2023/1/31

拡張も、深化も。電通の「IGプランナー」が急成長できるキャリアなワケ

NewsPicks Brand Design Senior Editor
 今、電通のキャリア採用において、約半数を占める重要ポジションがある。それが「インテグレーテッド・グロース・プランナー(IGプランナー)」=「統合グロースプランナー」という仕事だ。
 人の心と行動変容のメカニズムに基づき、ビジネスそのものを顧客体験から変革しながら、ROIを重視した需要の創造を通じて、企業の成長を統合的に支援するのが特徴だ。
 実は「脱・広告」「コンサルティング領域を攻める」電通にとって、重要な役割を担う仕事なのだが、そこで実際に働く人材は、決して最初からその道のプロだったわけではない。
 むしろ、これまでの自身の専門領域に軸足を置きつつ、他のプランナーや、他部署と有機的に協業しながら、自身の能力を拡張し「統合グロースプランナー」としてのキャリアを築いてきた。
 いわゆる戦略プランナーやコンサルタントとは違う統合グロースプランナーとは、どんな仕事なのか。どんな点にやりがいがあり、成長実感を得ているのか。
 統合グロースプランナーとして働く若手社員3人に、仕事の魅力をざっくばらんに聞いた。
INDEX
  • 得意領域があれば「大丈夫」
  • 自身の能力を常時「拡張」していける環境
  • 変化を“快”と捉えられる人材がハマる

得意領域があれば「大丈夫」

──まずは、みなさんが統合グロースプランナーの仕事にどう辿り着いたのかを、かんたんに教えてください。
荻野 私は電通に入社後、クリエーティブ部署に配属され、コピーライターとしてマスクリエーティブの制作に携わりました。が、正直なところ、芽が出なくて……(笑)。
 もともと大学時代にAIや機械学習の研究をしていたので、得意領域を活かそうと思い、デジタル制作やデジタルプロモーションを行う部署に移りました。
 そこからサイト解析や施策の効果検証、ROIシミュレーションなど数字を使った領域に取り組んでいるうちに、気づけばこのポジションに辿り着いていました。
 現在、統合グロースプランナーとして大手通信会社に常駐し、戦略策定やマーケティングのお手伝いをしています。
筒井 私も大学時代は機械学習やAIを研究し、そうした経験からデータ・テクノロジーセンターに配属されました。
その後、私がいたマーケティング部署が独立。現在のデータマーケティングセンターとなり、スライドして統合グロースプランナーとなりました。
 そこでは、電通の保有するDMP(データを蓄積・管理するプラットフォーム)を使ったマーケティング支援を行っていましたが、近年ではプラットフォーマーのデータや金融系のデータなど、扱うデータも拡張しています。
 担当企業も当初は金融業界、自動車業界を中心としていましたが、最近では飲料を中心に日常消費財などにも広がっています。
西村 私は、お二人と違って“ド文系”の出身です(笑)。ゼミでマーケティングサイエンスを専攻した関係もあり、卒業後は別の広告会社でウェブ広告のプランニングなどに携わっていました。
 そんななか、現職の募集を見て応募し、試験を受けて電通に入社しました。現在、自動車関連企業に半常駐し、生産から流通までの様々なデータを活用して新しい体験を生み出すご支援をしています。
──クリエーティブからマーケティング、転職と様々なキャリアパスを経て「統合グロースプランナー」に辿り着いたんですね。
筒井 そうですね。実際、統合グロースプランナーといえども、最初から何でもできるわけではありません。
 でも、統合グロースプランナーは各々の得意領域を何かしら持っている。これがとても重要です。
 クリエーティブ、ビジネスプロデュース、マーケティング、カスタマーエクスペリエンス……など、私も把握しきれないほど、各々が得意領域を持つ個性のある人材が集まる集団です。
 私の場合は、そういった強みがデータ分析だったりするのですが、そうした各々に“軸”を持っている点が、統合グロースプランナーのケイパビリティの一つになっていると思います。
 そして、プランナーたちが一つのチームとなり、クライアントの戦略から実行までの支援、伴走を行える。それが最大の強みです。
西村 文系出身の私も、お二人ほどではないですが、データは最低限、判断基準の軸にできるくらいの理解はあります(笑)。
 ただ、ベースが決して高くないので、たとえばSQL(データベース言語の一つ)やPython(プログラミング言語の一つ)の基礎、BIツール(データを活用して意思決定を支援するツール)の使い方等々を、日々勉強しています。
 そのなかで、筒井さんのお話に繋がるなら、私は「想像すること」を軸に仕事をしています。
 これまでのキャリアパスで、クライアントと近い距離で向き合うことが多かったこともあり、「今、こんな課題について悩んでいるんじゃないか」といった視点に立つように意識しています。
 先回りして取り組めば、喜んでもらえる仕事をできるだけたくさん想像し、実行する。そして、他のプランナーと集合知を形成し、統合グロースプランナーとしてのアウトプットの質を高めています。

自身の能力を常時「拡張」していける環境

──逆に、最低限必要なケイパビリティがあるとすれば、それは何でしょうか?
荻野 各々が自身の専門領域を持ちつつ、データを扱える点は、統合グロースプランナーの特徴だと思いますね。
筒井 たしかに。数年前から、データが関与する領域や扱うデータ量の拡大、高度化が顕著になってきました。
 たとえば、以前はデジタル広告であればCPCやCPA、CVRといったデータを見ていればよかった。
 しかし、全体的な効率化やブランディングの観点から、より網羅的かつ統合的に見た上で戦略を立てたい、というクライアントが増えてきました。
 つまり「個別最適」から「全体最適」への意向が増えてきたんです。
 それにより、データを基点としながらも、上流から下流までの工程を、統合して考える必要性が出てきました。
 その流れでポジションとして確立されたのが、統合グロースプランナーであると考えています。
──統合グロースプランナーのどんな点に、やりがいを感じていますか?
西村 さっきの話にも繋がりますが、毎日必死に考えるようになったことです。
 前職の広告会社では、クライアントからご共有いただける情報に制限がある関係で、正直、自分が出す結果に対しても無意識に“言い訳”にしていた部分がありました。
 でも今は、クライアントというよりは、同じ目標に向かって挑む“チームメンバーの一員”として業務を進めていく中で、事業の意思決定に必要な様々な情報を信頼関係の下でご共有いただけるので、言い訳は一切できません。
 ただ、コミットが大きいからこそ、何かを成し遂げた時にクライアントと一緒に喜べる度合いも大きい。心からやりがいを感じています。
荻野 本当にそうですね。単なる受発注の関係でクライアントに常駐させていただいて仕事をする以上に、クライアントとともに「事業成長」を見ている。
 するとマイナスな情報も含め、クライアントに本音で話せるようになる。そこで見えてくるもの、通じ合えることがあって、この仕事の楽しい部分だと思います。
 本音でどんどんアウトプットすれば、信頼感も醸成されるし、チーム全体の空気もオープンなものになっていく。
 だからとにかくアウトプットする、手を動かすことを、とても大切にしていたりします。
筒井 統合グロースプランナーをしていると、自身の得意領域以外の仕事を、やらざるを得ないタイミングが、けっこうな頻度で訪れます。
 もちろん電通には各領域のスペシャリストがいるので、彼らを頼ることもありますが、ただボールを丸投げするのではなく、一緒にボールを持って並走するイメージが近いと感じています。
 結果、得意領域からはみ出していくことで、それぞれのスペシャリストから、自然と学び続けられる。
 もちろん、これまで経験していない仕事にも挑戦するので、大変ではあるんですが、自身の能力を常に「拡張」していける点が、大きなやりがいとなっています。
荻野 正直、まだ正解が出ていないものに関わる領域が多く、時代もすごいスピードで変化していくなかで、毎回工夫をこらしながら手探りでやっていく部分が大きい仕事です。
 一般的な解釈でいうと、業務としてはコンサルティングの領域でもあるので、コンサルの定石や常套手段も学ぶようにしていますが、そのとおりにやるだけでは上手くいきません。
 だから毎回悩むし、それこそ筒井さんや西村さんにも教えてもらいながら、新しい領域の知識も身につけなくてはいけない。
 でも、自分の得意領域が拡張するし、自分の強みをさらに高められる。大変ですけれど、成長実感も強く感じますし、最高に面白い仕事だと感じます。

変化を“快”と捉えられる人材がハマる

──群雄割拠のマーケティング及びコンサルティング業界ですが、他の仕事にはない統合グロースプランナーの強みとは、なんでしょうか。
荻野 当然ですが、クライアントは事業者主体の目線を持っています。それに対して、これまで我々電通は広告業を中心に、生活者目線を明確に持ち、価値提供をしてきました。
 これまでの価値に加えて、統合グロースプランナーは、クライアントの組織に参画し、事業者目線を持つことで、培ってきた生活者の目線や高い理解を、事業者の言語に翻訳して会話できる。
「生活者は何を求めているのか」「生活者は何に興味があるのか」。そういった、クライアントとは少し角度の違う視点を持って伴走する、いい意味での“異物”になれるところが、統合グロースプランナーならではの強みだと思います。
西村 個人的には、手触り感やウェット感、最後まで愚直にやり遂げる姿勢も、高くご支持いただいていると感じますね。
 従来の戦略コンサル業務の如く、オリエンを受け、戦略を立てて終わりではなく、生産工程やマーケティング工程も含め、計画から実行までの全領域で一緒に侃々諤々な議論をさせていただける、みたいなイメージです。
 クライアントからはそんな役割を期待されていますし、我々も電通特有のケイパビリティを持つ人材として、自負を持って取り組んでいます。
筒井 戦略から実行までうたう企業は多々ありますが、全体最適な視点での戦略づくりと、愚直なまでの実行力を伴い、一気通貫で支援できる会社は、そうそうないと思います。
 なので、クライアントからはどんな案件でもフラットに相談していただける。
 まだきちんと整理されていない課題であっても、しっかり形にしてお返しできる。それが、統合グロースプランナーの強みだと考えています。
 クライアントは、我々を仕事の委託先以上に、一緒に走ってくれるパートナーとして見ていただけることが多いので、当然ハードルは高くなりますが、そういった経験を積めるため個人的な成長には繋がっていると感じます。
iStock / metamorworks
荻野 すごく同意します。私たちの仕事は、スケジュール内に納品して終わり、というものではないことが多い。
 目的は、クライアントの継続的な成長です。本質的な課題に向き合うには、泥臭さや「クライアントと一緒に悩む」みたいな姿勢が必要だし、だからこそやりきる覚悟、付き合い切る覚悟をしっかり持てているのかなと。
 電通ならではの生活者視点を研ぎ澄ませながら、クライアントに深くコミットし、事業者視点の解像度も高めていける。
 また、同じ統合グロースプランナーたちと切磋琢磨し、自身の能力を日々拡張できる。そういう意味では、すごくありがたい環境だと感じます。
 他の統合グロースプランナーも同じ話をしていましたが、この仕事に腰を据えて取り組めば、結果的に「どんな会社でも結果を出せる人材」になれるはず。
 そんな稀有なポジションであると自負しています。
──どんな人が、統合グロースプランナーの仕事を全うできそうでしょうか。
筒井 得意な領域はありつつ、コンフォートゾーンから出ることをあまり恐れない人。
 特定の領域だけやっていればOKな仕事ではないので、新しいものをどんどん採り入れる柔軟性や素直さ、そしていろいろな人を巻き込んでいけるコミュニケーション力みたいなところが大切になると思います。
西村 やっぱり好奇心があると、すごく楽しめるのかなと。
 電通もそうですし、大企業がクライアントの場合も多いですから、関わるデータ、ソリューション、そして人は多岐にわたります。
 そうした広大なフィールドを見渡して、一つずつクリアするようにゲーム感覚でどんどん開拓していける人は、ピッタリだと思います。
荻野 そうですね。特に変化を楽しめる人が、向いているんじゃないかなと。
 仕事は仕組み化して、決まった方法、決まった形でやった方がいい部分ももちろんあります。
 ただ、統合グロースプランナーは、これまでにない問いに向き合うことが多い。周囲は常に変化するため、自分も変化し続けなければならない。
 社内や社外の新しい知見に出会って「すごいな!」と思いながら、毎回毎回、手探りで違う解を探していく。
 そういう変化がやはり面白いと思いますし、それこそが統合グロースプランナーの価値であり、ケイパビリティになっている。
 バンバン聞いて、試して、失敗もして、そんなことを面白がってやれる人であれば、統合グロースプランナーとして大いに成長できると思います。