(ブルームバーグ): 4月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年同月比3.4%上昇と、前月の3.1%上昇から伸びが拡大した。伸び率が前月を上回るのは3カ月ぶり。市場予想と一致した。原材料価格の上昇などを価格転嫁する動きが食料品を中心に続いている。総務省が19日に発表した。

基調的な物価上昇圧力の強さが示され、市場にくすぶる日本銀行による早期の金融政策修正への思惑を後押しする可能性がある。日銀は4月公表の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、2023年度のコアCPIの前年度比上昇率見通しを1.8%に上方修正した。市場では次回7月のリポートでさらなる上方修正を指摘する声が増えている。 

日銀の植田和男総裁は初めて出席した4月の金融政策決定会合後の会見で、持続的・安定的な2%の物価目標の実現に重要な基調的な物価は徐々に上昇し始めているとしながらも、経済や金融市場を巡る不確実性が極めて高いと指摘。もっとも、「今年のいろいろな経済変数の動きを見ていく中で、持続的な2%が達成されそうだという判断に至るケースも十分あり得る」と語っていた。

日銀は24年度にコアCPIが2%に達するとみているが、4月に初めて示した25年度の見通しは1.6%で、目標の2%に届かない姿となっている。 

野村証券の岡崎康平シニアエコノミストは「思ったより物価上昇が続いているという認識は日銀も少しずつ共有していくだろう」と指摘。食品などの値上げが続き、円高方向になかなか動かない状況で「より幅広く経済が長期間インフレ圧力にさらされることで、これぐらいの価格水準が新しいノーマルなんだという、まさにノルム(社会規範)が少し変わるような状態になっていくのを正当化する結果」と語った。

物価の見通しについては、「日銀が想定していた軌道に本当に沿っているのかというと、もう少し強いのかなと思う。物価の基調が修正されることはないにせよ、どちらかといえば上方修正含みの見方をするのは適切だろう」と付け加えた。 

4月は生鮮食品を除く食料は前年同月比9.0%上昇し、1976年5月(9.1%上昇)以来の高い伸びとなった。唐揚げなどの調理食品や外食、菓子類などが押し上げ要因。宿泊料は8.1%上昇と7カ月ぶりプラスに転じた。観光需要の回復に伴う価格上昇が全国旅行支援の押し下げ効果を上回った。

一方、エネルギーは政府による電気・ガス価格高騰対策の効果で4.4%下落し、前の月(3.8%下落)からマイナス幅を拡大した。生鮮食品とエネルギーを除いたコアコアCPIは4.1%上昇と、1981年9月以来、41年7カ月ぶりの高水準。市場予想は4.2%上昇だった。

コアCPIの前年比上昇率に関して総務省は、3月からの拡大幅0.3ポイントのうち半分以上の0.18ポイントを生鮮食品を除く食料が占めるが、幅広い品目でプラスが重なっていると説明。コア522品目のうち上昇したのは433品目で、3月は427品目だった。電気・ガス代の激変緩和措置と全国旅行支援の影響を除くと同上昇率は4.5%になるという。

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--取材協力:氏兼敬子.

(9段落目に総務省の説明を追加して更新しました)

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