米地銀FRC破綻、過去2番目の規模 JPモルガンが買収
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SVBの破綻処理と類似のスキームとなりました。預金保険機構がファーストリパブリックの管財人として資産と負債を時価評価して損失を確定し、JPモルガンに106億ドルで売却します。JPモルガンは追加の損失が出た場合に130億ドル請求できる(瑕疵担保責任)権利を得ました。株主と社債権者は価値がゼロとなります。元々この銀行は住宅ローン専門のような銀行です。低金利が長く続くと想定して、長期固定金利の住宅ローンを積極的に貸し出しました。ところが、利上げで預金金利が上がり逆ザヤとなったことが致命傷となりました。SVBと同じでFRBの検査、格付け機関のレビュー、上場企業ですので監査法人の監査をSVB破綻まですり抜けました。SVB破綻後はB+にまで格下げされていました。瑕疵担保責任は300億ドルが見込まれていましたので、B+ほどには資産は傷んでいなかった可能性が高いことになります。
ふくおかFGとほぼ同じ資産規模のFRC破綻。破綻対応コストは130億ドル(約1.7兆円)
5月1日付けでカリフォルニア州金融保護革新局(DFPI)はカリフォルニア州金融法典第592条に基づいて米地銀ファースト・リパブリック・バンク(FRC)の資産を押収しました。
破綻時のファースト・リパブリック・バンクの資産は2,291億ドル(約30兆円)、預金は1,039億ドル(約13.5兆円)なので、ふくおかフィナンシャル・グループとほぼ同じ資産と考えると、影響の大きさがわかります。
同時に連邦預金保険公社(FDIC)を管財人に任命し、FDICによりJPモーガンチェイス銀行へファースト・リパブリック・バンクの資産のほとんどを売却した事がアナウンスされました。
破綻のみならず、JPモーガンチェイス銀行への売却も同時に発表した事を鑑み、事前のリーク情報通りに水面下で破綻への準備が進んでいた事が明らかになったのではないでしょうか。
FDICの発表によると商業及び住宅ローンに関する実損填補契約が売買契約と同時に締結されていると発表されており、金利上昇による影響が大きく出ているのがこの2つのローンである事が確認されました。
現時点でFDICが運営する預金保険基金が負担するFRC破綻のコストは130億ドル(約1.7兆円)という事です。SVBもFRCも、地銀としては特殊。いうなればスルガの時と似た感じか(あれは不祥事で全然違うが、特殊性という観点で)。
共通点は、カリフォルニア中心で近年の成長が著しく、大口預金が多く、運用が長期であること。差異点は、運用先がFRCは不動産向けの貸出、SVBはMBSだった。
SVBの破綻時に、Bank Term Funding Programを導入した(下記)が、これは債券を担保とするものであって、貸出は多分対象としていない(間違っていたらゴメンナサイ)。
First RepublicはBTFPも利用しつつ、JPMなどが300億ドルの協調融資を行った。ただ、それよりも預金流出のペースが早かったと考えられる。2022年12月末には1760億ドルあった預金は、SVB破綻を経て2023年3月末には1040億ドルに激減した。
融資は約1730億ドルあり、短期的には約300億ドルの満期保有債券(BTFPに担保として提供できる)と300億ドルの協調融資で600億ドルを集めても、それより流出ペースが早かった。
https://newspicks.com/news/8213361
これらの銀行は特殊。ただ特殊ではあるが、取り付け騒ぎは起こった。
またインフレを抑えるための短期金利の上昇で、債券価格の下落や、長期運用・貸出しは逆ザヤ。こういった要素が、普通の地銀形態だが財務が弱いところから広がっていくと怖い。なお、まだその蓋然性や具体名などは調べたりはしていないので、あくまでシナリオの一つでしかなく、またこれら2社は冒頭でも書いたように相当特殊ではある。また、SVB破綻で地銀は度合いの代償は違うが大きく下落したなかで、FRCの話が大きくなる中でざーっと大手どころを見た限りでは、同様に引っ張られるようには下落していない。
JPMは全米の預金の10%以上を有しているので、今回の買収には特別な承認が必要だった。そういった状況下であっても、結局買えるのはJPMだけだった、という印象。
下記がJPMのプレス。
https://bit.ly/3NstuWH