シャープが鴻海に買収されるまで液晶事業を「変革できなかった」当然の理由
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いずれか(亀1, 2 , 堺)の工場の操業を止め、液晶パネル事業で必要となる固定費を下げるという選択肢を取るべき時に、工場を動かし続けるという選択を取り続けた。
工場を止めると再稼働にもコストが掛かるから、という理由だったかと思うが、結果的に余剰在庫を生み出し続け、市況価格が下がり、販売しても利益が出ないという展開となってしまっていた。堺に関して言えば、好調時には自社を優先し他社への供給を助けず、不況時には他社に助けを求めたというエピソードもある。
三星、LGなどもテレビ用液晶パネルなどでは苦戦している年もあるが需給調整が肝のビジネスになってからは力点が変わっていった。テレビの販売をしっかりと欧米中でやれた、というのも大きい。
シャープはそこのところの販売力やマーケティング力、ブランド力も弱かった。(特に欧米)
追記
シャープは太陽光パネルでも30年ほどの下積み期間を耐え凌ぎ、市場立ち上げに大きく貢献したものの、市場拡大時期に投資しきれず他国の補助金行政に右往左往し敗北し撤退した。やはり市場の変わり目、潮目の変化を読みきれなかったということなのだろう。ちょっと極論かもしれませんが、かつての太陽光パネルと同じ縮図を感じます。
太陽光パネルの黎明期、日本は圧倒的なトップランナーで、「100年経っても世界は日本の技術力には追いつけない」という趣旨の本まで出しました。で、今はこんな惨憺たる状況です。
どんな改革でも、どんなディスラプションでも、自己否定はつきものです。自己否定をしてこそ、マーケットの構造を変えるような新たな力を発揮できるのだと思います。それは、常に前に進みたいという飢えた感情が自分の不安を打ち負かす時なのかもしれません。ダイナミック・ケイパビリティについて、デイビッド・ティース教授のもとで研鑽を積んだ菊澤教授の失敗した組織について、丁寧に解説されています。
指導者たちの合理的判断というのは、自分たちの最適化であり、もっと言えば変わらないための保身です。経営層の保身は、会社のためと言いながら、多くの社員のリストラであり、株主に迎合するコスト削減であり、場合によっては自社株買いです。
経営層は、株主から退陣させられることを回避することが、この合理的判断をさせているに過ぎません。株主は困難な状況になっても、株価を維持できることを求めるあまり、変化のリスクを回避しようとしているだけです。結局株主も損をすることになるということになるだけなのですが。
変化が起きていることは保身に走る経営層も知っているはずですが、変化を受け入れ、これまで成功してきたものを捨てられず、まだ何とかなると足掻くのが、変化に逆行するような巨額投資だったりして、それが致命傷になるわけです。
「貧すれば鈍する」、縮小均衡まっしぐらです。
「黒い空気」の正体は、社員が会社に希望を持てなくなったという雰囲気でしょうが、経営層がお友達ばかりになり、トップの茶坊主になっていることから生まれるものだと思います。
こんな企業にダイナミック・ケイパビリティを望むことなどできず、むしろ株主は経営層を一掃し、リスクを背負って変化を起こせるプロの経営者を連れてくるべきなんでしょう。
菊澤 研宗「企業の持続的競争優位を実現するダイナミック・ケイパビリティ」
https://www.keiomcc.com/magazine/report193/