2023/6/7
【元IT起業家】「数字」や「成長」に追われ、疲弊するあなたへ
人生の「探求者」たちのエピソードから、自分らしく、しなやかに生きるヒントを探る連載「Life Quest(ライフ・クエスト)」。
今週登場するのは、ライブ配信アプリ「17LIVE(イチナナ)」CEO退任のわずか2カ月後、2022年10月に「電撃出家」をした小野龍光(おの・りゅうこう)氏だ。
過去にはベンチャーキャピタル「インフィニティ・ベンチャーズ」を創業した経歴も持つ。
事業家・投資家として着実にキャリアを積み上げていた小野氏は、なぜ出家するに至ったのか。
過去のエピソードをひもとくと、小野氏の決断の理由が少しずつ見えてきた。<全5回>
小野龍光(おの・りゅうこう)1974年生まれ、札幌市出身。2022年10月旅行で訪れたインド・ナグプールにて得度。仏教僧見習いとして修行中。得度前は、小野裕史として、投資家・連続起業家として生活。49歳
- VC業界の仕組みに「疑念」
- 気づけなかった「終わりなきレース」
- 「無限の成長」という幻想
- 私は「欲望の渦」に飲み込まれていた
VC業界の仕組みに「疑念」
強い者、豊かな者だけが、富み、さらなる力を持つ──。
そんな世の中の仕組みをはっきり肌で感じ始めたのは、ベンチャーキャピタル(VC)を始めてからのことでした。
皆さんもご存じのとおり、VCは機関投資家や個人投資家からお金を預かって、スタートアップ企業に投資し、上場や事業売却によって利益を得るというビジネスです。
より上流にいる投資家に対して、より早く、より高くリターンを返さなくてはいけない。そのため、時価総額がついて、高く「売れそう」な会社に張る力学が働きます。