[サンフランシスコ 23日 ロイター] - 米電気自動車(EV)大手テスラの株式非公開化計画を巡る集団訴訟で、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は23日、非公開化に向けてサウジアラビアの政府系ファンドから支援の確約を受けたことは確かだと証言した。ただその後、同ファンドが確約を翻したとした。

サンフランシスコ連邦裁判所で行われた裁判でマスク氏は、2018年7月31日にカリフォルニア州フリーモントのテスラ工場でサウジの政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)の代表と会ったことを明らかにした。買収価格については議論しなかったが、代表は買収実現に向けて必要なことを行うと明言したという。マスク氏は「PIFは明らかにテスラの非公開化を望んでいた」と述べた。

ただマスク氏は、PIFのヤセル・ルマイヤン総裁がその後、テスラ非公開化支持の確約を反故にしたと指摘。「ルマイヤン氏に会ったときはテスラの非公開化を明確に支持していたが、その後は確約を翻しているように見えたため、私は大きく動揺した」と証言した。

ルマイヤン氏の弁護士からコメントは得られていない。

原告側の弁護士は、PIFが確約したというマスク氏の主張は文書で裏付けられていないと指摘。マスク氏とサウジ側の会合の議事録には、サウジ側がマスク氏の計画について一段の情報を求めていると記されているにすぎないと述べた。

2018年8月7日、マスク氏は1株当たり420ドルでテスラを非公開化するための「資金を確保した」とツイート。テスラの株価はマスク氏のツイート後に急騰したが、その後、買収が実現しないことが判明すると下落した。

「420」という数字とマリファナ(大麻)を意味するスラングとの関連が取り沙汰されたことについては、「株価に20%のプレミアムがつくため、この水準を選んだ」とし、「420ドルという価格は冗談ではなかった」と述べた。

原告側は、マスク氏のうそが原因で「普通の人々」が巨額の損害を被ったと主張している。

この日の証言でマスク氏は、自身が率いる宇宙開発企業「スペースX」の株式を売却すれば買収資金を十分に調達できたと信じており、スペースXの株だけで「資金が確保されたと思った」と述べている。

9人の陪審員は、マスク氏のツイートが株式非公開化に向けた資金調達状況を誇張したことが要因でテスラの株価が人為的に高騰したか、その通りならどの程度効果を及ぼしたかについて判断する。

マスク氏はこれまでの裁判で時に喧嘩腰で証言を行ったが、今回は冷静に証言した。