(ブルームバーグ): 海外を含む企業の合併・買収(M&A)で成長を続けてきたベアリングメーカー、ミネベアミツミの貝沼由久社長はドル・円相場が一時の超円安から円高傾向に転じてきたことについて、1ドル=120円を切る水準になれば、M&Aができるようになるとの見方を示した。

貝沼氏は17日のインタビューで、昨年10月に一時1ドル=150円台と、1990年以来32年ぶりの円安水準に振れた為替相場が足元では130円前後まで戻ったことについて、「120円を切ってくると、現実的なM&Aオポチュニティーが生まれてくるのではないか」と述べた。

貝沼氏は1ドル=140円前後だった昨年夏の時点では、海外企業のM&Aについて為替影響で買収金額が増えることから「すごくリスクがある」との見方を示していた。ブルームバーグのデータによると、昨年の日本企業による海外企業のM&Aは1236件と前年比13%減、金額は9兆7000億円で42%減だった。

同社は長期経営目標として、2029年3月期に売上高目標2兆5000億円(22年3月期は1兆1241億円)を掲げる。そのうちM&Aで5000億-8000億円の純増を見込み、M&Aの成否が業績や会社の成長にも大きく影響してくる。

今期はコネクターなどを製造する本多通信工業、自動車部品のホンダロックなど3件の買収を発表。貝沼氏は、今期(23年3月期)中に「できればもう1件やりたいと思っている」と述べた。

為替動向に加え、新型コロナウイルス感染症に関する規制緩和で移動の自由が戻り、海外出張ができるようになったことも「何かあった時はすぐに見に行ける」ため、M&Aにはプラスだと指摘。だが、米国景気の先行き不透明感はリスク要因で、「全部落ち着いて、本当の姿はどんな姿なのかを見る」ことが重要だと話す。「慌てる必要はない。国内案件も結構いっぱいある」とも述べた。

ミネベアミツミはM&Aを成長戦略の柱の一つに据える。ハーバード大学ロースクール出身の国際弁護士で、旧ミネベアに入社した貝沼氏はミツミ電機との経営統合やアナログ半導体のエイブリックの買収などを通じて事業の多角化を進めてきた。

中国に関しては、米国との対立激化や新型コロナの感染拡大などリスクを注視する必要性が増す中、中国向けに必要なものだけを現地で生産する地産地消や中国外から部品を調達するサプライチェーン(供給網)の再構築に取り組むと貝沼氏は説明。足元ではデータセンター関連などさまざまな投資が抑制され、「マーケットの調子が悪いのは否定できない」という。

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