2023/5/2

【参加可能】気候変動の「オンラインスクール」が大人気

こんにちは、NewsPicks地球支局の岡ゆづはと、後藤直義です。
シリコンバレーで勃興する気候テクノロジーの主人公から、ディープテック分野の投資家たち、新しい社会像を描くオピニオンリーダーや作家たちまで。
自分たちで見たもの、聞いたものを、テキスト、音声、動画など、あらゆるフォーマットで「地球支局」として配信します。
まずはポッドキャストの新番組『Green Impact ー地球を救う、ヤバいビジネスー』(毎週月曜、木曜配信)をお聞きください。
本記事は、ポッドキャストと連動した新連載です。毎週、もっとも旬なグリーンビジネスをこのコンビでお届けします。
サンフランシスコ市内で開かれた気候テックイベントに参加する後藤、岡の両記者(写真:Naoyoshi Goto)

世界中に“同級生”ができる

今週は、シリコンバレーで2020年に誕生した、気候変動のオンラインスクール『テラドゥ』の創業者とカフェでおしゃべりをしてきました。
創業者CEOのアンシュマン・バプナ(Anshuman Bapna)さんは、インド出身の連続起業家です。
Terra.doの創業者CEO、アンシュマン・バプナさん(写真:Naoyoshi Goto)
オンラインの旅行サービスなどを作ったり、グーグルで働いた後、まったく知識ゼロの状態から、気候変動分野を仲間とともに学べる“ブートキャンプ方式”のサービスを作ったといいます。
実はこのサービスを知ったのは、思わぬことがきっかけでした。
わたしたちが仲良くしている気候変動分野のVCに、ジェットストリーム(Jetstream)という投資会社があります。
水資源を分析するサービスのウォータープラン(Waterplan)、衛星データから森林の炭素回収をモニターするパチャマ(Pachama)、炭素会計プラットフォームのサイナイテクノロジーズ(Sinai Technologies)。
いま注目のスタートアップに初期から投資するファンドですが、創業者のトミー・リープさんは、このテラドゥのご縁から、日本の出資者(LP)から投資を受けています。
テラドゥには、気候分野に興味を持つ投資家や起業家、エンジニア、ジャーナリストのコミュニティがあり、そのつてで新しいファンドが立ち上がった。
またメディアコンサルタントとして働く市川裕康さんは、このテラドゥを受講したことで、気候変動分野のメールマガジンを日本、米国で配信をしています。
いまでは3000人以上の卒業生ネットワークからは、すでに40社以上の気候変動スタートアップが新しく誕生しているといいます。
アンシュマンは、その魅力についてこう説明します。
「気候変動について、炭素回収から農業、政策まで、体系立って学べます。しかしもっとも価値があるのは、世界25カ国から集まってくる、仲間たちとつながって学べることです」
このネットワークが、素晴らしいわけです。

3カ月で、受講生は「こう変わる」

テラドゥの看板コース『気候変動:アクションするための学び』は、合計12週にわたります。
地球における炭素サイクルから、気候変動による影響、食品や農業、ファイナンスまで学びます。
集まってきた受講生たちは、20人ほどの受講生のグループに入ることで“同級生”になります。そこで課題資料を読みながら、毎週90分ほど、さまざまなディスカッションを行います。
そこでは、自分にどんな貢献ができるのか、ビジネスアイディアを持ち寄って、アクションにつなげるような宿題も出されるようです。
「セールスみたいで申し訳ないけど、気候変動を学ぶために、こんな素晴らしい教室はないと思うよ。卒業式で、泣いちゃうやつもいたからね」と、アンシュマンさんは語ります。
Terra.doのモバイルアプリでは、コンテンツ学習からネットワーキングまで(写真:アプリ画像より掲載)
ちなみに講師陣も、気候変動分野で活躍している投資家やアクティビスト、ジャーナリストなどが参加しています。
コース受講料の2000ドルが高いか安いかは、チャレンジする人の熱量によって大きく変わりそうです。
現在は、再生農業などを学ぶためのコース、ベンチャーキャピタリストのためのコース、気候変動テックに興味のあるエンジニア向けのコースなど、複数のコースがあります。
アンシュマンさんの話でひとつ面白かったのは、受講生がどのように変わるかという話。
シリコンバレーなどでは、最先端の「炭素回収ビジネス」などにお金が集まっているため、受講前はそうした人気分野に関心が集まるといいます。
しかし全体像を学ぶと、食品や農業をやりたいと話す人がとても多いといいます。まだ解決策が見つからない、重要分野と理解できるからなのでしょう。
気候変動メディアとして有名なマイ・クライメート・ジャーニー(My Climate Journey)傘下の投資ファンドも、このテラドゥ卒業生が責任者です。
グリーン分野の転職採用などの情報も活発に載せており、新しい経済の立ち上がりを支えるような、人材インフラとして面白いと感じました。
日本だと時差的にハードなスケジュールになるのが、目下のところ悩みになりそうです。
しかし日本でも気候変動ビジネスに興味がある人は、無料お試し教材などもあるので、チェックすることをおすすめします。

今週のグリーンニュース

1. 中国EVメーカーのBYD⚡🇨🇳が、王者フォルクスワーゲンを追い落とす🚗
中国のEVメーカーであるBYDが、2023年第1四半期(1-3月)の乗用車の販売台数で、初めてドイツのフォルクスワーゲンを抜き去り、中国市場のナンバーワンブランドになったとブルームバーグが報じています。
中国では新車販売の1/4がEVになり、この急激なシフトによって、日本メーカーのシェアも落ちています。
2. 日本が推す脱石炭ソリューション「アンモニア混焼」に、冷ややかな眼差し 💦
北海道ではG7(主要7カ国)の気候・エネルギー・環境大臣会合が開かれました。日本が脱炭素ソリューションとして推す、アンモニアを混焼させる石炭火力発電にG7各国は懐疑的です。
石炭火力発電によるCO2排出量を下げるアイディアですが、それが石炭火力などの延命策だとみなされているからです。
3. チリ政府が、リチウム事業の「国有化」を宣言 🔋
世界屈指のリチウム埋蔵量を誇っている南米のチリが、リチウム採掘などの事業を国有化すると宣言しました。リチウムイオン電池に欠かせないコア素材として、かねてリチウムは需要増から高騰。各国の「保護主義」も加速していきそうです。
4. スペインで過去最高の猛暑、4月なのに38.8度に 🌆
まだ春なのに、スペインでは熱波が押し寄せて、38.8度という過去最高気温を記録しました。これにより学校が学習時間を調整したり、公営プールは例年より1カ月早くオープンすると報じられています。
今週の地球支局からのレター🌏は、ここまでです。
リアルタイムでの配信や、メッセージなどのやりとりは、ぜひ後藤直義岡ゆづはまでお寄せください。 ポッドキャスト番組(毎週月曜日、木曜日)は、下記から。