【新技術】レーザーが描く、害虫駆除の未来
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私はかつて英国、米国においてレーザーを用いた磁石の特性測定(レーザーの偏光状態を活用)、金属の熱処理(短時間で急加熱、急冷することで組織を肥大化させずに処理)を研究しており、帰国後もレーザーを用いた加工に従事していました。
本技術は大変興味深く、農薬使用量削減の観点からも前向きな議論の呼び水になりそうです。
この手の技術が出てくると必ず議論になるのが目に入った際の安全性に関するアイセーフティの問題です。
ここでこの技術がどのようにアイセーフティに対応できそうかを考察してみましょう。
この時に気にしなくてはならないのはレーザーに関する各種規定です。
レーザー製品の安全基準はJIS C 6802で規定されており、最も低いクラス1では「本質的に安全なレベル。特別な安全対策を行わなくてもよい。」とされています。
巷に出回っているレーザーポインタがこのカテゴリに属します。
今回の記事に出ているレーザーの出力を落としてクラス1にして使う、という選択肢もありますが、そうすると一発の攻撃力が弱まって蛾を退治することはできません。
1発でダメなら複数同時に照射してパワーを高めれば良いのでは?
と思われる方もいらっしゃると思います。
実はこれは有望な路線です。
レーザーの出力は国際規格IEC 60825-1にも記載があります。
ここで注目すべきは複数光源に関する条項なのですが、この条項では複数「波長」の放射に関する記述があるのみです。
仮に同じ波長の光源を2つ用いることも上記複数波長に含めるとすると、IECでは各々のクラスがどこに位置するかが問題であり、合算値は規定されていません。
各々がクラス1であれば、いくつ重ね合わせてもクラス1以外のカテゴリーにはならないことになります。
つまり、仮にこの技術が発展し、単発レーザーでアイセーフティの壁にぶつかったとしても、複数光源で蛾を撃ち落とすという選択肢は残されていることになるわけです。
レーザーの産業利用が進み、複数光源を重ね合わせた高出力化技術も進展しています。
また、移動体をセンシング、判別する技術は自動運転技術の転用が可能かもしれません。
複数光源の活用は技術的な難易度は上がりますし、今後IECの規制が変更されないとも限りません。
興味深い技術の社会実装に向け、色々な方が検討されている技術やアイディアの融合を期待します。まるでSF映画のよう──。大阪大学レーザー科学研究所は、レーザーで蛾を撃ち落とすことに成功しました。
本研究は、レーザーによる蛾の急所を見つけたという点において、大きな研究成果が挙げられました。
しかし、その急所は化学的なメカニズムがわかっておらず、これから明らかにしていくということ。
もしこのメカニズムが判明し、他の虫の急所も掴むことができれば、農業分野のみならず、ゴキブリや蜂など、私たちの日常に近い虫にも応用ができるようです。
また、農薬を使わない物理的な駆除のため、撃墜した虫は「昆虫食」として利用される可能性を秘めているようです。
そんな本研究の駆除装置には、画像認識、計算による予測追尾、レーザー照射などが用いられています。
様々な科学技術を駆使した「ディープ」な科学。ぜひお楽しみください。世界の農作物の約16%が害虫・害獣被害によって失われているとのこと。その額26兆円。これは大きなマーケットです。レーザー駆除は、農薬を使わないので、地球にもやさしい。
イナゴの大群が農作物を襲うシーンをよく目にしますが、将来的にレーザーで瞬時に全滅させられるとすればすごい威力です。