2023/7/18

IT採用のゲームチェンジャー。「成長する人材」と出会える求人サイト

News Picks Brand Design Senior Editor
 大量の求人広告、膨大な数の履歴書、複数工程の面接に実技試験……。
 IT人材を確保するには、膨大な費用がかかる。
 せっかく手間暇かけて採用をしても、使える人材ばかりとは限らない。
 多くの人事担当者が「非効率だな」と感じつつも、他の手法も見当たらず、今の採用手法に固執してしまっている。
「大手企業も中小企業も、求職者にとっても、今の採用システムは非常に効率が悪い状態になっています」
 そう断言するのは、システム開発事業やIT教育サービスを手がけるFOX HOUND取締役 斎藤輝幸氏だ。
「今回、弊社ではIT人材を求める企業に対して、求職者に成長してもらってから面接を受けてもらうという仕組みの求人サービスを作りました」
 新サービスの仕組みと、それによって生まれる企業側と求職者側のメリットについて伺った。
2011年2月にFOX HOUND株式会社を創業、取締役に就任。エンジニア歴20年の経験を活かし、ポテンシャル人材の採用、育成を統括。早くからSES事業部事業部長を兼任し、自社のシステムエンジニアの活躍の場の拡大に貢献。2020年1月にはFOX HOUND初の支店である福岡拠点を立ち上げ、現在も支店長を担い両拠点でのエンジニア採用を担う。

なぜ、IT人材の採用は難しいのか

──現在のIT人材の採用市場について教えてください。
 多くの企業が、優秀なエンジニアやプログラマの採用で課題を抱えています。
 応募者は優れた実績や経験を持つ人材から、プログラミングスクールで学んだだけの人、ほとんど未経験レベルの人まで人材の層が幅広く、玉石混淆です。
 どの企業も「経験豊富な即戦力が欲しい」と思いつつも、応募者の中から優秀な人を見抜いて採用するのが非常に難しいため、採用担当者は頭を抱えています。
──実際に人材の確保ができていないのでしょうか。
 必要な人数を採用できている企業と、そうでない企業に分かれていますね。
 大手企業については膨大な応募者数を集めることで、なんとかIT人材の確保を乗り切っている企業が多い。
 大手企業の場合、まず、求人媒体に広告を出し、1万人にスカウトメールを送り、大量の応募者を集めます。
 それから応募者を「経歴フィルター」や「採用試験」という”ふるい”にかけて、面接で人数を絞って、最終的に数十人を採用するという手法です。
 ここまでやったとしても、即戦力の人材が多数採用できるというわけではありません。採用後に2ヶ月ほどの研修を行いプログラミングの基礎を身につけさせます。
 実務レベルの内容の教育は、各現場に配属してからになります。
──採用コスト、研修コストが相当かかっていますね。
 そうなんです。
 一応、必要な人数の採用はできますが、かなり無駄が多い。
 しかも、大量に採用した中には、どうしてもやる気のない人材や早期にリタイアしてしまう人材も存在します。そういった人材の分も勘案して、採用を多めに行うため、そこでも無駄なコストがかかっていると言えるでしょう。
──中小企業の採用についてはいかがでしょうか。
 中小企業も採用戦略は大手とあまり変わりません。
 求人媒体に広告を出して、応募者を集めてから絞り込んでいくというやり方をとっている企業が多い。
 ただ、中小企業の場合、会社の知名度が低く応募者数が集まりにくい傾向にあります。
「経歴」「採用試験」「研修」と段階を追って応募者を絞り込んでも、十分な人数を採用できない企業が多いですね。
 そのため、中小企業の採用活動には、大手以上に採用失敗のリスクやコストの負担がかかっているのです。
──大手も中小も無駄なコストをかけていますね。
 そうですね。
 問題の根幹は、現在の採用システムが「数を集める」ことを前提にできていることにあるんです。
「とにかく求職者に知ってもらう」という、ところにお金と労力を投じている。
 転職業界もこの状況を改善しようとはせず、応募者を集めるためのメニューを作って、広告費を受け取るというビジネスを続けています。
 これでは、企業と人材がマッチングするサービスとは言えないでしょう。
 一方、転職エージェントなどは一般求人媒体よりは人材のフィルタリングがかかっているものの、一部の求職者に面接のサポートをする程度で、優秀な人材を企業側に提示してくれるわけではありません。
 採用サービスは「探せる」だけでは足りず「働ける」までをサポートできなければ人材にも企業にも大量のコストを押し付けると言っても過言ではないと、私たちは考えています。
 そこで弊社が合理的な採用のあり方を追求し、開発したのが「SLスタジオコネクテッド」です。

スキルを習得してから面接

──「SLスタジオコネクテッド」はどのようなサービスなのでしょうか。
 IT人材を育てながら企業とマッチングさせるサービスです。
 企業側は求職者に「面接の条件として修了してほしい、プログラミング学習講座」を指定し、求職者は入社したい企業が指定した講座を学習します。
 求職者は指定された講座を修了した段階で、企業に面接の申し込みができます。

求職者側からは待遇や面接条件が確認可能

コースを修了した求職者に対して、最終面接確約や入社後の待遇アップといった特典を与えている企業も多い。画面下部には面接に必要な条件が書かれている。
 プログラミング学習講座は、法人向けのエンジニア育成サービスでも採用されている実務的な内容で、すべて無料で公開しています。
学習動画の一場面。動画は1本5分〜10分程度で、その章の全体像が把握できる内容になっている。
 企業側は求職者の学習履歴や、自社に興味がある人材がどれくらいいるか、といった求職者ごとのデータをかなり細かく見ることができます。
 コース終了までにかかった学習時間や、課題合格までの回数や点数、さらには課題をどう解いたのかというソースコードまで見ることができます。
 この数値については、ごまかしが利かないので、本人のスキルや学習量、学習成果が完全に可視化されます。

採用側は学習者データが確認できる

企業側の画面では、現在自社の求人に興味を持って学習している人のデータが閲覧できる。転職の温度感や現在のスキルを確認した上で、自社からのアプローチも可能。データの個人情報はダミー。

スキルが身についた人材と会える「超合理的採用スキーム」

──一般的な採用プロセスにはないメリットを教えてください。
 一般的な求人広告経由の採用だと、求職者は何を努力したら採用につながるのかがわかりにくいし、自分の能力を証明するのも難しいですよね。
 履歴書もかなり”盛れて”しまいますし、資格試験やプログラミングスクールの証明書も実務で役に立つ人材かどうかを証明してくれません。
 一方で企業側も、求職者が入社後に活躍できる人材かを見抜くというのは困難だからこそ、「数を集めて絞り込む」という非効率なことをやっている。
 その点、「SLスタジオコネクテッド」は求職者側から見ると「何を頑張ったら転職につながるか」が可視化されている、企業側から見ると「指定したスキルが身についた人材」が採用できる「超合理的採用スキーム」になっています。
 多くの求職者を”ふるい”にかけるのではなく、面接に向けて成長してきた求職者と企業が対面する。
  面接に来た段階で、企業が指定した能力をどれくらい有しているかが確認可能なため、「膨大な応募の処理」や「落とす前提の面接」を大幅に削減します。
 さらには、学習状況の分析から見た集中度や意欲、かけた時間を人材の採用判断に用いることで、キャリア以外の採用基準を持つことができ、これは企業の可能性を拡張すると信じています。
 企業側が技術や業務内容をチェックできる担当者を人事に組み込めば、求職者の学習履歴を見ながら、「なぜ、ここの学習に時間がかかったのか」「このソースコードはどうしてこう書いたのか」といった実務レベルの面接から採用がスタートできます。
──どういう人材が面接に来ると想定されていますか。
 口だけの熱意ではなく行動で示せる、仕事にたいするリテラシーが高い人材が面接に来ると考えています。
 このサービスを通じて学習し、面接を受けに来る人は「あなたの会社に入るために自ら進んでプログラミング学習を続けてきた人材」です。
 プログラミングスキルという技術だけでなく、継続して学習を続けてきたという努力の部分も、採用の一つの基準になるのではないでしょうか。
 そういった点を踏まえると、「とりあえず履歴書を20社に送った」という求職者とは、質的に異なる人材の獲得につながると考えています。
──採用のあり方が大きく変わりますね。
 そうですね。
 採用プロセスが合理化されますし、入社後の研修も簡素化できるはずです。
 例えば、Javaの6コースをすべて履修すると240時間ほどかかるのですが、これをすべて終えると企業研修2ヶ月分の学習に相当します。
 講座は現在21コースを用意していますが、随時追加予定です。
 サービスを利用する求職者の募集は、これから本格的に行っていきます。
 大学、専門学校、高校などでの利用も視野に入れています。
 企業が求めるスキルを早い段階から若者たちに提示することで、若者たちは実務的な能力を身につけるための学習を積んでから、就職活動に臨むことができます。
──求職者側から見ても、従来の採用より魅力的ですね。
 おっしゃる通りです。
 我々の提供するサービスは、学習によって面接・採用に近づくという意味で、自己投資がわかりやすい形で自分に返ってくる仕組みになっています。
「採用面接に向けての学習が面倒だ」という人材には向かないシステムかもしれませんが、サービスの理解が進めば、この合理的なサービスに関心を持ってもらえると考えています。
 もはや面接の母集団を数多く集める、という採用方法が通用する時代ではありません。
 採用のコストが下がったあかつきには、採用した人材への投資に回してほしいと思っています。
「SLスタジオコネクテッド」という合理的なスキームが、人材と企業の関係値をアップデートすることを心から願っています。