2023/4/24

【国枝慎吾】私には、自分と相手以外に敵がいる

NewsPicks編集部
2023年1月22日、世界のスポーツシーンをけん引した一人のアスリートが現役引退を発表した。
パラリンピックで合計4個の金メダルを獲得し、4大大会では世界歴代最多50回の優勝を誇る、車いすテニスプレイヤーの国枝慎吾さんだ。
3月17日には、前人未到の功績を讃え、国民栄誉賞が授与された。
彼が母国開催の東京パラリンピックで優勝し、コート上で見せた涙には、知られざる理由がある。
絶対王者として臨んだリオパラリンピックでまさかの敗戦を喫し、世界ランク1位の座を奪われ、「すべて」を変えて挑戦したのが東京パラリンピックだった。
どうして、これほどまで勝利を積み重ねられたのか。なぜ、挫折からはい上がりチャンピオンに返り咲けたのか。
全3回のインタビューを通じ、パラスポーツの歴史を変えてきた国枝さんの人生をひも解いていく。
INDEX
  • 車いすテニスをスポーツにしたい
  • 勝ち続けるという重圧
  • 東京大会優勝、重圧からの解放

車いすテニスをスポーツにしたい

──27年の現役生活、おつかれさまでした。生涯グランドスラムを達成するなど活躍されましたが、何が原動力だったのでしょうか。
「金メダルを取りたい」「もっと強くなりたい」という思いは常に持っていましたが、「車いすテニスを福祉ではなくスポーツとして認知してもらう」ということへの執念が、一番の原動力だった気がします。
アテネパラリンピックでは、金メダルを獲得しても、なかなか新聞のスポーツ欄に掲載されませんでした。福祉として、社会的な意義のあるものとして扱われていたのです。
2006年には世界ランク1位になりましたが、「どうしてそこまで頑張るの?」と声をかけられたこともあります。