(ブルームバーグ): ソフトバンクの宮川潤一社長は3日の決算説明会で、政府の要望を受けて経済界全体で賃上げの機運が高まっていることを受け、同社として基本給の底上げ(ベースアップ)で「5.4%昇給することで最終調整している」ことを明らかにした。

宮川社長は会見で、企業は「株主のためにあるが、従業員のためでもある」と述べ、「ベアのことは重く受け止めている」と発言。一方、新料金プラン導入の影響でスマートフォンを含む主力のコンシューマ事業の低調が続くなど「こんな成績の環境の中で簡単にやると二つ返事するには悩む」とも語り、外注費を中心にコスト削減を強化する姿勢を明確にした。

岸田文雄首相が経済界に対しインフレ率を超える賃上げを要請し、労働組合の全国組織「連合」も春闘で5%程度の賃上げを求める方針。上場企業の間では最近、昇給に応じる考えが相次ぎ表明されている。

コンシューマ事業での通信料値下げによる減益の影響は今期(2023年3月期)は900億円と前期の770億円から拡大し、来期(24年3月期)は500億円に縮小する見込み。宮川社長は「3年間の氷河期の終わりが見えてきた」と話し、コスト削減も進めながら同事業を来期V字回復させることに意欲を見せた。

ソフトバンクが3日に発表した22年10ー12月期(第3四半期)の営業利益は、前年同期比2倍の4952億円。決済アプリ子会社ペイペイの企業価値の再測定益を計上したことが大きく寄与し、企業のデジタル化需要を取り込む法人事業も堅調だった。

半面、コンシューマ事業のセグメント利益は25%減の1156億円。人材採用の強化など成長投資の費用が先行しているヤフー・LINE事業も20%減の417億円と低調だった。

ソフトバンク、第3四半期営業利益が倍増-ペイペイの再測定益で (1)

宮川社長は、2日にグループ会社のZホールディングスが事業会社のヤフー、LINEとの統合方針を発表したことについて「方向性は正しい」と評価し、1月にZHDの経営陣から統合方針を相談された際、即答で賛成したという。

21年3月にLINEがZHDの傘下に入り、新生ZHDは川辺健太郎氏と出沢剛氏が共同最高経営責任者を務める2頭体制で進んできたが、なかなか新しいプロダクトが生まれず、「われわれの期待感と違った」と宮川社長は指摘。今後は出沢氏が社長兼単独の最高経営責任者(CEO)に就くことに言及し、統合の目的は経営の「スピードアップだ」と語った。

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