5月に誕生したユニコーン全8社

2023年6月14日
全体に公開

米国の老舗VC、IVPでCoinbaseへの投資を担当したTom Loverro氏は、「スタートアップの大量絶滅イベントが進行中」表現するほど、グローバルではスタートアップにとって厳しい時期が続いています。

そんな中、5月の新規ユニコーンはわずか8社となりました。

☕️coffee break

1. 🇨🇦Cohere(コヒア)

・資金調達額:2億7000万ドル(約378億円)

・評価額:20億ドル(約2802億円)

・主な投資家:NVIDIA、Oracle、Salesforce Venturesなど

・事業内容:法人向けの大規模言語モデル(LLM)の開発と導入支援

ここに注目👉Googleの研究者が中心となり、2019年に創業。エンタープライズ向けに高性能で安全な言語モデルのプラットフォームを開発しています。特定の業界のユースケースに合わせたモデルの性能向上に注力していて、毎週更新モデルをリリースしているので、高い性能に期待も。

Oracleは、MicrosoftとOpenAIの関係のようにCohereとの協業を戦略の中心に据えて、LLMの販売や、人事・サプライチェーン管理アプリへのAI組み込みを計画しています。

日本の類似スタートアップ:オルツ

2. 🇺🇸Runway AI(ランウェイ・エーアイ)

・資金調達額:2億7000万ドル(約378億円)

・評価額:15億ドル(約2100億円)

・主な投資家:Google

・事業内容:AI動画生成ツール

ここに注目👉Stability AIが開発する画像生成AI「Stable Diffusion」の開発も支援したスタートアップ。既存の動画から新しい動画を、テキストから動画を生成するなど、動画領域で様々なプロダクトを開発しています。

今回のシリーズDでは、Googleにとって、Anthropicに続く2社目となるAIスタートアップへの投資。この裏では、RunwayがサーバーをAmazon Web ServicesからGoogle Cloudに乗り換えるなど、水面下での激しい戦いがありました。

日本の類似スタートアップ:r3kt

3. 🇨🇳Ryefield Energy(ライフィールド・エナジー)

・資金調達額:1億4000万ドル(約196億円)

・評価額:14億ドル(約1960億円)

・主な投資家:Sparkedge Capital

・事業内容:住宅用蓄電システムと太陽光インバーター(電気を直流から交流に逆変換する装置)の開発・販売

ここに注目👉Fox ESSとしても知られているRyefield Energy(麦田能源)は設立4年目にして、ユニコーン入り。今回のラウンドはプレIPOラウンドのため、近いうちに上場する可能性も。昨年の収益は20億元(390億円)超えと、中国政府の太陽光発電政策を追い風に脅威の急成長を遂げています。

日本の類似スタートアップ:LooopCONNEXX SYSTEMSネクストエナジー・アンド・リソース

4. 🇮🇩eFisery(イーフィッシェリー)

・資金調達額:1億800万ドル(約151億円)

・評価額:13億ドル(約1820億円)

・主な投資家:​42XFund​(AI企業G42と政府系ファンドのアブダビ・グロースファンドの共同ファンド)、ソフトバンク・ビジョン・ファンド

・事業内容:水産養殖エコシステムの構築

ここに注目👉養殖業者向け、エビ養殖業者向け、バイヤー/消費者向けの3つの領域でデジタル協同組合、飼料の後払い/融資における金融機関へのアクセス支援、魚販売のマーケットプレイスなど、12の事業を展開。2022年の収益は2億6,600 万ドル(約370億円)で、数年前から黒字化しているとのこと。

日本の類似スタートアップ:UMITRON

参考:水産養殖で驚異の成功、ユニコーン企業に(eFisery)

5. 🇺🇸Gradiant(グラディアント)

・資金調達額2億2500万ドル(約315億円)

・評価額10億ドル(約1400億円)

・主な投資家:BoltRock Holdings、Centaurus Capital

・事業内容:水処理・排水処理システムの開発/販売

ここに注目👉製薬、半導体、食品・飲料業界などに水の使用量を減らす技術や廃水処理システムを提供。すでに半導体ではTSMCやマイクロン テクノロジー、製薬ではファイザー、飲料ではコカ・コーラやアンハイザー・ブッシュ・インベブなど、あらゆる業界を代表する大手企業を顧客に抱えています。

日本の類似スタートアップ:WOTAWaqua

6. 🇺🇸Avenue One(アベニュー・ワン)

・資金調達額1億ドル(約140億円)

・評価額10億ドル(約1400億円)

・主な投資家:WestCap、MetLife Investment Management

・事業内容:一戸建て賃貸管理プラットフォーム

ここに注目👉機関投資家が一戸建て賃貸物件を大規模に取得・管理するために必要な不動産データ、分析、運用を支援するプラットフォーム。米国21州以上で事業展開しており、ローカルの不動産会社400社以上と提携しているため、他の不動産テック企業が入手できない情報を保有していることが特徴です。

日本の類似スタートアップ:エステートテクノロジーズ

7. 🇺🇸Restaurant365(レストラン365)

・資金調達額1億3500万ドル(約189億円)

・評価額10億ドル(約1400億円)

・主な投資家:KKR、L Catterton

・事業:レストラン経営管理SaaS

ここに注目👉タコベルのような大手飲食チェーンから小規模レストランまで、売上・人事・在庫・買掛金管理までバックオフィス業務を一元管理できるソフトウェア。日々の膨大な業務を効率化することはもちろん、利益率の向上と事業拡大につなげることを目的としたサービスです。現在の収益は約1億ドルで40,000以上のレストランが導入しており、PEファンドのKKRとLVMH系のL Cattertonから強力な支援を受け、さらなる事業拡大を狙っています。

日本の類似スタートアップ:トレタTableCheckフードテックキャピタル

8. 🇨🇳Zhiyuan Robotics(ジーユェン・ロボティクス)

・資金調達額:非公開

・評価額10億ドル(約1400億円)

・主な投資家:Baidu Capital

・事業:ケータリングロボットの開発

ここに注目👉Qianxi Robotics Group傘下の研究開発組織で24時間365日、非接触でサービス提供することができるケータリングロボットとシステムを開発・提供しています。すでに61種類以上ものロボットが実用化されている上、土鍋ロボット、ハンバーガーロボット、アイスクリームロボット、コーヒーロボットは量産段階に入るなど、高い技術力を有しています。

日本の類似スタートアップ:TechMagicNew Innovations

🍫ちなみに

冒頭触れたように、グローバルではスタートアップにとって厳しい時期が続いています。

中でも、2021年のスタートアップ資金調達ブーム時に設立され、これから事業拡大をしていくといった段階の企業は大きな影響を受けていると見られます。

例えば、プレシードをメインに投資をしている米国の「Hustle Fund」では、少し前まで投資先が101社あったものの、現在ではわずか60社しか存続していません

コロナ禍の政府などからの補助金もなくなった今、事業存続に向けて売却・倒産、あるいはピボットを選択するスタートアップが相次いで生まれてくるのかもしれませんね。

サムネイル画像:Unsplash/Biegun Wschodni

本記事では、Crunchbaseの「New Unicorns In May Hit Double Digits With Two AI Companies」をもとに取り上げているものの、各種データを調査した結果、8社のみを取り上げています。

応援ありがとうございます!
いいねして著者を応援してみませんか



このトピックスについて
樋口 真章さん、他9494人がフォローしています