2023/6/13

【世界1位】YOASOBI「アイドル」、超絶ヒットの全舞台裏

NewsPicks編集部
2023年6月、J-POP史上初の快挙をYOASOBIが成し遂げた。
4月に投入した新曲「アイドル」が、米ビルボードのグローバルランキング(米国除く)でなんと1位を獲得したのだ。
これは日本語の楽曲では初で、YouTubeの再生回数も1.62億回まで伸びている。
投入から2カ月が経つにもかかわらず、この記事を書いている間もすさまじい勢いで伸び続けており、日本のチャートでは8週連続で1位、TikTokランキングでも6週連続1位など、国を超えてその爆発ぶりが止まらない。
2023年、いやJ-POP史で見ても、最も熱い楽曲の一つなのは間違いない。
このヒットは、まずYOASOBIというユニットが持つ類まれなる才能の賜物だ。
ロックバンド、ボカロP出身であり、多彩な引き出しを自由自在に操るコンポーザーAyaseが持つクリエイティビティに、その人間離れした楽曲をさらに引き上げるikuraのボーカルが高次元に絡まり、唯一無二の作品を生み出した。
だが、その前提があった上で、このヒットの裏ではいくつもの仕掛けが動いていた。
まず、「アイドル」は、アニメ【推しの子】の主題歌として、入念かつ周到な準備を経て投入された。この【推しの子】自体が国境を超えた大ヒットを記録しており、その上でアニメの世界観を緻密に昇華する「アイドル」という楽曲とMVが投入され、そのシナジーが全世界で爆発しているのだ。
では、この「アニメ×J-POP」の究極系ともいえるプロジェクトはいかにして生まれたのか──。
NewsPicksでは、このプロジェクトを裏側で遂行したYOASOBIと【推しの子】の担当キーマン4人に取材し、その全貌を聞いた。
INDEX
  • 「最後の一滴」が落ちる仕掛け
  • Z世代と「ニコ動世代」を攻略
  • アニメと音楽の「世界観をぶつける」
  • 「89秒」に込めた2つの意味
  • YouTube1.6億回再生の「裏側」
  • あえて「ヒットの方程式」を崩す

「最後の一滴」が落ちる仕掛け

──アニメ「【推しの子】」第1話の先行上映。その時に初めてYOASOBIが担当する主題歌「アイドル」がフルバージョンで流れました。その後、テレビアニメの放送開始、主題歌の配信スタート…と、相互にファンを刺激しながら、ヒットのうねりが大きくなっていったように見えました。まずは、アニメの戦略について教えてください。
KADOKAWA 吉岡  大前提として、原作の【推しの子】そのものが単行本の累計部数900万部(2023年6月現在)を突破し、「次にくるマンガ大賞2021」でコミックス部門1位になった、大変多くのファンを抱える大ヒット作品です。
我々は映像化させていただくにあたり、TVアニメの宣伝に関しては、前例が無いことをやるよりも、まずは原作ファンを裏切らない最大限の仕込みをしっかり用意することを目指しました。
最初の山場は3月17日から始まったアニメ第1話の劇場先行上映でした。