(ブルームバーグ): スイスの銀行、クレディ・スイス・グループは1-3月(第1四半期)に612億スイス・フラン(約9兆2000億円)の資金流出に見舞われたほか、ウェルスマネジメント部門で多額の減損費用を計上した。同行買収で合意したUBSグループにとって、統合後の主要顧客や資産の維持に向けた課題が浮き彫りとなっている。

24日の発表によると、ウェルスマネジメント部門からの純流出額は471億フラン。13億フランの減損費用を計上したが、その大半は同部門の事業に関連したものだった。同部門と全行で、今年の業績が「大幅な」赤字になるとの見通しも示した。

追加投資を見送るとした筆頭株主の発言をきっかけに、3月の数日間に富裕層顧客や預金者がクレディ・スイスから大量に資金を引き揚げた。信頼の危機再来で同行の破綻を危惧したスイス政府は、UBSによる買収を仲介した。

クレディ・スイスによると、資金流出は緩やかになったものの、反転してはいない。また、スイス部門ではプライベート顧客事業を中心に約69億フランが流出、資産運用部門からも116億フランが引き揚げられた。

1-3月の税引き前損益は1280万フランの黒字。150億フラン相当のその他ティア1債(AT1債)を無価値としたことが黒字につながった。UBSによる買収合意の一環として講じられた今回の措置には異論が噴出し、多数の投資家が法的措置を検討している。AT1債による調整がなければ1-3月は13億フランの赤字だった。

スイス国立銀行(中央銀行)からの借り入れ残高は1-3月期末時点で1080億フラン。流動性支援のための貸し付けのうち、600億フランは返済した。4月にはさらに100億フランを返済したという。

クレディ・スイスの預金は6カ月間で半分以下となり、1-3月は670億フラン減少。中銀の流動性支援だけではUBSによる同行の救済買収回避は難しかった。

クレディ・スイスは昨年10月に直近の事業再編を開始したが、その後の資産流出とバンカーの退社で、UBSが引き継ぐウェルスマネジメント事業の現状には疑問符がつく。クレディ・スイスは24日、最近の展開で人員流出が増えたと明らかにした。

クレディ・スイスは2022年10-12月(第4四半期)に、財務健全性への懸念がソーシャルメディアでささやかれる中で顧客資産約1100億フランを失ったが、シティグループのアナリストは先週のリポートで、UBSとの合併後はさらに1100億フラン(約20%に相当)を失う公算が大きいと予測した。

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原題:Credit Suisse Saw $69 Billion of Outflows in Frantic Quarter (1)(抜粋)

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