【激烈】BYD新工場を巡る、東南アジア誘致合戦の行方
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ギガファクトリー(以下、GF)が建設されてきた立地を振り返ってみると、実は希少資源が存在する地域ではありません。
ネバダ州の世界初GFはテスラのEV工場に併設するために立地しており、つまり電池を大量に買い取ってくれる顧客や需要先というのが1つ。次にバッテリー・ファウンドリを標榜するNorthvoltは、水力発電という再エネ電源を調達できるスウェーデン北部にGFを立地しました。こちらは需要先からは遠く、欧州のメインランドに新たにGFを建設してます。
よくバッテリーは地産地消(での生産)と言われますが、これは希少資源が採れる土地で電池を生産することも意味しているものの、実態は電池が消費される需要先の土地で電池を生産することを指しています。
日本国内の電池メーカーがGFを国内に建設しない理由は両方ですが、特に後者の需要先が日本国内に無い為、大規模な投資に踏み切れませんでしたが、最近では国内限定でGSユアサとホンダがBEV向けバッテリー製造JVを設立したり、AESCも国内生産の準備を進めています。
ということで希少資源を狙ってGFを建設することは殆ど有りませんが、インドネシアのNiは争奪戦の様相を呈していたので、そのように映るのでしょう。しかし負極材料のカーボンも同じようなことを言われていましたが、天然黒鉛が採れる地域でバッテリーを製造しているところは有りません。生産拠点の決定に際しては、「自国に一定以上の自動車市場があること」が重要である。輸出も大事だが、国内市場の安定的基盤が必要だからだ。
ASEAN各国は自動車についてもFTAを結んではいるが、非関税障壁が存在しており、自国市場が小さい国に製造拠点を設けるメリットは少ない。
その点で有利なのは国内市場が大きいインドネシア(国内市場:89万台)とタイ(同:76万台)だ。そして、その多くは日本メーカーのクルマである。
※数字は2021年
インドネシア、タイともに日本メーカーが多くの製造拠点を持っており、インドネシアはミニバン、タイはピックアップトラックの自国内販売に「極端な優遇税制」を引くことで、メーカーの現地生産をバックアップしてきた。ASEAN各国の自動車生産台数は下記の通りである。国内市場の規模ではインドネシアが1位だが、輸出分も含めた生産台数ではタイが1位になっている。
<生産台数>
①タイ:169万台
②インドネシア:112万台
③マレーシア:48万台
④ベトナム:30万台
⑤フィリピン:8万台
※数字は2021年
東南アジア各国にとって自動車産業は極めて重要な産業である。そしてEV時代の到来を見越して、既に様々な「EV優遇策」を導入している。
特にインドネシアは蓄電池の材料であるニッケルの産地であり、蓄電池工場の誘致も含めて、生産台数でもASEANナンバー1の地位をタイから奪いたいと考えているはずだ。タイもそれに対抗してEV工場の誘致に必死である。それにいち早く応じたのが中国メーカーである。
日本メーカーのEV発売が遅れている中で、両国ともに中国、韓国のEV工場の誘致を積極的に行っている。
日本メーカーは今後巻き返しにでるだろうが、現在のASEANにおける日本メーカーのシェアは圧倒的(約8割)である。EVが増加する中でこの数字を維持するのは簡単ではないだろう。今も昔も、大企業の工場誘致は労働力確保や技術進展に欠かせないものですが、東南アジアでは熾烈なBYD誘致合戦が繰り広げられています。
マルコス大統領は2月に来日し、トップセールスで日本企業の誘致にも熱心な活動を見せましたが、BYDがどのような結論を出すのか注目したいと思います。