トルコ大統領、プーチン氏に停戦促す ゼレンスキー氏にも仲介申し出
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和平の仲介とか、停戦の提案といったものは、必ずしも中立の立場から行われるものではありません。
和平の仲介とは、善意による無償の奉仕ではありえず、自国に何らかの国益があるから買って出るものです。
たとえば、米国は、繰り返された中東戦争の後に、イスラエルと、エジプトをはじめとするアラブ諸国との和平を長年仲介してきました。
これは、イスラエルの肩を持って、イスラエルの国益と安全保障を確保するための仲介でした。それが、エネルギー資源流通の安定を含め、米国の国益に適っていたからです。
現時点で、ロシアがウクライナへの領土返還を約束しない一方的な停戦というのは、つまり、ロシア軍が占領している領地をロシアに譲り渡して和平しろ、という提案です。
ロシアの肩を持ったロシアの権益を確保するための停戦提案です。
トルコのエルドアン大統領の意図は、ロシアに恩を売ることで、トルコが利益を得ることです。
トルコが得る利益、というのは、エネルギーや穀物の供給もありますが、ロシアがシリアに対して持っている影響力を利用できる、ということです。
今年8月に大統領選挙と議会選挙を控えているエルドアン大統領にとって、最重要の課題の1つは、トルコにいる300万人を超えるシリア人難民をシリアへ送還することです。
300万人を強制的に国外へ追い出すというのは、人道的なやり方でできることではなく、シリア難民が、シリアに帰っても逮捕や処刑されることなく、生活も仕事も成り立つ、ということを保障する必要があります。
そのような条件をシリアのアサド政権にのませることができるのは、アサド政権の後見人にあたる、ロシアとイランだけです。
ウクライナにはシリアへの影響力は無いので、エルドアン大統領としては、ロシアの肩を持ちます。
ただし、ウクライナの方は、トルコからの提案を、拒否するでしょう。トルコには、エジプトにイスラエルとの和平をのませた米国のような国力がありません。
(追記)先ほど、プーチン大統領は、1月6日(ロシア正教の使っているユリウス暦で、クリスマスの前日にあたる日)に停戦するという命令を出しました。
これで、ウクライナが占領地の奪還をめざして攻撃を続ければ、「ロシアは和平を求めているのにウクライナが一方的に攻撃してきた」と言い張れます。
トルコの顔も立てたことになります。ロシアのウクライナ侵攻で株を上げたのはトルコのエルドアン大統領だが、それでも彼が両国を停戦に導くのは無理だろう。結局、他国を侵略し、他国を占領している状態で停戦を呼びかけてもウクライナは戦うことを止めようとはしない。