2023/3/30

【契約編】意外と知らないPDF「超」活用6テクニック

NewsPicks Brand Design Editor

「待ったなし」の契約業務のペーパーレス化

 2022年1月、改正電子帳簿保存法が施行された。2年間の猶予期間を経て、2024年には電子取引の電子保存が義務化される。
 これにより、メールやチャットで送られてきた請求書や契約書を、紙で保存することはできなくなる。つまりあと2年を待たず、実質的にすべての企業はペーパーレス化しなければならない。
 コロナ禍におけるワークスタイル変革も追い風になり、企業のペーパーレス化は順調に進んでいるかのように思えるが、実際はどうか。
 2022年1月にアドビが行った調査「営業業務のデジタル化状況」では、最もデジタル化が遅れている業務は「契約書などの社外との重要書類」。
 62.5%が契約書業務のペーパーレス化ができていないという結果になった。
 さまざまな電子契約サービスが市場でリリースされているにも関わらず、なぜ契約業務のペーパーレス化は進んでいないのか。
 アドビの島田氏は電子契約サービスの利用には「3つの障壁がある」と語る。
「まず立ちはだかるのが社内調整の壁です。
 例えば、営業部には営業業務のデジタル化を推進するDX推進担当者はいても、契約業務のデジタル化を推進するようなDX推進担当者がいないケースが多いです。
 これは契約行為(覚書、念書や出張申請といった社内承認などの簡易的な契約を含む)が、特定の部署だけで行われるわけではないため、役割と責任の所在がはっきりしないことが背景にあるかもしれません。
 従って、誰が先頭に立ち、誰とどのレベルで(部署レベル、全社レベルなど)社内調整を進めて行けば良いのかがわからなくなってしまうのです。
 次に環境構築の壁。電帳法やインボイス制度に対応できる電子契約サービスはどれなのか。契約業務に関連するワークフローとシステムをどう構築するのか。そこでつまずいてしまうケースも多く見られます。
 最後にコストの壁ですね。売上と直結するという印象が薄いため、ここにコストをかけることに経営者の方がメリットを感じにくいということもあります」(島田)

契約業務に欠かすことのできない「PDF」

 一見“守り”の戦略のように思える契約業務のデジタル化。しかし、売り上げの源泉となる人材に時間をもたらすという観点では、十分に“攻め”の戦略だと捉えることができる。
 例えば、低単価のB2B商材や高単価のB2C商材では、その取引において大量の顧客との契約が発生する。契約業務は営業及び関連部署の労働時間の少なくない割合を占めている。
 また、契約業務から生じるタイムラグによって商機を逃してしまうケースもあるだろう。
 契約のプロセスにおいて、契約書の最終版のデータはPDFであることが一般的だ。PDFは長期の保存性・閲覧性の観点から重要書類のフォーマットとして唯一のポジションを築いてきた。
 それならばPDFの閲覧・編集でよく使われる「Acrobat」に電子契約の機能を付加してしまえば──、それこそがアドビの提供する電子契約サービスが強化されたAdobe Acrobatの価値だ。
 Acrobat Proを使用していれば追加費用なしで利用できる機能で、今後の電子契約のスタンダードになることが期待される。
 PDFの開発元であるアドビは、PDFの閲覧・編集で日本ですでに広く使われる「Acrobat」の電子契約機能を通じて、これまで進んでいなかった契約業務のデジタル化ひいては企業の生産性向上を目論んでいる。

契約業務のPDF活用、6つのテクニック

 契約業務のプロセスは契約内容の検討・合意を行う「契約前」、押印を行う「契約」、契約書を保管・管理する「契約後」の3つに分けることができる。
 各プロセスで使える機能やそのメリットについて紹介していく。

「契約前」

 従来の紙での契約の場合、B2Bであれば契約交渉の段階ではMicrosoft Wordなどの雛形を元に、校閲機能などを活用しながら契約内容を詰めていくことになる。
 社内では法務部等の関連部署から契約の文面のレビューを受けて、最終版の契約書を作成していく。
「Wordで契約の文面を固めた後は、PDF化して最終承認を行うのが一般的です。
しかし、その承認段階で修正の指示が入ると、再びエディターソフトのフォーマットに変換して、それからまたPDF化するという手間が発生してしまいます。
そういったケースでは、Adobe AcrobatでPDFを直接編集いただくのが良いでしょう。
クラウド上でPDFを関係者に共有し、レビューの依頼もできます。
PDFはクラウドに存在するため、関係者はブラウザ上で共有されたPDFを校閲して修正希望点のコメントを送ることができ、リアルタイムに他者からのコメントの返信もできます」

「契約締結」

 紙での契約締結の場合、社内の承認フローに合わせて、契約書が実際に社内を巡っていくことになる。課長が終われば部長、部長が終われば社長、というように回覧がなされ、
 最終的に物理的に判子が押される。担当者はその契約書を封入し、相手先へ郵送する。
 このプロセスが最も紙の契約業務の無駄として印象が強いだろう。コロナ禍では「判子 のための出社」が各社で問題となり、議論の的になった。
「レビューを経て契約書の内容が問題ないとなったら、次は社内承認です。
Adobe Acrobatでは、署名依頼者は最終承認されたPDFの閲覧画面からアプリケーションを移動せずにすぐに簡単に署名依頼ができます。
また、署名者は他の電子契約サービスと同じように簡単に電子的に押印ができます。
紙での契約でも秘書などの代理人が押印することがあると思うのですが、Adobe Acrobatでも同じように委任が可能です。もちろん契約先にも同じように押印の依頼を送ることができます」

「契約後」

 契約完了後は、契約書を保管・管理することになる。紙で書類を保管していると、紛失のリスクがあるだけでなく、必要なときに必要な書類を探すのにも時間がかかる。
 昔ながらのグレーの鍵付きキャビネットや保管庫は、これまでオフィスの少なくないスペースを占めていた。
「バックアップさえとれば、データでの保存は紛失のリスクを減らすことがきます。またPDFは長期で閲覧性を保つことができるフォーマットですので、その点でも安心なのではないでしょうか。
また普段お使いの業務システムと連携することもおすすめしています。押印されると自動で業務システム内の特定のフォルダに保存されるように設定すれば、担当者の作業をさらに軽減することができます」
 ある金融サービス企業では、これまでFAXと郵送で対応していた販売店との融資手続きにアドビの電子契約サービスと同時にAI-OCRやRPAも導入して電子化・自動化を実施した。
 契約のリードタイムは1週間から1.5日に短縮。融資受付の全行程で月33時間の工数削減になった。
 また別の銀行では2~3週間要していた契約締結までの期間が、最短で 1時間 程度に短縮されたという。
 いずれも従業員、顧客、取引先の負担を減らしながら、満足度を向上させている。
「例えば銀行の場合、口座開設をはじめとする諸所の取引で契約業務が発生します。大量のお客様に対して毎回、契約書を封入していたのが、電子契約にすることで大幅な工数の削減につながります。
 また電子契約にすることで、記入場所を間違えてまた書類を送り直すといった二度手間もなくなります。
 コスト削減、従業員の働き方改善のほか、ビジネスのスピードも上がり、結果的に売り上げにもつながっていくのではないでしょうか」

デジタル時代の“紙”がビジネスを加速させる

 PDFとは「Portable Document Format」の略称。あらゆる環境で長きにわたり閲覧できるというシンプルかつ唯一の特徴は、デジタル時代の“紙”と言うのにふさわしい。
 そしてそこにAdobe Acrobatが編集、レビュー、そして電子契約などあらゆる機能をもたらすことで、PDFはあらゆるシーンでペーパーレスを実現させる。
「Adobe Acrobatは文書に関するあらゆる業務のデジタル化をサポートするツールです。PDFというフォーマットへの信頼性に加え、アドビはエンタープライズレベルのセキュリティと、コンプライアンスを遵守したシステム及びデータ保護を、グローバル基準で実現しています。
 紙で行われている業務のペーパーレス化や契約業務の電子化を検討している企業のご担当者様は、安心してAdobe Acrobatをお使いいただければと思います」