 企業のTikTok活用において最初に認識するべきことは、これまでテレビやYouTubeでは当たり前だった「高品質の動画であればユーザーが見てくれる」というスタンスが通用しないということです。
 TikTokerには2種類の人間がいます。
 ひとりは見る専で、友達とのコミュニケーションとしてたまに動画を投稿する人。
 そして、もうひとりは動画を投稿したらたまたまそれがバズって、そこからTikTokの世界にどっぷりとハマってインフルエンサー/スタークリエイターになっていく人。
 では、企業アカウントがTikTokを活用するときには何を目的として、どんな動画をつくるべきなのか――。
 難易度はとても高いですが、たとえ法人アカウントでもファンを獲得していくためには後者のような目線、つまり「インフルエンサーの視座」を目指していくべきだと思います。
 TikTokを見ていると、一見ひょうきんでバカバカしいコンテンツが目立つかもしれません。しかし、それは莫大な時間をかけてTikTokを研究しているクリエイターたちが導き出した「ヒットコンテンツ」の正解なんです。
 たとえ企業であっても、そんなバカバカしいコンテンツに全力で向き合わないといけない。むしろ、そういったお遊びのような動画に振り切ったことで「企業の公式がこんなことやっちゃうの!?」という驚きを与えることができると思っています。
 つまり、TikTokでは、ファンコミュニケーションに徹底すべきなんです。企業のメッセージ発信や、自社商品の訴求を入れたら、まずバズりません。
 たとえば、僕たちがNewsPicksのTikTokのアカウント運営をするなら、「ギャル編集長」というアカウントにします。
 NewsPicksは、一般的に「経済や政治に関する情報を毎日発信していて、意識が高そう」という印象があると思います。でもTikTokでは、真面目でしっかりしたものより親近感があるほうがより支持されやすい
 そこで、10代のギャルが優秀な大人たちのつくった記事に対して「硬すぎる」「まわりくどい」「2行目で飽きた」などとダメ出しをするような動画を投稿することで、「真面目すぎるコンテンツが苦手だからわかる」という共感や「NewsPicksにいるような人でも、ダメ出しされたら落ち込むんだ」といった親近感が生まれます。
 また、“ギャル×優秀なビジネスパーソン”という斬新な組み合わせによる化学反応もエンタメになるので、長期的に粘着性の高いファンが付くと予想できます。
 サービスのプロモーションから遠回りにはなりますが、ギャル編集長というキャラクターがユーザーに支持されるようになれば、NewsPicksへの好感度や親近感も自然と上がっていくはずです。
 たとえば、TikTokで爆発的に伸びている「ながの社長」がとてもいい例で、「オフィスの社長の目の前で部下がいきなり料理する」という動画を投稿しています。
 その動画では本業のことにほとんど触れないし、企業名も出てこないのですが、企業認知度が大幅に上がり、売上にも貢献できているそうです。
 今、世界でもっともフォロワーがいるTikTokerがイタリア人のカビー・ラメ氏です。
 彼は動画のなかで一言も発さず、動きや表情で笑いを届けています。つまり、彼のコンテンツは全世界の人間が楽しむことができるんです。
 また、彼の動画で優れているのは“音”の使い方
 Kantar(イギリスのマーケティングデータ・アナリティクス企業)の調査によると、TikTokユーザーの88%が「TikTokでの体験には音が欠かせない」と回答しています。BGMのリズムに合わせてシーンを構成したり、動画で一番伝えたい部分をサビと合わせたりして、見ていて気持ちいい動画にすることが重要なんです。
 ラメ氏の動画はこの気持ちよさが秀逸で、これも世界中の人から人気を集めている理由だと思います。
 僕は、これこそがTikTokを活用する最大のメリットだと思っています。
 日本のコンテンツは“日本語”という大きな障壁によって、国内に閉じてしまっています。しかし、TikTokのような1分尺の動画なら、映像と選曲次第で日本語がわからない人でも“見切る”ことができるんです。
 現に福岡県北九州市にある「照寿司」は、TikTokを始めとしたSNSでインバウンド集客に成功しています。大将が料理をつくって食べる動画が世界中でバズを生み出し、最近ではサウジアラビアに支店を展開するに至りました。
 TikTokは「フォロワーが0人でも、一定数のユーザーに動画が配信される」とアルゴリズムで決まっています。
 つまり、知名度がまったくない企業でも、動画を一定見てもらえるチャンスがあるということ。
「寿司」のような強烈なインパクトがなくとも、“誰が見ても理解できる動画”であれば、世界中からファンを集めることができるはずです。

TikTokの最前線のヒットクリエイターは10代

 僕たちOASIZは日々、いい動画をつくるためにTikTokを研究しています。
 世界中の動画を見て、自分たちじゃつくれないようなすごい動画をつくっているクリエイターを見つけては、日々声をかけて一緒に制作をしているのですが、実際にコンタクトをとってみると圧倒的に10代が多いんです。
 以前、「これはすごいクリエイティブだ!」と思ったサッカー動画のインフルエンサーアカウントに連絡をとったら、オーストラリアに住む15歳の少年だったことがあります。
 彼は僕にこう言いました。
遅かったですね。あなた達よりも前に、たくさんの人から声をかけられています
 彼のもとには、すでにヨーロッパリーグやロシアリーグの人たちからも動画の制作依頼が殺到していたそうです。
 なぜ10代に優れたクリエイターが多いのかというと、彼らはTikTokが生活の中心になっているヘビーユーザーだから。
 そして、TikTokを通して有名になりたいという野心があるので、TikTokをよく研究しています。音の重要性も感覚的に理解しているので、音楽の使い方もすごくうまい。そこがYouTubeのクリエイターとはまったく違います。
 よくYouTubeの切り抜き動画をTikTokに上げている人はいますが、YouTubeで使ったフリーBGMをそのまま使っていたり、サビの途中で切れていてしまったりと、動画と音の組み合わせをハックできている人はまだ少ないと思います。
 だからもし今、TikTokについて相談したいことがあるなら、広告代理店やYouTubeで動画をつくっている人よりも、10代のヘビーユーザーに話を聞いたほうがいいと思っています。

TikTokを相談するなら代理店ではなくクリエイターへ

 OASIZは、企業の「TikTokアカウント運用」「TikTokコンサルティング」「縦型動画広告制作」「SNS広告運用」を手がけるショート動画に特化したクリエイター集団です。
 アカウントの運用をおこなうのは、僕のようにBytedanceで企業アカウントを運用していたメンバーやフォロワーが100万フォロワーを超えるトップクリエイターで、TikTokのアルゴリズムを熟知しているスペシャリストです。
 昨年にはフジテレビのW杯アカウントの運用を1カ月限定でおこなっており、総再生回数は1000万回を突破しました。
 そんな僕らOASIZのミッションは、「クリエイターが、日本のビジネスを引っ張る存在になること」。
 僕はショート動画が大好きで、それを生み出すクリエイターを尊敬しています。そして、そんな彼らが企業やモノの未来をリードできるような世界にしたいんです。
 しかし現状では、企業がTikTokを活用するときには代理店や制作会社が間に入り、クリエイターが下請けのような働き方になっています。
 ファンコミュニケーションを求められる企業のTikTok活動では、0からファンを獲得して、コミュニケーションを維持できるクリエイターと直接タッグを組むことが必要だと思っています。
 OASIZではそんなクリエイターたちを巻き込み、彼らと一緒に企業のTikTokアカウントを運用しています
 クリエイターのポテンシャルを最大限に引き出し、OASIZが持つTikTok運用のノウハウをかけ合わせる。そうすることで、企業は継続的に質の高いエンゲージやファンコミュニケーションを生み出すことができると思っています。
 それと同時に、クリエイターがビジネスの世界で活躍できることを証明できる。
 OASIZは「クリエイターの社会的価値向上」のために、今回の資金調達を実施しました。僕たちがクリエイターの支援を続けることで、彼らがビジネスで欠かせない存在になる。そんな未来が来ることを信じています。
 TikTokはまだまだ新しいサービスです。ゆえにクリエイターも若く、日本にはクリエイターを使いこなせている企業がまだ多くありません。
 ぜひOASIZと一緒に、クリエイターを巻き込んで「企業アカウントも結構イケてるよね」という世界をつくっていきましょう。
 そして、もしNewsPicksをご覧のみなさんで、ビジネスとクリエイティブを行き来して、「クリエイターが日本を引っ張る」世界をつくりたい方は、ぜひご連絡ください。僕らと一緒にクリエイターエコノミーをつくっていきましょう。