【日立✕キャディ】社会的価値で勝負せよ
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日立製作所の元社長・現会長の東原さんとお話させていただきました。
IoT/Industry4.0は、2010年代前半からバズワード化し、GEがPredixで大きく仕掛けにいきました。
GEはConsumerにおけるAppleのApp StoreをBusiness/産業界で実現する、というプラットフォームとそれに乗る自由なサードパーティーアプリケーションの文脈で、イメルト氏の大号令のもとトップダウン(=社長から、という意味のトップダウンに加えて、最初からごりっと固めた構想に当てはめていくという意味でのトップダウン)でPredixを作り、兆単位の投資をして失敗しました(失敗の定義は様々ありますが、雑に言えば)。
一方で、日立製作所のLumadaは構想は、出てきた当初から曖昧な印象を受けていました。
しかし、実際には非常に不確実なIoT/Industry4.0の世界だからこそ、大義だけはトップダウンに、その他は非常にボトムアップに創っていっていることが正しいかもしれないと徐々に思い始めていたころに、この対談の機会をいただきました。
ボトムアップ型というのは、まずはSIerのような形で様々な企業と連携しながらユースケースを作っていき、それを徐々に共通項で括っていってプラットフォーム化していくような形です。
産業界においては、究極的にニュートラルなプレイヤーでない限り、「この基盤に乗れ」というのは基本的に成立しません。誰も競合に対してデータの開示をしたり、首ねっこを掴まれたくないからです。
そのため、このボトムアップな戦略は、非常に「日本的」、かつデジタル界でいうと正直微妙なにおいのする「SIer感」があって一見微妙に見えますが、それこそが中長期的な目線で見ると正しい可能性があると思いました。
キャディも、最初から「この図面フォーマットで記載してください」と定義することは、キャディ最適でありながらも成立しないということで、泥臭く個社フォーマットに対応し、自社内では標準を持つ、そのコンバートをする、というやり方で対応してきています。
そこに共通性があるよね、という話です。とても楽しくお話させてもらいました。企業変革の観点からも興味深かったです。
ひとつは、日立のLumadaの概念から事業への展開で、こうした構想をまず打ち立てたことが大きいです。社会イノベーションは日立のビジョンですが、これを事業側から見て展開したのがLumadaかと思っています。Lumadaを打ち出す上では、事業ポートフォリオの整理が必要で、それらを長い時間かけて行ってきたことの成果が今出てきているのだと思います。
そしてその構想をどう実際に形にしていくのか、というところが非常に重要で、そのためには新しい能力が必要であり、その構築のためには組織の習慣・ルーティンが不可欠になってきます。
そうした話が東原さんのお話から見えてくる内容に思えました。
また、顧客視点から事業を作る、という点については、CADDiの加藤さんのお話とも重なるところがあると思うのですが、一度事業が確立し、それが機能分化して効率化を図っていくと、顧客が見えなくなるという現象がよくあります。その観点で、どう顧客とのインターフェースをつくり、自分たちの仕事の意義や可能性、潜在的能力を捉え直すのか、という点が、非常に重要な変革の論点であろうかとも思いました。
CADDiの加藤さんのお話で、プラットフォームを構築する上で、業界内の暗黙の合意事項を整理し、標準化できる範囲を広げたというところが興味深かったです。結局これも、顧客視点というものをどう捉えるのか、場合によっては、社会の課題という視点から自社の能力や技術をどう捉え直すのか、という問題でもあると思いました。巨大企業とベンチャーでアプローチは違えど、実はプラットフォームやアーキテクチャを作る上で、「共通化」が鍵になるというお話を伺いました。
10兆円規模の売上を誇る日立のマクロな変革と、創業6年目で社員が倍になるような成長を遂げているキャディ。それぞれ日本経済の大動脈である重厚長大な製造業を、いかにして産業変革すべきか論じます。
ちなみにキャディの最新の進化はこちらのnoteがくわしいです。
サプライチェーンに始まる、グローバル製造業の再進化。/キャディ創業5年記|加藤/キャディCEO
https://note.com/yushirodesu/n/n88f2399dcfc8