2023/6/30
【シェア74%】なぜ、ベルフェイスは「金融業界」に“どハマり”したのか?
ベルフェイス(bellFace) | NewsPicks Brand Design
コロナ禍以降、あらゆるビジネスシーンにデジタル化の波が訪れた。なかでも仕事でのコミュニケーションにおいては、Web会議ツールが一気に普及した。
今やどんなビジネスでもZoomやMicrosoft TeamsなどのWeb会議ツールを使うのが当たり前だが、実は銀行や証券会社などの「金融業界」の営業活動で、圧倒的に支持を集める商談ツールがある。
それが「bellFace」だ。現在までに、3,600社以上の企業が導入し、金融業界のBtoCのオンライン商談市場におけるシェアは、実に74.5%にのぼる(2023年2月時点/他社リサーチ)。
実際にSMBC日興証券、みずほ銀行、野村證券をはじめ、メガバンクから大手証券会社、地方銀行まで、金融業界では導入が進んでいる。
なぜベルフェイスは、金融業界の個人顧客に向けた商談、いわゆる「リテール営業」で、これほど目覚ましいシェアを獲得できているのか。
同社のbellFaceがリテール営業のツールの新たなスタンダードになりつつある理由と、そのドラマティックな成り立ちを、代表取締役社長 中島一明氏に聞いた。
金融業界の“潮流”が変わった
──bellFaceは金融業界のリテール営業に支持されているそうですが、今、銀行や証券会社にはどんな変化が起きているのでしょうか?
中島 大きく2つの変化があります。1つは「ネット銀行やネット証券の台頭」、2つ目は「オンライン/オフラインを融合したセールスのニーズの高まり」です。
1つ目は、インターネットやスマホの普及に伴い、ネット銀行やネット証券会社が次々と誕生しました。
これらの企業は従来の金融とは違い、支店や窓口業務などを担当する従業員を必要としないので、非常に効率性が高い。
従来の金融機関にとっては、まさか楽天やGMOがライバルになるとは夢にも思わなかったはず。
証券会社の営業が喫茶店で話している間に、ネットに接続し、契約できる時代になったわけですね。
一方で、これまでの銀行や証券会社は、以前よりも減少傾向にあるとはいえ、支店や人員を多く抱えている。
つまり、従来の金融業界のリテール営業ではこれまで以上に営業社員の生産性を高めていく必要が生まれてきました。
そして2つ目は、お客様は専門知識を持った担当者がつくことを望む一方で、インターネットとスマホの普及により店頭に出向くことに煩わしさを感じ、オンライン上の取引を希望するようになったことです。
弊社で行ったアンケート調査でも、金融商品購入に対して「専門の担当者がつくことに価値を感じているが、店頭に出向くことに煩わしさを感じている」方が多いことが、データとして出ています。
さらに営業側でも、お客様とのエンゲージメントを高めるための手法として関係値向上が求められており、接点回数の増加が重要視されています。
そうなると店舗での商談と訪問営業の間に、電話やWeb会議ツールで会話しながらコミュニケーションをとるなど、一人ひとりのお客様に応じて柔軟に変えていく、ハイブリッドな営業スタイルが必要になります。
そして、電話やオンラインで効率性、エンゲージメントを高めるためには、対面と同じくらいわかりやすく、丁寧な説明が求められる。
そこで重宝するのが、bellFaceなんです。
bellFaceが金融業界にフィットした理由
──なぜ、bellFaceが支持されているんでしょうか?
まず我々は、他社のWeb会議ツールと違って、bellFaceはあくまで「電話」を進化させたツールだと考えています。
簡単に使い方を説明しますと、まずbellFaceを導入した企業が商談をする場合、お客様に電話したあと、SMSでURLをお送りします(bellFaceの機能で送付可能)。
それをクリックすると、オンライン商談をスタートできます。これだけです。
つまり、まず電話がつながった状態でスタートし、オンラインへと誘導していく。音声は電話、画面はオンラインに分けて商談をするんです。
他社のWeb会議ツールのように、お客様にアプリをダウンロードしてもらったり、毎回URLを発行し、クリックしてもらう必要がない。
それが、金融業界のリテール営業に支持される理由の一つです。
──意外とシンプルな理由ですが、それだけで支持に繋がるんでしょうか?
Web会議ツールより電話は「つながりやすい」。これが、営業にとってもお客様にとっても重要なんです。
電話って、Web会議ツールみたいに接続不良になって切れたりすることは、ほぼありませんよね。
特に、ご年配の方がお客様に多い銀行や証券のリテール営業にとって「つながりやすさ」は生命線ともいっても過言ではない。
途中で音声がブツブツと途切れるだけで、お客様の信頼度は大きく損なわれます。
それに、ほとんどの人が携帯電話を持っていますし、事前にスピーカーやマイクを設定する必要もない。当然、身なりも整えなくていい。
また、オンライン会議のように複数名が参加することなく、他の人に会話を聞かれることもありませんから機密性も高い。
その点において電話に敵うツールはありません。
だから電話をタッチポイントにしつつ、お客様に情報をより分かりやすく伝えられるbellFaceは、リテール営業にとって最適なんです。
──確かに。営業側もセールスのオペレーションを変えなくてもいいですし。
そうなんです。事前にURLを共有するWeb会議ですと、メールアドレスを取得、リマインドメール送付、といった営業オペレーションの追加や、セキュリティ対策が必要になりますからね。
シンプルなプロダクトなので、そういった設計が不要である点も、評価いただいているポイントです。
──ほかにも、導入企業から評価されているポイントはありますか?
そうですね。bellFaceが金融業界で支持される理由としては、「セキュリティ」の基準をクリアできていることが挙げられます。
言わずもがなですが金融業界は、非常に厳しいコンプライアンスが求められる世界です。
最近は少し緩和されているとはいえ、オンライン会議で画面共有そのものを禁止している会社も少なくありません。
それこそ顧客情報が載った資料を共有し、画面をキャプチャされ流出してしまったりしたら、大変な事態となります。
bellFaceには、あらかじめファイルをクラウドに保存し、管理者が許可しないと相手に表示できない仕組みを備えていますし、オンライン面談中のプロセスも電子ログで記録される。
金融機関が求めるセキュリティやコンプライアンスの基準をクリアできています。
さらにはもう一つ、大きな理由があります。それは、商談に必要な業務をオンラインですべて行える点です。
──商談に必要な業務?
たとえばお客様に自社の資料をお渡しするとか、書類や身分証明書の写しをいただくとか、申し込みや契約の手続きをするとか、さまざまにあります。
それができなければ、結局一度は対面や郵送で手続きをする必要が出てくる。
でもbellFaceでは、お客様のスマホのカメラで手元の書類を撮影して送れる機能や、画面共有した資料をスマホやパソコンにダウンロードしてもらえる機能も備えています。
また共有している画面の操作権限をお客様に渡し、オンライン上で署名していただける「リモートコントロール」という特許技術もあります。
そうした機能があるために、手続きや契約をオンラインで完結できるんです。
──実際に、どのような企業に導入されているのでしょうか?
みずほ銀行さま、野村證券さまをはじめ、メガバンクから大手証券会社、地方銀行まで導入されており、金融業界のBtoCのオンライン商談市場におけるシェアは、約75%に達しています。
さらに2023年5月からは、これまで一部の部署で導入いただいていたSMBC日興証券さまでは、本店と支店の個人のお客様を担当する営業全員に拡大導入いただきました。
本店だけではなく、支店も含めた全店で導入された意味は大きい。グループ全体で10万人以上の従業員を抱える金融機関が着手したことで、流れは業界全体で加速すると考えています。
金融業界に「ベルフェイス」がピボットできた理由
──話は変わりますが、もともとbellFaceは金融機関に限らず、あらゆる業界をターゲットにしたオンライン会議ツールでしたよね。数年前、タクシーで「ヒラメ筋」のCMを見た記憶があります。
はい(笑)。サービスを開始した2015年から2020年までは、幅広い業界をターゲットにしていました。
成長を後押しした一つが、俳優の照英さんに出演いただいた「営業は足で稼ぐ」「ヒラメ筋」のCMです。
CMはタクシー広告を中心に流したのですが、それをきっかけに、1ヶ月に200件ほどだったリード数が数千件にまで増え、売上も急伸。
ところがその後コロナ禍により、5年間で築き上げた収益基盤は、ガラガラと崩れてしまいます。
──ZoomやMicrosoft Teamsといったオンライン会議ツールは、コロナ禍を機に一気に浸透しました。bellFaceはなぜ、そうならなかったのでしょう?
Web会議ツール市場がレッドオーシャン化し、電話を使うbellFaceが時代遅れのような立ち位置になってしまったんです。
それによってリード数は最盛期の1/10にまで落ち込み、更新月を迎えたお客様の半数が解約する状態になってしまいました。
そうして身を切る思いでコストを何分の一にも圧縮する一方で、会社を存続させるには、新たな成長戦略を描かなければならない。そんなときに、一筋の光明となったのが、金融業界だったんです。
──なぜ、金融業界だったのでしょうか?
ユーザーの絶対数は少なかったのですが、金融業界のお客様だけが解約せず、むしろ使用頻度が増えていました。
不思議に思って、金融業界のお客様にヒアリングをすると……
「営業する相手が個人なので、Web会議ツールだと対応してもらえない」
「会社のセキュリティが厳しく、画面共有ができない」
「会社のセキュリティが厳しく、画面共有ができない」
といった声が多く聞かれました。
つまり、bellFaceは金融業界のリテール営業のニーズを満たす機能を備えていた。
それならもっと金融業界に向けた機能やサービスを磨き、全業界からの“Like”ではなく、金融業界からの圧倒的な“Love”を勝ち取ろう。そう決断しました。
その結果、現在では3年前と比較して、導入社数が約7倍、ARR(年間経常収益)は約47倍にまで成長しました。
今思えば、金融業界に特化するあのときの判断が正しかったというよりも、正しいか間違いかわからないなかで、正しくなるようにやりきった感じですね。
グローバルで勝てる稀有なツールになる
──少し意地悪な質問になりますが、もしbellFaceと同じように電話を使い、強固なセキュリティを備え、かつ手続きや契約をオンラインで完結できる面談ツールが出てきたら、差別化はできますか?
当社は、カスタマーサクセス(CS)を重視しており、それを確固たる強みとして差別化できると思います。
いかにお客様にサクセスしていただくか、これが一番の行動原理になっている。
実際に会社の行動指針となる「6Values」の一つに「For Customer」がある通り、お客様の声やフィードバックを大切にし、プロダクトのアップデートやご支援を行う文化が根づいています。
ツールの機能はもちろん、顧客のヒアリングからオンライン商談の進め方、クローズにいたるまで、ソフト面のノウハウが蓄積されている。
そうした知見を武器に、お客様のサクセスに対して、高い精度でご支援できる。
特に金融業界は業務が特殊かつ複雑なので、知識と実績が一定以上ないと、業務をツールに当て込んだご説明ができません。
当社であれば、どのように使えばお客様の悩みに対処できるのか、実例も交えながらご説明できますし、お客様と伴走していけます。
──最後に、ベルフェイスの今後の目標を教えてください。
大きなシェアを獲得できているといっても、リテール営業を対面のみで行っている金融機関もまだまだたくさんあります。
そうした企業にもbellFaceを着実に広めていき、金融業界の生産性を飛躍的に上げるお手伝いがしたい。
また、金融業界にしっかりフォーカスする戦略は今後も変えませんが、一方でこのソリューションを他の業界でも応用していきたいと思っています。
というのもリテール営業は金融業界に限らず住宅、通信、自動車など幅広い業界で行われ、今なお対面が主流となっています。
もちろんそれぞれに業界事情があるので、プロダクトのカスタマイズは必要かもしれませんが、金融機関で築いた知見と実績は他の業界でも非常に有用なはず。
そしてもう一つ、将来的に見据えるのが、グローバル展開です。ご存じの通り、今やスマホは世界中で普及し、日本よりはるかに高い頻度で通話を行っている国もたくさんあります。
にもかかわらず、bellFaceのように電話面談に特化した機能を備えたツールは、見当たりません。
まさしくグローバルで勝てる可能性のある稀有なツールだと思うので、世界に展開するところまで、必ずやりきりたいですね。
執筆:田嶋章博
撮影:濱田紘輔
デザイン:Seisakujo.inc
編集:海達亮弥
撮影:濱田紘輔
デザイン:Seisakujo.inc
編集:海達亮弥
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