2023/5/30
【内幕】40万円のヘッドセット開発に見る「アップルの迷走」
NewsPicksでは週7日毎日、世界のトレンドの背景を追うシリーズを開始しています。火曜日は「Behind the Scene(ニュースの裏側)」です。
INDEX
- アップルにとっては「危険な賭け」
- ライバル製品は揃って「不発」
- アップルらしからぬ「妥協」の産物
- ジョブズと正反対のクック
- 2つのチームの「対立」
- 遅々として進まぬ開発
- 使い道は「ユーザーまかせ」
アップルにとっては「危険な賭け」
アップルはその歴史の中で何度も、「期待外れな」既存のガジェット市場に新しい命を吹き込み、消費者向けテクノロジーを再定義してきた。
来たる6月5日、ティム・クックCEOは年次開発者会議のバーチャルステージに立ち、アップル初の複合現実(MR)ヘッドセットを披露する。
同社がこれまで音楽プレーヤー、スマートフォン、スマートウォッチなどに対してやってきたのと同じように、MR市場に新風を巻き起こそうというのだ。
だが、同社のこれまでの実績にもかかわらず、この新製品をめぐっては懐疑的な目を向ける人が少なくない。
新製品の名称は「Reality」。OSは新しい「xrOS」で、価格3000ドル(約42万円)ほどで売り出される見込みだ。
ヘッドセット市場では、これまで複数のテック大手や資金力のあるスタートアップが巨額を投じてきたが、いまだブレイクするような製品は誕生していない。
アップル社のヘッドセットの開発は、実に7年に及んだ。そのプロセスに詳しい関係者らによると、最終的な製品の形は、クックの当初のビジョンから大きく逸脱しているという。
もともとは、一日中かけていても邪魔にならないメガネのようなイメージだったが、最終的にスキーのゴーグルのような形態になり、しかもバッテリーパックが別途必要になった。