2023/5/12

【衝撃】世界で一番AIに優しい「日本の著作権」を読み解く

フリーライター
生成AIの世界で、日本がまれなプレゼンスを発揮している。
ユーザーたちの熱狂はもちろんのこと、ChatGPTを開発したOpenAIのサム・アルトマンCEOや、OpenAIに出資するマイクロソフトのブラッド・スミス副会長が相次いで、日本政府の幹部と面談するなど、国としてのAI歓迎のスタンスが注目されているのだ。
その理由はもちろん一つではないが、識者らが一致する重要な論点が一つある。
それが日本の著作権法だ。
日本の著作権法の規定は、情報解析のために必要であれば、AIなどがインターネット上のコンテンツなどを著作権者の許可なしに「学習」することを広く認めているのだ。
そんな状況は、「機械学習パラダイス」とも評される。
「学習」は生成AIの精度を高めるための肝となるプロセスだ。
だからこそ、日本の規制のおおらかさは、AIの開発・利用サイドには大きなアドバンテージになるポテンシャルを秘める。
一方で、絵師などのクリエイターからは不安の声も上がり始めた。また、AIを利用する企業サイドにとっても、著作権法違反のリスクと無縁ではない。
世界でもまれにみるこの規定を生かして、日本は「AI先進国」になることができるのだろうか──。識者らへの取材を通して、ひもとく。
INDEX
  • 「AI開発するなら日本へ」
  • 世界が驚く「超強力規定」
  • 声を挙げる「クリエイター」たち
  • 「学習」はOK、では「生成」は…?
  • 日本は「世界基準」になれるか

「AI開発するなら日本へ」

「日本は機械学習パラダイスです。皆さん、機械学習やAI開発をしたいのなら、ぜひ日本へ来てください」
早稲田大学法学学術院の上野達弘教授は2017年ごろから、海外の講演などでこう呼びかけてきた。
日本では、ビジネスに使う目的であったとしても、AIは著作権者に無断で文章や画像などのコンテンツを学び放題──。
これが、上野氏が「パラダイス」と表現する理由だ。