(ブルームバーグ): 日本銀行が保有する国債の評価損は昨年末時点で約8.8兆円となり、9月末から拡大した。12月に実施したイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策の運用見直し後、10年物国債を中心に金利が上昇したことが影響した。黒田東彦総裁が3日の衆院予算委員会で明らかにした。

黒田総裁は、簿価が564兆1000億円、時価は555兆3000億円と説明した。日銀は保有国債の評価方法として償却原価法を採用しており、「評価損が発生しても、期間損益には影響しない」と語った。

日銀の決算によると、保有国債は昨年9月末に8749億円の評価損となり、2013年4月の異次元緩和導入以降で初の含み損が発生した。同3月末は4兆3734億円の評価益だった。

共通担保オペ

日銀は12月会合で、低下した債券市場の機能度の改善を狙いに長期金利(10年国債利回り)の許容変動幅を従来の上下0.25%から0.5%に拡大する金融緩和策の修正を決めた。1月18日の会合では金融政策を維持するとともに共通担保資金供給オペの拡充を決定したが、その後もイールドカーブのゆがみが残るなど市場機能の改善は遅れている。

黒田総裁は共担オペの拡充は「現物市場以外の市場も含めて金利の低下を促す仕組み」と説明した。指し値オペを含めた国債買い入れと組み合わせることで「金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促していくことができるのではないかと考えている」と語った。

政府と日銀は13年1月に合意した共同声明に沿って必要な政策を実施してきたとも指摘。マクロ経済政策運営で政府と中央銀行が十分な意思疎通を図ることは極めて重要だとし、「今後も政府と緊密な連携を図りながら、日本銀行としての責任をしっかりと果たしていきたい」と語った。

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(最終段落に黒田総裁の発言を追加して更新しました)

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