2023/2/28

【地域発】ビジネスの「境界線」の引き直しが、唯一無二の強みになる

NewsPicks Brand Design Senior Editor
 今、日本のエネルギー企業は大きな地殻変動のただ中にいる。
 そもそも日本はエネルギー自給率が低く、12%程度しかない。加えてその主要エネルギーを支える原油・石炭・天然ガスといった、化石燃料の海外依存度は95%を超えているうえ 、地政学的リスクや為替リスクを受けやすい。
 さらに、脱炭素の流れにより、化石燃料由来のエネルギー供給を減らしつつ、再生可能エネルギーなどを開発していく必要がある。
出典:IEA「World Energy Balances 2020」の2019年推計値、日本のみ資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」の2019年度確報値。※表内の順位はOECD36カ国中の順位
 そのなかで「天然ガス」は、石炭や石油にくらべて燃焼時のCO2排出量が少なく、環境性の高いエネルギーとして期待されている。
 さらに、将来的にはe-methane(非化石エネルギー源を原料として製造された合成メタン)など、脱炭素化を進める技術をさらに導入すれば、カーボンニュートラル化に貢献できるという。
 一方で、楽観視できない状況もある。
 日本では、人口減少による需要の減少の可能性があるだけでなく、2016年の電力小売自由化、2017年の都市ガス小売自由化により、消費者が自由にエネルギーを選択できるようになった。
 これによって、「ガス」と「パワー」の垣根がなくなり、業界再編が加速する可能性がある。
 事実、電力・ガスの自由化以降、エネルギー事業者に加えて様々な業種の事業者が参入している。
 海外への高依存度、人口減少による需要減少、競争の激化。都市ガス会社は今後の事業成長を左右する分水嶺に立っているのだ。
 特にこうした課題に真っ先に対応が求められているのが「地域」の都市ガス会社だ。
 前述した人口減少や高齢化は都市部よりも顕著であり、地域の都市ガス会社を悩ませている。今まさに打ち手を模索しているのだ。
 その課題に対して、風穴を開けんとするのが国内最大手のエネルギー開発企業で、地域の都市ガス会社への卸売を行うINPEXと、「コンヴィヴィアリティ(自律協生)」という視点から、地域を活性化させるビジネスコンサルティングを行う日本総研だ。
 INPEXが主体、日本総研がアドバイザーという形で、地域の都市ガス会社が外部環境の変化にかかわらず、自律的にビジネスを推進できる状況を作り出していく。
 そして、地域の都市ガス会社がその地域の期待や思いに応えていく活動を支援するため、2019年に「INPEX 4U Challenge Lab(以下、Challenge Lab)」をスタートさせた。
 Challenge Labでは、環境変化に対処していくための課題に対する解決策を発見すべく、インターンシップやワークショップなど、これまで地域の都市ガス会社と共に様々な仮説検証を行ってきた。
 その仮説検証のなかで、地域の都市ガス会社が時間をかけながらも自律して、地域全体が「コンヴィヴィアリティ」な状態をつくりだすのが狙いだ。
 なぜ、INPEXと日本総研は、直接的に利益を生みだすわけではない施策を行い、都市ガス会社や地域をバックアップするのか。INPEXの鈴木一敏氏日本総研の佐々木努氏に聞いた。
INDEX
  • 地域の都市ガス会社の現状
  • エネルギー事業と別の事業をマッチング
  • 地域と自律協生するニュータイプのガス会社

地域の都市ガス会社の現状

──まずは、日本のガス会社が抱える、現状の課題を教えてください。
鈴木 まず重大な課題の一つに挙げられるのが「エネルギー自給率の低さ」です。
 日本のエネルギー自給率は、東日本大震災以降大半の原発が停止、または廃炉措置となっていることもあって、この10年は10%前後を推移しています。他のOECD諸国と比べても、かなり低い水準です。
 そのため、震災以降は原子力以外の他のエネルギーの需要が高まり、なかでも特に天然ガスの需要が高まっています。
 一方で天然ガスの場合、当社は国産ガスも供給していますが、日本は大半を海外からの輸入でまかなっている状況。特に日本は都市ガスの原料であるLNGを輸入していますが、97%以上を海外に依存しています(2020年「財務省貿易統計」より)。
 したがって、日本でガスの事業を営むには、海外からの原料の輸入が大前提となる。輸入比率が高いということは、世界情勢や地政学的なリスク、あるいは為替の影響をダイレクトに受けます。
 もちろん各社とも輸入先を分散化するなど、地道な努力はしているのですが、外部環境によるリスクがあるのは、避けられない大きな課題ですよね。
佐々木 あと、都市ガスやLPガス(プロパンガス)の事業者は「オール電化」「電化住宅」という強力なライバルにずっと向き合ってきた点も、補足しておきたいですね。
 2000年代前半から、効率のいい電気式給湯器やIHクッキングヒーターが市場に出てきて、オール電化が始まりました。
これによって、暖房だけでなく調理や給湯の用途でも、ガスがなくても暮らしていけるようになった。
 都市ガス会社は、ハウスメーカーが家を建てる前から営業をかけていくわけですが、もしその家がオール電化になれば、今後ガスが使われなくなってしまう。
 つまり、電気の場合は、ガスを使おうが使うまいが電灯や家電に使うために必ず繋げますが、ガスの場合は家を建てる前にオール電化の判断をされてしまうと、以降、都市ガス会社が入り込む余地はなくなる。
 そうなれば、勝ち目はありません。ですから、都市ガス会社はガス需要を開発するための営業に経営資源を大きく投下するわけです。
 ところが、ガス小売の自由化で、せっかく自らが開発したガス需要を他社に奪われる可能性が生じてしまった。
 他の企業に顧客を奪われてしまうと、投下した費用を回収できなくなる。都市ガスというインフラの維持も難しくなるかもしれない。
 自由競争は生活者に選択肢を与えてくれるのも事実ですが、解決しがたい歪な問題を生み出すという側面もあるのです。
鈴木 さらに近年は、カーボンニュートラルという難題もあります。
iStock / Francesco Scatena
 以前であれば、天然ガスは石油や石炭ほどCO2を排出しないため、“悪者”扱いはされませんでした。
 しかし昨今はその状況が一変しつつあります。都市ガスの主成分であるメタンは、燃やせば温室効果ガスが排出されるため、e-methaneや水素をはじめとしたクリーンなエネルギーの可能性を考えなければなりません。
 では、それをどう実現させていくのか。
 INPEXでは「INPEX Vision@2022」において、2050年ネットゼロカーボン社会に向けた基本方針を策定しており、石油・天然ガス事業についてはコア領域としながらも徹底的なクリーン化を目指しています。
 上記に加えて「水素・アンモニア事業の展開」「再生可能エネルギーの強化と重点化」など、ネットゼロ(温室効果ガスを差し引きゼロにすること)を可能にする5分野に関する事業を推進し、2050年のネットゼロ達成を目指しています。
 一方で、ネットゼロカーボン社会の実現にあたり、エネルギーコストは今の水準を維持できるのか。現在と同規模の量を供給できるのか。そうした課題もあります。
──都市ガスを取り巻く状況はかなり厳しいですね……。
鈴木 そもそも日本全体の課題として、人口減少や高齢化が顕著になっているので、何もしなければどんどん衰退していきます。
 とりわけ「地域の都市ガス会社」にとっては、そうしたエリアのインフラを守ることがミッションではあるけれど、地域のためではあっても本業以外の利益になりにくい取り組みはどう展開していくのかといった問題にも、直面しているわけです。
佐々木 都市圏にある大手の都市ガス会社であれば、海外などの成長余地があるエリアに進出したり、新規事業にリソースを注げます。
 対して地域の都市ガス会社では、大手の都市ガス会社に比べて経営規模が小さいので、少ない要員で効率的に事業を回しているというのが実態です。
 ですので、足元の競争への対処に注力しなければならず、将来の課題への対応や新規事業の立ち上げはどうしても後回しになりがちです。
「分かってはいるけど、対応する余力に乏しい」というのが地域の都市ガス会社の現況だと捉えています。

エネルギー事業と別の事業をマッチング

鈴木 では、どうすればこの状況に風穴を開け、ゲームチェンジをもたらせられるか。
 そうして始まった取り組みが、「INPEX 4U Challenge Lab(以下、Challenge Lab)」です。
 目的は、ガスの卸元であるINPEXと、卸先の都市ガス会社が協力して、地域の期待に応えながら、地域と一緒に成長すること。
 都市ガス会社がこれまで行ってきたガス供給の他に、どんな事業を行えば地域を盛り上げ、自社の魅力や価値を高められるのか。それを探り、都市ガス会社と共に実践・実装していく実験的プログラムになります。
──Challenge Labを進めるにあたり、日本総研とタッグを組んだきっかけを教えてください。
鈴木 きっかけは、当社が2018年に策定した国内の中長期成長戦略でした。
 外部環境の変化等も考慮したシナリオプランニングを行い、当社の成長戦略を描いたのですが、それは非常に難しいものでした。
 少子高齢化・人口減少による地域社会・産業構造の変化、再エネ拡大・脱炭素化・分散化によるエネルギー供給構造の変化、電力・ガスシステム改革の進展など、考えるべき課題が多岐にわたっていた。
 その結果、自社だけで環境分析を行うには限度があると考え、コンサルティング会社にサポートしていただこうと。
 数あるコンサルティング会社の中で、とりわけ当社の思いを汲み取って提案してくださったのが、環境・エネルギー分野に精通する日本総研の佐々木さんだったんです。
 実は他社さんからは「外部環境分析だけでなく戦略策定もこちらで一括して請け負うので、お任せしていただいて大丈夫です」といった提案もいただいたんです。
 ただ、INPEXとしてはこの取り組みに主体的に関わるべきだと考えていました。
 佐々木さんからは「ぜひINPEXと一緒に二人三脚で悩み、考え、成長戦略の策定をサポートしていきたい」との提案をいただき、まさに求めていたのはこれだと、お願いすることになったんです。
 日本総研さんのサポートを得ながら中長期成長戦略を描く中で、一つの打ち手として出てきたのが、「INPEXの卸先(都市ガス会社)が地域の期待や思いに応えていく活動を支援するプラットフォームを作る」というアイディアでした。
 そこからChallenge Labが始まりました。
──Challenge Labでは、実際にどんな取り組みを行っていますか?
鈴木 都市ガス会社さんが新しい事業を立ち上げていくために、これまでに異業種の事業者も招いたりして、勉強会やビジネスマッチングを行ってきました。
 そこから新規事業のアイディアが生まれ、都市ガス会社と一緒に実証実験、および実装を進めています。
 たとえば、ある都市ガス会社はショールームでの「防災イベント」を実施しました。これまで、ガス会社が行うイベントとなると、商取引のために実施する「ガス展」が主流でした。
 そうではなくて、顧客と信頼関係を構築できる催事として、公益性と都市ガス会社との親和性、ユーザーニーズの観点から防災イベントを展開したんです。
 防災に関心のない顧客層にも防災イベントに興味を持ってもらえるように、防災をテーマにした運動会で子どもたちの参加を促したり、「チャンバラ合戦」や「謎解き」などのお楽しみイベントで防災に触れる機会を作ったり、工夫を施しました。
 キッチンカーの出店や、調理実演、試食会、VRアトラクションなどの様々なコンテンツも用意しました。
 また防災に関心がある層に対しては、ワークショップやアトラクション、防災グッズの販売、さらには防災に強いガス機器等のPRなどを実施。
 結果的に、初めてショールームに訪れた人が半数を超え、これまであまり接点を持つことができなかった小さな子どもを持つ家族層とも繋がれたんですね。
 Challenge Labは「将来の顧客となる地域の若い世代と繋がりを持つ」のがテーマの一つで、こうした目論見を実現できる実証を行えたという点で、得がたい意義があったと捉えています。
 また、都市ガス会社と一緒に課題を整理する中で、特に多くの方から挙がったのが、「地域に貢献する取り組みを進めていきたい」という声でした。
 成長を続けていくためにはエネルギー供給以外のビジネスを推進する必要があるけれど、いずれにしても地域の支えがなければ成長はできない。
 自分たちは、この先も地域のガス会社として生きていく必要がある。だからこそ、地域に価値を生み出していきたい、そのような思いから「地域貢献」への関心が高いのだと考えます。
佐々木 今実際に進めているのは「地域の魅力をどう発信するか」というテーマです。
──「地域の魅力発信」ですか。なぜ、それをChallenge Labがやるのでしょうか?
佐々木 どの都市ガス会社も、自分たちの立地するエリアが注目され、人が集まってくるようにしたいと思っています。
 そうすることで地域が活性化し、ガス事業の売上にも繋がっていきますから。
 そこで、地元の高校生の力を借り、地域の魅力を発見して、面白く、楽しく発信してもらうアイディアが出ています。
 もちろん“魔法の杖”のようにすべてを解決してくれるものではありませんが、これまで縁遠かった都市ガス会社と高校生が、取り組みを通じて繋がり、何か活動を共にすること自体に意味があると思うんです。
 その出会いが、次の何か別の活動に繋がっていくといいなと。
 たとえば、以前、Challenge Labの勉強会の中で、自治体が抱える空き家を、地域の方々にも参加いただきながらDIYでリノベーションし、共同のキッチンを設置して、みんなが集まれるサロンのような場所を作ってはどうか、というアイディアを出したことがありました。
 当時は、特に関心が得られなかったのですが、今のChallenge Labであれば、違った反応になるだろうなと思います。
 実際、ある都市ガス会社では、そうした構想を温めて、前に進めようとしているらしいのです。
 地域の方との交流もそうですが、都市ガス事業からの派生で手掛けるリノベーション事業の認知向上にも寄与するはず。
 そうした、これまで都市ガス事業者が手掛けてこなかった新しい取り組みを通じて今まで繋がれなかった人と知り合い、ファンになってもらえたり、信頼につながるかもしれません。
 先ほど申し上げた競争に打ち勝つためには、泥臭く、地道な活動かもしれませんが、地域や地域に住まう方と良い関係を築いていくのが重要ではないかと思うのです。
──そうした取り組みを進めながら、ラボでは最終的にどこにゴールに置いていますか?
鈴木  Challenge Labで取り扱うテーマは3つあります。
 1つは先ほども述べさせていただいたとおり、将来顧客である地域の若い世代と繋がりを持つこと。
 2つ目が、地域の皆さんにガス会社の存在をより一層認識してもらうこと。
 そして、3つ目がChallenge Labの活動をとおして得た様々なデータを活用して取り扱い商材を拡大することです。
 このテーマを軸に、「エネルギー供給事業やその付帯事業の高度化」「沿線の活性化」を図っていきます。
 特に「沿線の活性化」については、都市ガス会社の事業基盤となる、ガスの沿線地域の活性化に向けて、民間事業者や行政と様々な取組の共同展開を目論んでいます。
 Challenge Labの取り組みはこの先も続けていくのですが、最終的にはこの活動をとおして、各都市ガス会社さん自身が、もっと新規事業を展開しやすくなる環境が醸成されていくと嬉しいですね。
 Challenge Labは、あくまでもそこへと飛び立つための“滑走路”と捉えています。
佐々木 偉そうな言い方になってしまいますが、Challenge Labに関わる方々が、すごく成長できているのが本当に嬉しいんですよね。
みんな、課題を自分事化して、協力しあいながら、自律しようとしている。まさに今回の連載のテーマである「コンヴィヴィアリティ」な状況になりつつある。
 それは私たち日本総研のメンバーも、INPEXのメンバーもそうだし、何といっても都市ガス会社の方々も、ずいぶん変わったのではないかなと。
 数社の都市ガス会社が協働しての企画検討も、今では行われつつある。この点だけ見ても、ものすごく前進しているんです。
 鈴木さんもおっしゃるとおり、INPEXと当社の存在感が徐々に薄れ、自走する都市ガス会社の後ろを付いていくのが、目指すべき理想なのかなと思います。

地域と自律協生するニュータイプのガス会社

──それにしても、なぜINPEXと日本総研は、地域の都市ガス会社に対して、直接利益を生み出すのが難しい取り組みに注力するのでしょう?
鈴木 当社はガスを卸していますので、地域の都市ガス会社が盛り上がれば、当社にもベネフィットが生まれるという認識が前提にあります。
 また、 Challenge Labを通して実証された仕組みや考え方を、当社の事業に応用させていただく機会もあるでしょう。
 いずれにしても決して短期目線ではなく、長期目線でのベネフィットを見据えています。
 当社の経営メンバーにも「なかなかすぐ数字が表れるものではないので、長い目で見て期待してください」と、都度話をしていますね。
佐々木 我々も同様の視座を持っています。「日本を総合的に研究する」という社名の企業ですから、長期な時間軸で国をより良くしていく取り組みに携わらない選択肢はないと考えています。
 私はそうした取り組みは会社から何を言われようとも、やるべき取り組みだと考えています。
 単体で収益が上がらないなら、他で収益化しやすい案件もつくりバランスを図って進めていく。そういった選択ができるのが当社の存在価値ですし、おそらく会社側もそうしたチャレンジを“良し”と考えている。
 私自身も部をまとめる立場として、社員やそこに住む人々が「コンヴィヴィアリティ」な状態になる取り組みは、バックアップしたい。
──短期的ではなく、長期的視点が重要なわけですね。Challenge Labが成功した先には、都市ガス会社と地域に、どんな未来が待っていると考えますか?
鈴木 当社のガスの卸先は、約30社あります。それらの会社が多く集まって協働できたら、一層面白い挑戦ができるし、沿線全体の盛り上がりにも繋がる。
 そのために各都市ガス会社さんにはChallenge Labを存分に活用していただき、横の繋がりを持って、課題を共有していけば、よりスケールが大きな取り組みができるはず。
 その取り組みをとおして課題を解決していけば、各社の成長の枠組みの拡大にも繋がると信じています。
 そうなれば、最終的にはChallenge Labがなくても都市ガス会社と地域が持続的に発展していきやすくなると考えます。
 これは、まさにコンヴィヴィアリティ、つまり自律協生の実現ではないでしょうか。そんな未来に向けて、まずは足元の取り組みを一つ一つ大事に向き合っていきたいです。
佐々木 そこからさらに先へ進め、自治体や農協、鉄道会社などとも繋がっていけたら、良いですよね。
 業種は違えど、彼らも同じ地域でビジネスを手掛け、同じ悩みを抱えているはずですから。
 Challenge Labでやろうとしているのは、言うなれば地域の都市ガス会社の「線」を引き直すことなんです。
──「線」ですか?
佐々木 ええ。つまり、都市ガス会社にかかわらずですが、多くの企業や自治体は「ここまでは我々のやるべき仕事」と“線“を引いている。
 でも、それだけでは地域のビジネスや生活を支えられなくなってきた。だからこそ自らが主体的に「ここまでならうちでもできるし、取り組めばもっと社会が良くなるよね」と線を再定義する。
 結果、これまでは自治体がやっていた仕事の一部が、都市ガス会社の領域にしみ出てくる可能性もあるでしょうし、逆も然りです。
 そうやって従来の都市ガス会社からはみ出た業務を行い、地域のペインを解決するのであれば、そのエリアにとって唯一無二の存在になる。
 そうなれば、もし他のエネルギー事業者が「オール電化だ!」と参入してきても、地域の住民側から「ウチの都市ガス会社さんがなくなっては困る」とブレーキがかかる。
 そうして、良い意味で地域が都市ガス会社に依存し、同時に都市ガス会社も地域に依存する関係が、地域の都市ガス会社を取り巻く「コンヴィヴィアリティ」つまりは「自律協生」の形なのかなと。
鈴木 しかもそれって、他の地域でも応用できる形ですよね。
 この仕組みをダイナミックに横展開し、各主体者が自律協生の形をあらゆる地域に根づかせる、Challenge Labの取り組みがその一助となれたら素晴らしいですね。