(ブルームバーグ): 全米の多くの州立大学が中国発の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の使用を規制し、一部の学生や職員が反発している。バイデン政権も禁止措置を打ち出した場合、若者らの怒りを招くことが予想される。

ここ数週間で25余りの州が公有機器でのティックトック使用を制限しており、一部は公立校にも適用される。オーバーン大学やジョージア大学、オクラホマ州立大学など12を超える主要な高等教育機関が最近、学校所有の機器かキャンパスネットワーク、もしくはその両方で何らかの形でティックトックを禁止した。学生5万2000人余りを擁するテキサス大学オースティン校は先週、キャンパスのインターネットからティックトックを締め出したが、案の定、学生らには不評だ。

演劇教育を専攻しているグレース・フェザーストンさん(22)は中国系アプリの使用リスクについては、各自で判断できるようにすべきだと考えている。禁止措置は学生個人の自由を侵害すると主張し、「ティックトックを使いたいかどうか、そのリスクを冒したいかは、米国民の選択だ」と語る。

制限措置に反対する大学教職員もいる。テキサス大オースティン校で化学を教えているケート・ビバードーフ准教授(36)は、ティックトックで19万4400人いるフォロワーから「ケート・ザ・ケミスト」として知られており、教育用ツールとして使っているティックトックが「大学に奪われるというのは納得できない。コミュニティーから私たちの権利が奪われているように感じ、間違った方向に進んでいる」と話した。

ITソリューション企業のヴイエムウェアでプリンシパルセキュリティーストラテジストを務めるリック・マッケルロイ氏は、安全上の懸念は見過ごせないと指摘。ティックトックなどアプリによって収集された大量の個人情報は、企業や政府による誤情報発信を通じた著名人の追跡・標的、政治活動への影響力行使などに使われる恐れがあると警告する。

ティックトックは中国政府とデータを共有しておらず、同社従業員および親会社である字節跳動(バイトダンス)の従業員にはユーザーデータについて厳格なアクセス規制が設けられていると説明。だが、バイトダンスは先月、ジャーナリストを追跡しようと米国のユーザーデータに不適切にアクセスした従業員がいたことを明らかにした。

ティックトックの命運を決めることは、政治家にとっては大きなリスクだ。このアプリの主なユーザーは若者たちで、与党・民主党は若年層から大きな支持を得ている。タフツ大学によれば、2022年の中間選挙で民主党を過半数が支持した唯一の年齢層が30歳未満の有権者で、下院で民主党支持63%、共和党支持35%と、その差は28ポイントと圧倒的だ。事実上、事前に想定されていた共和党旋風を阻止したのは、こうした若者たちだとみられる。

演劇専攻のフェザーストンさんはティックトックを使って、フォロワー2万7000人向けにブロードウェーのショーや社会のトレンドなどについて動画で発信。全体としてリスクを認識しているものの、使用をやめるほど心配していないと言う。ここ数カ月にティックトックのクリエーターや利用者30人余りにインタビューしたが、皆同じような意見だった。

フェザーストンさんはティックトックから得らえるものは、自身に対する外国政府からの脅威よりも大きいと話す。次の選挙が近づく際に政策面で考慮されることになりそうだ。

原題:TikTok Bans at Major Colleges Are Infuriating the Students(抜粋)

--取材協力:Lucy Papachristou.

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