[東京 19日 ロイター] - 1月のロイター企業調査で賃上げの計画を聞いたところ、予定していると答えた企業は全体の5割を超え、2割以上はベースアップ(ベア)も検討していると回答した。ファーストリテイリングが大幅な給与引き上げを発表するなど賃上げの機運は高まっている。しかし、引き上げ幅については「3%未満」との回答がほぼ半分を占める結果となった。

過半数の企業が製品の値上げを検討しているとも答えており、岸田文雄政権が訴える物価上昇率を超える賃上げの実現は、現時点で厳しい情勢がうかがえる。

調査期間は12月23日から1月13日。発送社数は495、回答社数は246だった。

賃上げを予定していると回答した企業は53%。定期昇給に加え、基本給を底上げするベアも実施するとの答えは24%だった。据え置くとの回答は8%、未定が38%。製造業、非製造業ともほぼ同じ傾向だった。

賃上げ率については「3%未満」との回答が47%で最多。「3─5%未満」が31%、「5%以上」は3%で、19%が「未定」とした。 昨年10月に実施した同様の調査では「未定」が61%と最も多く、「3%未満」が9%、「3ー5%未満」が10%で、「5%以上」と答えた企業はなかった。

長くデフレが続いた日本でも資源高や円安で物価が上昇し、賃金が目減りしている。厚生労働省が発表する実質賃金は最新の昨年11月の数字が前年同月比3.8%減。8カ月連続で減少し、下落幅は2014年5月以来8年半ぶりの大きさだった。

岸田政権はインフレ率以上の賃上げを経済界に要請し、経団連なども「企業の責務」(十倉雅和会長)と前向きに応じているが、3月から最大40%の報酬引き上げを発表したファーストリテイリングのような企業は、今回の調査結果を見る限り業績が好調な一部の大手に限られる可能性がある。

賃上げを予定していると回答した企業が理由として選んだのは、「従業員の士気確保」が80%と最も多く、「物価高騰への配慮」が43%と続いた。「業績改善による利益還元」を選択したのは21%にとどまった。

一方、今回の調査では54%の企業が今年値上げを予定していると答え、予定していないの回答16%を大きく上回った。

業種別では繊維・紙・パルプが最も多く、90%が価格を引き上げると回答。化学が78%、石油・窯業が75%、食品が70%と続いた。非製造業でも卸売りが56%、小売りは53%が値上げを予定しているとした。

昨年は値上げの動きが一斉に広がり、帝国データバンクによると、生活に影響が大きい食品は2万0822品目の価格が改定された。しかし、企業間の取引価格を示す国内企業物価指数は12月に前年同月比10.2%上昇したのに対し、消費者物価指数(東京都区部)は生鮮食品を除くコア指数が4.0%の上昇にとどまった。企業が一段の値上げを予定していることから、最終消費者への価格転嫁は今後一段と進む可能性がある。

(グラフィックス作成:照井裕子)