2023/5/19

【実録・NP社員が体験した最高の住宅相談】#1「エージェントに教わる「いい物件」」

毎回極めて実用的な不動産情報を解説してくれるトピックス「ロジカル不動産」の江口亮介さん。その記事の最後にしばしば「ローン相談・住宅購入相談はこちら」との記載があり、一体どのような内容なのだろう...?と想像が膨らんでいました。

今回はそんな住宅相談をついにNewsPicks社員が体験。この企画が生まれる前から本気で住宅購入を目指してすでに多数のエージェントとの相談、内見を重ねていたNewsPicksのメンバーが「別次元だった...!」と興奮の面持ちで絶賛した住宅相談の全貌を特集でお届けします。

第1回はエージェントへのご相談です。
INDEX
  • 「家を買えない」のはなぜ?
  • お金の準備が、物件の準備
  • リセールを考えて家を買うべき?
  • 物件情報だけじゃない、家の大事なポイント

「家を買えない」のはなぜ?

――私たち夫婦は、今年の2月に家を探し始めました。いろいろと内見にも行ったんですが、だんだんわからなくなってしまって……。ちょっと疲れて、1ヵ月ほどおやすみしています。今回TERASSさんに相談することで、「わからない」状況から抜け出したいと思っています。
江口 よろしくお願いします。TERASSは不動産エージェントのサポート事業を行っており、所属している全員が個人エージェントです。当社自体が不動産取引を行う免許を持っていますが、僕や社員が不動産取引をサポートするのではなく、いい仲介ができる個人エージェントを紹介する、ということを行っています。
 今回ハットリさんの条件を事前に伺い、僕と一緒に竹内さんが相談に乗るのが適任なのではと思い、この場にお呼びしました。
竹内 はじめまして! TERASSに所属している竹内といいます。通常の不動産会社と違う点として、私達にはノルマがありません。だからお客様に寄り添った提案ができると自負しています。今日は住宅に関するいろんな不安をうかがって、それを受けた提案をできればと思っています。
――よろしくお願いします!
(江口亮介さん(左)、竹内幸雄さん(右))
竹内 「わからなくなってしまった」とおっしゃっていましたが、これまでの家探しはどのような感じだったんでしょうか?
――私達の主観なんですが……不動産会社の営業さんと接していると、口では「おふたりのライフプランに沿います」と言いながら、いざ内見に行くと「買えますか? 今決めないとすぐなくなっちゃいますよ」という言い方になってくる。そうなるとパニックになってしまって、結局決断できませんでした。
 また、LINEでやりとりしていたんですが、忙しそうで全然返事が返ってこなかったり、伝えていたのと全く違う物件の紹介が来たりで、「あ、この人は私達に向き合ってくれてないな」と感じて、いったん家探しをやめてしまいました。
竹内 なるほど……。物件ありきの紹介だと、紹介をしていく中で、お客様がどんどん迷子になってしまうんですよね。また、不動産営業の中には、ノルマの達成のために月末に成約を急かす方もいます。不動産を「買えない」のが、「買うべきか買わないべきかで悩んで、買わないべきとわかったから、買わない」ならいい。でも「わからないから、買わない」というのは、よくないことだと思います。
 家探しを成功させる明確なコツがあります。それは、(1)予算を決める、(2)エリアを決めて相場を把握する、(3)物件を決める――という順番でやっていくことです。これを同時にやっていくと、そりゃもう混乱します。
 不動産のプロは毎日情報を見ているので、ぱっと見て「これはいい物件だ」とわかる。でも普段不動産を見ていない方はわからないです。だから物件を見ても「そんなに急に決められないよ」と悩んで買えなくなってしまう。
――いくつか物件を並行して見ていくと、どれも一長一短で。どこかに掘り出し物があるんじゃないか、自分たちが見逃している掘り出し物があるんじゃないか、という気持ちになってきてしまいます。
江口 そうですよね。よく「掘り出し物はありますか?」と聞かれますが、ほとんどありません(笑)。ほとんどないけど、「掘り出し物と思える物件」に出会えることはあります。
 不動産の価格は、おおむね物件の情報と条件で決まります。わかりやすい例だと、駅から遠かったり、築年数が古かったりすると安くなりますよね。多くの人が気になるところであったとしても、そのお客様にとって気にならない部分であれば、「掘り出し物」ということになります。
 つまり、掘り出し物と思えるかどうかは、自分たちの条件をちゃんと把握しているかどうかによって変わるんです。駅徒歩20分が気にならなければ、それはその人にとっての掘り出し物になるわけですから。そういう意味でも、条件をまず固めていくのが重要です。
 ちなみに、トピックスにも書いたのですが、不動産業者しか見れない物件情報共有サイトは確かにあります(「謎多き未公開情報を徹底解説。未公開情報に踊らされないためには。」)。「レインズ」というサイトですね。たまに「掘り出し物はレインズにだけあるんじゃないか」と聞かれることがあるんですが、全然そんなことはない。
 「未公開物件」というバリューをつけて、なんとか高値で売れないか……としている物件であることも多いので、未公開物件=いい物件、では決してありません。
 ちょっとマニアックになってしまうので詳しくは言いませんが、トラブルにつながるケースもあります。もちろん未公開物件がそのお客さんにとって掘り出し物の可能性もあるし、TERASSには未公開物件の紹介が得意なメンバーも所属しています。ただ、僕はまずは条件整理が重要だと思っているので、今回はそちらをおすすめしていきます。
――さきほどの3つのコツでは、まず予算を決めるんでしたよね。どうやって決めるんでしょうか? なんとなく、年収から計算していくのかなと思いますが……。
竹内 ほとんどの方が、今の家賃を元に予算を決めるんですよ。ただそれだと、将来的に8割ぐらいの方が赤字に転じてしまい、思わぬところで売却をしなくてはならなくなるケースも。しっかりとお金のプロに資産形成の相談をする必要があると我々は考えているので、僕たちのお客様にはファイナンシャルプランナー(FP)によるライフプランニングを通じて予算を決めていただいています。
 「家を買ったから、カツカツのライフスタイルが決まってしまう」という形ではなく、「送りたいライフスタイルに沿って、そのビジョンの中で家を買う」というのがベストな購入だと私は思っています。
 FP相談では、単純な収入や支出だけでなく、使途不明金、会社の積立、確定拠出年金、NISAも確認しますし、将来的な子どもの有無や、退職金、どういう風にお金を使いたいか、子どもを考えている場合はどういう教育を受けさせたいか、老後に向けてどういう風にお金を貯めるかも含めて見てもらいます。ハットリさんたちは、夫婦でそういった話をすることはありますか?
――実は、そういう話を夫婦ですることはあまりありません。お金の管理は、毎月決まった金額を共同用とした口座に入れているだけです。
江口 でしたら、家の購入がいいきっかけになるかもしれませんね。FPは人の人生を知っているんですよ。共働きの世代が増えてきて、お互いどういうお金の価値観を持っているか知らないという人も増えています。
 そうなると、家を買うのが怖くなってしまう。「お互い払えるかな。実はちょっと転職しようと思っていて、年収が低くなるかもしれない」「え、転職を考えてたの?」みたいなことはよくあります。こういう確認をしていく中で、「今は家を買うタイミングじゃない」という結論に達することもあります。
――それはわかる気がします。家の購入に対する価値観が違うのかも、と夫婦で揉めたことが、この数カ月ありました。
竹内 予算が決まると、エリアも具体的に決まってきます。物件には相場がありますから、予算に応じて最寄り駅や駅徒歩の分数が定まってきます。たとえば「7000万円は出せるな」と決まってきたとして、都心の中心地に望むような物件があるかというと、ないかもしれない。
 なら、どこまで中心地から広げられるかというエリアの範囲を自分たちで把握して、相場を見る。そうしないと、「自分にとっていい物件」が出てきたときに反応できません。
(Unsplash/Tierra Mallorca)

お金の準備が、物件の準備

竹内 予算とエリアが決まってきたタイミングで、住宅ローンの事前審査も行ってもらいます。それをやっておくと、実際の自分たちの借り入れ可能額、返済額もわかります。そこまで準備ができているからこそ、物件を決めることができるんです。
――事前審査はどこで行ってもいいんでしょうか?
竹内 事前審査は正直どこで出してもいいです。ただ、その銀行で借りた時に何%の金利になるかは、ライフプランニングにかかってくる、つまり買える物件も変わります。なので、どの銀行で借りる予定かを考えるのはとても大事です!
江口 ネット銀行は金利がいいこともありますが、審査が厳しくて借りられないこともある。だから同時に都市銀行を通すことも必要です。また、額面上は金利がよくても、同時に他サービスや保険などを契約した場合の金利のこともあり、結果として違う銀行のほうが安い…といったバランスもありえます。逆に、すでに生命保険等を契約している場合、手厚い保障は不要になるという例もありますね。
――実は、事前審査はもう出しているんです。前やり取りした不動産会社の担当さんの勧めのままに書類を出してしまいました。その時に、「流されて出しちゃったけど、これでいいのか?」と疑問に思ったことがありました。「ロジカル不動産」の記事を読んで初めて、銀行を自分で選んでいいということを知りました。
江口 銀行の融資条件は、実は毎月変わっているんですよ。これを把握し続けるのはけっこう大変。なので、審査を通しやすい銀行や、付き合いの多い銀行を提案してしまう不動産営業も少なくない。
 でも、金利が0.1%違うのは、決めるときはあまり大きく感じませんが、35年間の支払いと考えると100万円以上になる。このお客様の100万円を軽視しがちなのが、普通の不動産会社だと思います。我々はデータベースとツールを作っていて、今の時点での最適な条件を算出してご案内するようにしています。
(TERASSのツールによる住宅ローン選定提案書。融資条件は時期や人によって変わるため、銀行名は非公開としています。)
(江口亮介さん(左)、竹内幸雄さん(右))
竹内 ……といったことを踏まえて、おふたりの現在と希望をお伺いしていきますね。
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竹内 単純な数字でいえば、ふたりがそれぞれ住宅ローンを組めば、1億円以上のローンを組むことは可能です。そこから現実的な予算をどう決定するかは、できればFPの相談を通じて考えてもらいたいですが、今挙げている6000万円〜7000万円は無理している感じではなさそうです。
 現在のふたりの貯金から、家の購入に割ける予算はどれくらいありますか?
――400〜500万円くらいです。いわゆる頭金が少ないと、家の購入は避けたほうがいいですか?
竹内 昔は頭金が2割以上ないと、そもそも住宅ローンを借りれなかったんですよね。今は金利が非常に低く、ほかの金融商品と比べてもかなりいいので、頭金を大きく入れるメリットは相対的に低くなっています。親世代は「借金は少ないほうがいい」と言いますが、今の低金利だと、借りられるだけ借りたほうがいい、という判断になることも。ちなみに……カードローンなどはありますか?
――夫婦ともにローンはない……と思います。
竹内 ここからは独り言ですが、たまに、「パートナーにはいえないけど、実はカードローンがある」ということがあるんです……。その場合はパートナーがいないときにLINEででも教えてください! 車のローンなどはそこまで影響ないですが、カードローンはわりと響きます。たとえローンがあっても、ローンを組む3ヵ月くらい前に返せていたら、住宅ローンの審査に影響ないことが多いです。
 逆に直前に気づいて返しても遅く、条件が悪くなったり、審査に落ちてしまうことも……。早い段階で正直に話すことが夫婦のメリットになります。僕たちはこうやって、お客様に対して独り言を言うことがけっこうあります(笑)。

リセールを考えて家を買うべき?

――家を将来的に売却することを前提に購入したほうがいい、という話を聞きます。私達は、10〜15年は下北沢周辺で生活したいと思っていますが、その先はまだイメージができなくて。そういうときはどのように考えて購入するのがいいのでしょうか?
竹内 どういった形でも、「売る」ことは選択肢に入ります。建物が古くなって出ていくこともあるし、相続はしないから売却する、というケースもある。物件の購入って、消費ではなくて、投資の側面があるんですよね。投資として考えるなら、出口戦略を意識して買うことはとても大事です。
 たとえば旧耐震基準の建物は、消費として買うなら安いけど、投資として考えるとリセールが難しくなるかも……ということがありますね。流動性や資産価値で言ったら、マンションのほうが高い。マンションは47年かけて建物の価値が0に近づいていきますが、戸建ては22年でゼロになる。
 一方で、マンションは歴史自体が浅いので、「築100年のマンション」がどういう形になっていくのかをまだ誰も見ていない。築年数が一定数を超えたときに、どういった出口戦略があるのか、建て替えなどがあった場合はどういったことが起こるのかを、正確に予想しづらいところがあります。
 また、新築についても、中古物件をよく売る不動産営業は「マンションを新築で買うと価格の落ち幅が大きい」と説明しますが、いまマーケット全体が上がっているので、利益が出ることもある。ただ、どんな物件を買うにせよ、「売る」ことは考えておくといいと思います。10〜15年後に売却した場合の予想金額をシミュレーションすることもできますよ。
江口 家を買うことのデメリットは、流動性が低いこと。できるだけメリットが大きくなるように徹底するといいですね。
(TERASSのツールによる累計住宅費支払いシュミレーション)
――他に、考えておいたほうがいいトピックはあるでしょうか?
竹内 マンションの場合に必須になってくるのは、管理費・修繕費。月に安くても1万5000円ほどはかかるものです。こういったランニングコストによって、マンションは自分たちで管理しなくてよくて、修繕もしてくれます。ただ35年払うと、気がついたら数百万円。車を持っている場合は駐車場代が2〜3万円になるでしょうから、合計で1000万円を超える出費になります。こうした金額は、資産にはならない形で払うことになります。
 だから、考え方によっては、管理や修繕は自分たちで都度行うことにして、その分の金額を物件や土地に使える戸建てを選択する、ということもあります。車がマストの場合は、駐車スペースを確保できる戸建てを選んで、駐車場を借りないようにするという観点から、戸建てのほうがよくなるケースも。
 中古戸建の場合、どれくらいリフォームを必要とするかも検討が必要です。壁をキレイにするだけでいいのか、水回りや外壁にも手を入れたいのか。この辺りはどういったことを重視するかによって変わってくるポイントですし、物件の金額とリフォーム費用をあわせてローンを組むことになるケースがほとんどなので、予算の中に含まれます。
――だんだんイメージが具体的になってきました。本当に、予算が決まると強い軸になりますね。ちなみに、住宅ローン控除はどう考えればいいでしょうか。よく「年に○円戻ってくる」という言い方をしますよね。その金額を購入額から引いて見るようなイメージでしょうか?
竹内 新築のほうが控除が大きくなり、中古は控除の上限が低くなります。ただ、税金控除と、物件の購入金額は分けて考えたほうがいいですね。
 ネットで検索すれば、容易に試算ツールが出てくるのですが、例えば新築住宅を購入した場合、1年間で最大21万円戻ってくる。おおよそですが、1ヵ月分キャッシュフローがよくなる、というイメージです(※長期優良住宅等の住宅を除く)。払う金額は変わりません。
 家を買うと、税金が控除されて天引きされるお金が減るので、見た目上の手取りは増えるんですよね。たまに「なんか手取り増えたな」と飲みや趣味に使っちゃう人がいる(笑)。その分を計画的に貯金しておいて、住宅ローン控除が終わったタイミングに向けて備えておきましょう、とよくアドバイスしています。
――試算ツール、使ってみました。これはわかりやすいですね! 計画性が重要だとあらためて感じました。

物件情報だけじゃない、家の大事なポイント

竹内 ちなみにヒアリングによると、ハットリさんたちは将来的に犬を飼いたい気持ちがあるんですよね。そうなると、ご紹介できるマンションの件数はどうしても減ります。エリアと築年数にもよりますが、ペット可マンションは全体の10%もないことがほとんど。ペットが譲れない条件の場合、戸建て物件も検討するとよさそうです。
――やはり減りますよね。たまに、「こっそり飼えばバレませんよ」という担当さんもいて、「そんなワケあるのか?」といぶかしがっているんですが……
竹内 ダメダメ、ダメです! これは不動産営業関係なく、僕個人としても言わせてください。ご近所トラブルのリスクが大きすぎます。
 ペットにかかわらず、せっかく購入した物件が、隣人の方とのトラブルで手放さなければならない……ということは、金銭的にも精神的にも望ましくないことです。だから僕たちは、物件の調査を行っています。いわゆる「重要事項説明」だけでなく、近隣の方の情報も含めてです。マンションだったら、管理人や自治会の会長に聞き取りをして、地域のルールや、近隣住人の方の様子などを聞ける範囲で確認しています。
――そんなことまでしてくれるんですね!最低限できることとして、内見時にゴミ捨て場や自転車置場を見せてもらったりしていました。
竹内 それはすごくいいと思います!
 TERASSは個人エージェントが集まっているので、エージェントによって細かいオプションの提供が変わります。たとえば僕は、オプションで家の健康診断をやっています。中古の物件だと、表面はきれいでも、壁や床、配管などに不具合があるケースがある。不動産業者でもそれを見抜くのは正直難しくて、プロの検査員に入ってもらって検査してもらいます。
 あとは、引き渡し後のサポートも提供しています。住宅ローン控除などに関連する確定申告サポートや、家のメンテナンス企業の紹介なども行っています。
 次回はファイナンシャルプランナーと相談をしましょう! また内見では、実際に歩くと「資料上は駅徒歩10分だけど、階段と坂道がきついな」みたいなことがわかってきます。「自分たちには何が合っているのか」という見方をしていきましょう。戸建てとマンションどっちがいいのか、どれくらい広さが必要なのか……。その絞りを繰り返していくと、その中から自然に選べるようになりますよ。
――はい、次回もよろしくお願いします! 最後に……NewsPicksの読者を代表して質問させてください。家を購入する際、営業やエージェントがすごく重要なのではないか、と今感じています。「エージェントと合わない」と思った際に、どう判断し、決断すればいいのでしょうか?
江口 エージェントのポイントは、知識と経験です。経験があることで、お客様に沿った提案や説明ができます。ちょっとでも違和感があるようなら、それはそのエージェントに知識と経験が足りないということです。「詳しい、詳しくない」は実はそこまで大事ではないですよ。それよりも「なんだかノルマで勧めてそうだな」「向き合ってくれてないな」とよぎる違和感のほうが重要です。
 違和感なく話ができて、明確なステップを踏んで家を買う、までを構築できるのが、正しいエージェント。違和感があるときは、営業担当の変更や、不動産会社を変えることを申し出てもいいと僕たちは思います。